M&A仲介会社の選び方〜M&Aを利用した悪質な詐欺行為にご注意ください〜
M&A仲介会社の選び方
業界特有の動きを把握しているか
M&Aの仕組みや流れ、事業承継といった一般論でなく、業界特有の課題や最新動向、トラブル事例や論点などを知っているかどうかが大切です。どのような譲受企業がいるのか、その理由を明確に話せるか、どれくらいのネ ットワークがあるのかを確認しましょう。見極める際には、専門用語や業界特有の話題を投げかけてみてください。同じ業界にいる人間同士だから理解できる〝共通言語〟で会話できるコンサルタントならば安心です。法令に関する話や大手企業の動向に関する話など、業界特有の話題に付いてこれな いコンサルタントは厳しいでしょう。
自社を理解しようとしているか
決算書に表れる定量的な部分だけでなく、貴社 ならではの数字に表れない定性的な強みや弱みについても理解しているかどうかです。同じ売上、利益の企業が並んでいても、中身次第で株価が1 円の企業があれば数億円の企業もあります。それは定性的な価値を理解しているかどうかにかかっています。M&Aを実施する際は一時の付き合いではなく、長期的なお付き合いになります。それゆえ、信頼に足る人物か、自社の価値を理解してくれる人物かどうかを見極めてください。
私たちスピカコンサルティングでは、1人のコンサルタントが年間約400社の経営者と直に面談をしており、業界に精通したメンバーで構成されております。また、企業価値の向上に関する調 査研究機関「バリューアップラボ」では、各業界の企業価値の向上を専門に研究を重ねています。経営者の方との対話を通じて、会社だけではなく、オーナー個人の人生についても理解を深めて、より良い導きができるようにコミットしています。
迅速な対応をするか
迅速な対応はビジネスにおいて基本ですが、最初だけは良かったがアドバイザーとして選定した後に連絡が滞ったり、いい加減となったりすることがあると聞きます。様々な現場を経験してきた経営者の方ならば想像に難くないでしょう。実際お客様から「とあるコンサルタントに1年契約でお願いしたが、ほとんど動いてくれた形跡がなく終わってしまった。結局支払ったお金と時間がもったいないことになった」と言われたことがありました。契約までが目的なのか否か、他社の姿勢は分かりませんが、M&Aの場面でそうした悩みがあったと、お客様からの不満をお聞きすることもあります。契約後からの対応を見据える上では、こちら側の要望について「2週間で応えていけるか?」と聞いてみてください。経験や自信を持つコンサル タントならば、淀みなく応えることでしょう。
業界に愛があるか
M&Aの仲介会社も数多く存在します。しかし、その大半がブローカー的な動きをしてしまっているのも事実です。譲渡を希望されるお客様からアドバイザーとして選任をいただき、その後はマッ チングされるのをただ待っているという方も増えております。場合によってはアドバイザーとして選任もされていないうちに譲受候補企業に話を持っていくブローカーもいるくらいです。そのような方には皆様の企業を任せることは難しいでしょう。業界に愛があり、1社でも多くの企業を幸せにしたいかどうか、会話をしながらその熱い気持ちをぜひ確認していただきたいです。
M&Aを利用した悪質な詐欺行為にご注意ください
ルシアンホールディングス事件とは
メディアでも大きく取り沙汰されている「ルシアンホールディングス」の事件(以下、ルシアン事件)は、皆様の記憶にもまだ新しいのはないでしょうか。ルシアン事件の概要は、経営状況が悪化している複数の中小企業に対しM&Aを行い、相次いで売り手企業を倒産させ、さらに売り手企業の経営者・役員らに多額の負債を残したとする詐欺事件です。2021年秋ごろから、日本全国で30社近い企業の被害が発覚し、譲渡企業にとっては非常に不幸な事例となってしまいました。このルシアン事件は、振り返ってみると不審点がいくつもあったと言われています。
事件の特徴は、買収先の現金の抜き取りと経営者の個人保証の未解除にあります。買収後、様々な理由をつけて自社の口座に現金を振り込み、従業員の給与や金融機関への返済、取引先への支払ができず資金繰りが悪化、最終的には経営の存続危機に陥るという状態になりました。また、代表者の個人保証は通常買い手側に引き継がれるのが一般的ですが、本件の場合その約束は守られませんでした。
M&A仲介はなぜ、事件を防げなかったのか?
令和6年12月17日時点でのM&A支援機関登録数は2,841件と、近年M&A仲介を手掛ける法人や個人事業主が急増しました。増加の背景には様々な要因が考えられますが、その一つに「M&Aコンサルタントの質の低下」が挙げられます。ここ数年で、M&A仲介は年収の高い職業として広く知られ、様々な業界のトッププレイヤー達がM&Aの世界に参画してきました。
誰にでも経験が浅い期間が存在します。企業と業界の発展を願い、志の高いM&Aコンサルタントがいるのも事実です。しかしながら、高収入をモチベーションとするコンサルタントの場合は、仲介支援のゴールが「成約」になってしまいます。そのため譲渡企業の未来を考えれば、当然買い手として紹介しないような会社でも、早期のマッチングを狙い取引してしまったことがルシアン事件のような悲劇を生み出してしまいました。
ルシアンホールディングスと取引が報道されたM&A仲介会社のその後
2024年5月3日、東京新聞朝刊の報道を皮切りに、多くの新聞・ビジネスメディアが独自取材を実施。本件に関与したM&A仲介会社の名称や取引金額、その他にもルシアンHDの類似詐欺企業などが暴かれて行きました。関与仲介として名前が上がった15社は、中小企業庁からの指摘が入り改善策を講じることが求められています。また、安全なM&Aを推進する立場である「M&A仲介協会」に所属する複数企業が、悪質な買い手への仲介を行なっていたことでM&A業界全体の倫理観が疑われることになりました。
M&A仲介業者はトラブル回避のポイントや、M&Aの成功を導くための論点を熟知しています。一方で、 信頼できるコンサルタントとの出会いは一朝一夕とはいきません。「仲介会社の選び方」で紹介した4つのポイントを意識しながら、ここぞという時のM&Aコンサルタントを探していただければと思います。
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中央大学卒業後、GAテクノロジーズに入社。コーポレートコミュニケーションの専門部署であるCommunication Design Centerにて、オウンドメディアの立ち上げやDX銘柄プロジェクトなどを担当。またPR兼コピーライターとして、社内外へのコミュニケーション戦略の企画立案と実施に携わる。リノシークロスやモダンスタンダード、リノシーアセットマネジメントなどGAグループのBtoC・BtoBサービスにて広報を担当。2023年7月にスピカコンサルティングのPRを立ち上げ、現在は同社の広報戦略を担う。