“婿養子的事業承継”で描く第二創業期

ご成約概要
| 譲受企業 | 譲渡企業 | |
|---|---|---|
| 会社名 | 事業承継支援機構合同会社 | ソルナ株式会社 |
| 代表者氏名 | 安宅 祐樹 | 三澤 和則 |
| 所在地 | 東京都中央区銀座1丁目12番4号 N&E BLD. 6F | 東京都中央区築地2-9-4 ソルナビル |
| 事業内容 | トラディショナル型サーチファンドの運営 | ・風評被害コンサルティング ・ネットの履歴書(リファレンスチェックサービス) |
「婿養子的事業承継」─サーチファンドという新しい挑戦がつないだ想い
ソルナ株式会社 代表取締役 安宅 祐樹氏
サーチファンドをご存知でしょうか。
経営者を目指す優秀な個人(サーチャー)が、投資家からの支援を受けながら、自分で経営したい会社を探し、買収・承継し、企業価値向上を目指すという投資の仕組みです。プライベート・エクイティ(PE)ファンドと異なり、譲渡企業にとって次の経営者を明確にできる第三者承継手段として昨今注目を集めています。
2018年ごろから日本でも少しずつサーチファンドの概念が広まり始め、山口銀行やJaSFAによるファンドオブサーチファンドの設立など環境が整い始めてきました。ここ数年で国内事例も急増しており、当社(スピカコンサルティング)でもサーチファンドを活用したM&Aの仲介をご支援しております。
本記事では、当社がご支援した国内4件目となるトラディショナル型のサーチファンド事例をご紹介します。サーチャーからソルナ株式会社の代表取締役に就任した安宅祐樹氏に、譲り受けの背景や想いを語っていただきました。
サーチャーになるまでの経緯
野村證券で見た現実、経営のバトンを渡せない日本
「いつか自分の会社を経営したい」──それは学生時代から抱いていた安宅氏の願いでした。
新卒で入社した野村證券では法人向けの事業承継支援を担当し多くの経営者と接する中で、日本企業が直面する後継者不足の深刻さを目の当たりにしてきました。
「経営を託したいと思える人材が社内にいない」
「息子に継がせたくない」
そんな声を何度も耳にし、“経営者になりたい自分”と“後継者を探す企業”の間に橋を架けられないかと考え始めます。
サーチファンドとの出会いとMBA留学
「あなたが書いていることは“サーチファンド”というモデルに当たるかもしれません」
2017年、MBA出願のためのエッセイを作成していた際、カウンセラーの一言が転機となりました。
初めて「サーチファンド」という言葉を聞いた安宅氏は、サーチファンドを調べていくうちに“後継者不在の企業を次世代の経営者が引き継ぎ、成長させる仕組み”だと知りました。
野村證券の社内ビジネスアイデアコンテストでもサーチファンドモデルの提案を行いましたが、実現には至らず。MBAで本格的に学び、自らの手でこのモデルを日本に根付かせたいと考え、サーチファンドを学べる環境であったバブソン大学への進学を決意しました。
サーチャーとしての活動
189社目で出会った「ソルナ」
MBA卒業後はBCG(ボストン コンサルティング グループ)にて約3年間、様々な企業の経営課題の解決に携わりました。MBAで体系的に学んだ経営の知識が実際のビジネスの現場でも通用するのかを自ら検証する期間でもありました。
そのうえで、「自分自身が経営の現場に立つ覚悟」が固まり、日本でサーチファンドを立ち上げる準備を本格的に開始しました。
野村證券時代の同僚、MBAの先輩、教授などからの出資を得て資金調達を実現しました。
自分で経営したい会社を探す「サーチ活動」は、出資金が入金された瞬間から始まります。
安宅氏は初月だけで仲介会社30社と面談したり、税理士経由での探索も実施したりと、ただひたすらに「良い会社」を探し続けました。
そして、スピカコンサルティングの松栄遥から受けた提案がソルナ株式会社(以下、ソルナ)です。
実に、189社目の検討企業でした。
ソルナは風評被害対策やレピュテーションマネジメントを手掛ける企業であり、安宅氏が掲げる「ストック型ビジネスモデル」「市場成長性」「成長ポテンシャル」など、すべての条件を満たしていたのです。
「それまで検討してきた188社にはそれぞれ素晴らしい点がありましたが、ソルナは事業の安定性や成長性に加え、誠実さを重んじる文化など、自分が大切にしていた要素がバランスよく備わっていると感じました」
オーナーの想いに共鳴し、「婿養子」としての承継へ
初めてソルナのオーナーである三澤氏と会った時、三澤氏の誠実さや社員・顧客を大切にする姿勢に強く共感しました。こうした“人への想い”が会社の文化として根づいている点に、大きな魅力を感じたといいます。また、ソルナの持つ高い専門性とサービス品質に加え、営業・マーケティング面には大きな成長余地があり、野村證券時代の営業経験や、MBA留学・BCG時代の戦略立案で培った知見を存分に活かせると確信したそうです。
そして三澤氏は、会社を“売る”のではなく“託す”というサーチファンドの“婿養子的な事業承継モデル”に魅力を感じてくれていました。そうした中、交渉の過程では、より高い条件を提示する競合候補が現れる場面もありました。
最終的に次期経営者として三澤氏に選ばれた安宅氏は当時をこう振り返っています。
交渉の過程では簡単ではない局面もありましたが、松栄さんが“最後まで一緒に考えよう”と、将来の成長ポテンシャルの再確認や企業価値評価の整理に粘り強く伴走してくれました。いくつかの壁はあったものの、最終的に三澤氏は価格ではなく「誰に託すか」を重視してくださったのだと思います。
サーチャーから経営者へ
買収後の変化とソルナの新たな挑戦──“治療と予防”から“価値創造”へ
成約後の引き継ぎは前代表の三澤氏が進めていた業務の仕組み化のおかげで、当初3ヶ月以上の並走を予定していたところ、ほぼ1ヶ月で移行することができました。
ソルナはこれまで、ネット上でマイナスに傾いてしまった企業のレピュテーションを、事実に基づいた対応と改善施策によって“ニュートラルな状態に戻す”風評被害の治療・予防を中心に行ってきました。
今後は、風評監視で蓄積したデータや知見を活用し、集客支援や新しいサービス開発にも取り組むことで、レピュテーションを守るだけでなく、企業のブランド価値を“プラスに引き上げる”支援へと領域を広げていきます。
スピカコンサルティングへの評価
最後に、今回のM&Aを支援したスピカコンサルティングについてコメントをいただきました。
「スピカさんは、情報を右から左に流す“作業屋”ではなく、経営の視点から常に助言してくれる“パートナー”でした。また情報整理と感情に配慮したコミュニケーションが素晴らしく、限られた時間でも質の高いDDができました。サーチファンドのDDは、単なるリスク検証ではなく“買収後の経営戦略を描くための工程”であり非常に重要です。数多くの仲介会社を見てきましたが、M&Aコンサルタントとしての品質は最高品質だと感じています」
担当者からのコメント

