社内承継か、M&Aか。1店舗経営の薬局オーナーが「社員の未来」のために下した決断

ご成約概要
| 譲渡企業 | 譲受企業 | |
|---|---|---|
| 会社名 | 株式会社グランツリー | 株式会社なの花西日本 |
| 代表者氏名 | 宇野 敏志 | 代表取締役社長 宇野 光裕 |
| 所在地 | 奈良県大和高田市 | 大阪府豊中市 |
| 事業内容 | 調剤薬局の運営 | 調剤薬局・ドラッグストアの展開 |
| 譲渡時の年齢 | 57歳 |
譲渡に至った経緯
- 2年ごとに実施される調剤報酬改定に対し、スピーディーに対応し続けることへの限界を感じていた
- 1店舗の薬局では、薬剤師の採用やキャリアステップの提示、モチベーションを維持し続ける仕組み作りに構造上の限界があった
M&Aをしようと思ったきっかけ
- 社内承継を検討していたものの、選択肢のひとつとして情報収集を始めた
- 「強引な乗っ取りではなく、双方の強みを活かす今のM&A」のあり方や、成約後の未来を見据えた提案を受け、選択肢として本格的に並行検討を始めたこと
M&Aを通じて叶ったこと
良かったと思うこと
- 全国展開する「なの花薬局」グループの一員となることで、1店舗経営では成し得なかった安定した経営基盤と、社員の新しいキャリアパスの確保
- 深夜までの業務や、片道1時間のバイク通勤など、心身への負担を心配していた家族を安心させることができた
ご成約インタビュー
まずは、株式会社グランツリーの創業の経緯と、これまでの歩みについてお聞かせください。
宇野氏: 元々働いていた調剤薬局の代表から「新しく自分でやってみないか」と提案をいただいたのが、2016年の創業のきっかけでした。
当時、勤務薬剤師として強く感じていたのが、「調剤過誤(薬の渡し間違い等)による患者様への影響や、処方医からのご指摘、そして何より間違えてしまうことに対する薬剤師の強い心理的負担」でした。だからこそ独立するにあたっては、徹底的にミスを減らし、社員が安心して働ける仕組みを持つ薬局を目指したんです。
今から10年ほど前、まだ世間で「DX」という言葉が浸透する前から、処方箋の入力通りに調剤が進んでいるかを機械的にチェックする「ピッキング支援システム」をいち早く導入しました。さらに、粉薬の重量を測る天秤データを連携させ、秤量や分包時の患者様の取り違いを防ぐ機械化も進めました。
当時は自分で勉強し、メーカーと何度も打ち合わせを重ねてやれることをすべて取り入れました。重複チェックに追われていた時間を削減し、その分を患者様への投薬時のフォローや丁寧なお声がけに充てることができただけでなく、「何より社員のチェックにかかる心理的負担を大きく軽減できたこと」が、私たちの誇れる強みであり企業価値となりました。
スピーディーなシステム投資など素晴らしい経営をされてきた中で、なぜM&Aを検討されたのでしょうか。
宇野氏: 医療安全の面では成功しましたが、2年ごとの調剤報酬改定のハードルは年々高くなり、1店舗単独で変化に対応していくことに限界を感じ始めたんです。また、最も苦労したのが「1店舗経営における人員の確保とモチベーションの維持」でした。
管理薬剤師というポストは店舗に1つしかありません。優秀な若手が入ってくれても、その先のステップアップや面白い挑戦を自社だけで用意してあげることが難しく、他社へ羽ばたく背中を止められないもどかしさがありました。
3年ほど前から事業承継を考え始め、管理薬剤師への社内承継を第一候補として少しずつ業務を任せ始めていました。そんな折に、スピカコンサルティングの藤村さんからお声がけをいただいたんです。
実は過去、身近な薬局がM&Aされた際、譲渡先のやり方を強引に押し付けられ社員が苦痛を感じて辞めていく暗い事例を目にしていたため、当初はM&Aにかなり警戒心を持っていました。しかし、藤村さんはただ譲渡先を探して手数料を取るだけのコンサルタントとは違い、「M&Aは成約して終わりではなく、その後の社員やご自身の未来までを描くことが重要です」と一緒に考えてくれました。今のM&Aは昔のような無理な押し付けではないという話を聞き、社内承継とM&Aを同時並行でシビアに比較検討することにしたのです。
M&Aのパートナーとしてスピカコンサルティングを選ばれた決め手、そして「株式会社なの花西日本」との成約に至った理由を教えてください。
宇野氏: 実は藤村さんにお願いする直前まで、長年取引のあった地元の銀行にも事業承継の相談をしていました。結果として、スピカさんと銀行の2社を比較することになったのですが、決め手は「企業評価の品質と妥当性」でした。
銀行側が提示してきた評価額は、スピカさんより高い数字でした。しかし、それはどこか数年前の市場トレンドを引きずったような「甘い数字」に見えたのです。私は2年ごとに大きくルールが変わる調剤業界のシビアな現状を肌で感じていましたから、「現実はこんなに甘くない、何かが違う」と違和感を覚えました。
一方でスピカの藤村さんは、弊社の一店舗という規模感や立地、現時点でのリアルな市場環境、調剤業界の今後の動向を正確に把握した上で、非常に現実的で妥当性のある数字を出してくれました。経営者として、綺麗事だけでなく業界の動きを正しく把握し、嘘のない現実的な評価を提示する真摯さと、そうした評価を算出することができるスピカさんに任せたい。と思い、依頼を決めました。
ただ、依頼を決めた段階でも、私はまだ「社内承継」の道も考えていました。藤村さんは私の想いを否定せず、「宇野様が第一に望まれている社内承継の道も、納得がいくまで最後まで一緒に検討していきましょう」と言ってくれたのです。
その言葉通り、藤村さんは単にM&Aを進めるだけでなく、実際に事業を社員へ引き継いだ経験のある経営者の先輩と本音で話せる場をセッティングしてくれるなど、本当に手厚いフォローをしてくれました。 その先輩から「社内承継は、譲る側だけでなく、実は引き受ける社員側にとっても非常にリスクや心理的負担が大きい」というリアルな実体験を聞くことができたんです。この場があったからこそ、独りよがりにならず、「どちらの選択肢が本当に社員のためになるのか」を冷静に、同時並行で考え抜くことができました。
そうして視野を広く持って検討を重ねた末にお相手探しへと進んだのですが、藤村さんのお勧めもあり、実質「なの花西日本様」一択でした。トップ面談で副社長たちとお会いし、社員の待遇や譲渡後の進め方を丁寧にお聞きする中で、私が最も危惧していた強引な押し付けがないことを確信し、安心してお任せすることができました。
成約を迎えられた現在のお気持ちと、これからの未来についてお聞かせください。
宇野氏: 正直に申し上げると、M&A直後の今、現場は大きな変化の中にあります。これまでは良くも悪くも「アットホームでなあなあ」にできていた部分がありましたが、大手としての厳格なルールや金銭管理、記録の徹底などが始まり、社員たちは今までにない新しい負担や戸惑いを感じています。いわば「成長痛」の真っ最中だと思います。
しかし、これはかつて私が「社員の心理的負担を減らすためにシステム導入という大きな変化」を決断した時と同じです。当時は社員にも新しい勉強や変化を求めましたが、結果として全員を守る仕組みとなりました。今回の変化も、数年後に社員たちが振り返った時に「あのとき、なの花薬局グループになって本当に良かった、変わって良かった」と、心から思ってもらえる未来のためのポジティブな変化だと信じています。すべての決断は、社員のこれからの安心と幸せのためです。
私個人としては、夜遅くまでの勤務や片道1時間のバイク通勤を心配し続けてくれた家族を安心させることができ、少しホッとしています。今後は白紙ですが、これまで培った薬剤師としての経験を活かしつつ、これからは少しずつ旅行などのプライベートな時間、いわゆる「ワーク&ライフバランス」を大切にしながら、次の歩みを進めていきたいと考えています。
担当者からのコメント
