2025年12月食品業界M&Aまとめ
2025年12月における食品業界のM&Aを解説します。今 月は、2025年の外食業界を総括し、2026年税制改正がおよぼす外食産業の業界再編についてもご紹介いたします。
この記事を見るとわかること
- 2025年12月における食品業界の公表M&A一覧
- 2025年の外食業界を総括
- 2026年の税制改正は外食産業の業界再編につながるか
2025年12月の食品業界のM&A件数は25組(公表ベース)
子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで25件となり、2025の累計件数は189件となりました。なお、前年同月は14件、前年1~11月の累計件数は138件となっており、累積件数では前年対比37%増と大幅にM&Aが増えた1年となりました。
公表年月日 | 譲渡企業(売り手企業) | 譲受企業(買い手企業) | 形式 | 目的 |
|---|---|---|---|---|
2025年12月1日 | (株)オー・ド・ヴィラージュ[東京都] | (株)ao[東京都] | 株式譲渡 | 創業者のブランドへの思いを未来に継承するため |
2025年12月1日 | (有)青磁[群馬県] | (株)馬車道[埼玉県] | 事業譲渡 | 店舗の利便性向上のため |
2025年12月3日 | エクササイズコーチジャパン(株)[大阪府] | ナッシュ(株)[大阪府] | 株式譲渡 | 譲受企業の顧客データやマーケティングのノウハウと譲渡企業が持つ「AIによる超効率的なトレーニングモデル」のシナジー実現のため |
2025年12月5日 | (株)SABAR[大阪府] | (株)コズミックホールディングス[大阪府] | 事業譲受 | 300店舗超の飲食店運営で培ったノウハウや組織力を活かし「SABAR」ブランドの価値向上、事業の継続的な成長、サービスのさらなる向上のため |
(株)鯖や[大阪府] | ||||
2025年12月5日 | サンエーフードサービス(株)[三重県] | (株)竹屋[三重県] | 事業譲渡 | 同県でミスタードーナツのFC同士の再編 |
2025年12月8日 | (株)プレマ[千葉県] | (株)大泉工場[埼玉県] | 株式譲渡 | 自社製品の原料供給の一部を支援する体制を整え、品質・コスト・供給の安定化を図り、サプライチェーン全体の透明性を担保するため |
2025年12月12日 | (株)玉[神奈川県] | 大和PIキャピタル(株)[東京都] | 株式譲渡 | 玉のブランドのさらなる成長の為 |
2025年12月15日 | (株)KINKA FAMILY JAPAN[東京都] | ワイエスフード(株)[福岡県] | 80%株式譲渡 | 寿司居酒屋業態の展開を一層加速させ、首都圏や、インバウンド需要の高い主要都市圏への展開を推進。海外進出も視野に入れた事業価値の最大化を図るため |
2025年12月15日 | マエストロ・ワークショップ(株)[東京都] | ひいらぎホールディングス(株)[宮崎県] | 株式譲渡 | 同社ともにサーティワンアイスクリームのFCを運営しており更なる成長を目指すため |
2025年12月15日 | (株)松富士[東京都] | (株)松屋フーズホールディングス[東証9887・東京都] | 株式譲渡 | ラーメン業態への本格進出を通じ、顧客接点を拡げ、事業の持続的成長と収益性の一層の向上を目指すため |
2025年12月16日 | (株)山十前川商店[北海道] | 食共創パートナーズ(株)[東京都] | 株式譲渡 | DX推進を含む多方面からのバリューアップを図り、日本の食文化を次世代へ継承するため |
2025年12月16日 | PESQUERA YADRAN S.A.[チリ] | (株)ニッスイ[東証1332・東京都] | 株式譲渡 | 養殖規模の拡大、加工及び販売ネットワークの拡充を図ると同時に、魚種と生簀の最適バランスなどの効率化を追及など、様々なシナジーを創出するため |
2025年12月17日 | 早川しょうゆみそ(株)[宮崎県] | (株)トライ・インターナショナル[千葉県] | 株式譲渡 | 伝統技術と品質を将来にわたり、維持・発展させていくため |
2025年12月17日 | 萬年亀酒造(株)[福岡県] | (株)天郷醸造所[福岡県] | 株式取得 | 後継者不在という課題も抱え、廃業の危機にあった同じ福岡県内の歴史ある日本酒酒蔵を、国益として未来に繋ぐため |
2025年12月17日 | コダルマ商店(株)[東京都] | GYRO HOLDINGS(株)[東京都] | 株式譲渡 | 事業ポートフォリオのさらなる強化のため |
2025年12月18日 | Diageo Kenya Limited , UDV (Kenya) Limited [ケニア] | アサヒグループホールディングス(株)[東証2502・東京都] | 株式譲渡 | 東アフリカ市場にて販売を継続していくため |
2025年12月19日 | (株)HUGE[東京都] | Lキャタルトン・ジャパン(同)[東京都] | 株式譲渡 | 国内出店加速と海外展開を実現し、グローバル外食企業としての成長を支援するため |
2025年12月22日 | (株)バーガーレボリューション[東京都] | ワイエスフード(株)[東京都] | 株式譲渡 | 国内主要都市にてインバウンド顧客に訴求できるブランドの展開を加速するため |
2025年12月22日 | (株)スーパーよしだ[鹿児島県] | タイヨーホールディングス(同)[鹿児島県] | 株式譲渡 | 鹿児島県北薩でのドミナント形成による企業価値向上と、グループ間でのノウハウ共有のため |
2025年12月23日 | マルハニチロ(株)[東証1333・東京都] | (株)OICグループ[神奈川県] | 株式譲渡 | 会社分割後に譲渡。国産牛の加工・生産の内製化のため |
2025年12月23日 | クリスピー・クリーム・ドーナツ[アメリカ] | ユニゾン・キャピタル(株)[東京都] | 事業譲渡 | 日本事業の更なる成長のため |
2025年12月24日 | (株)ベルネージュダイレクト[東京都] | 雪印メグミルク(株)[東証/札証2270・北海道] | 株式譲渡 | 成長促進領域に掲げる機能性食品事業のさらなる拡大成長と実行スピードアップのため |
2025年12月26日 | (株)セリア・ロイル[福岡県] | 日清食品ホールディングス(株)[東証2897・東京都] | 株式譲渡 | 堅調な成長をしているアイスクリーム市場を高付加価値商品の展開が期待できるカテゴリーとして持続的な成長に向けたシナジーの創出ができると考えたため |
2025年12月26日 | (株)トップワン[愛知県] | (株)ベイシア[群馬県] | 株式譲渡 | 「良品廉価」という共通の経営理念を持つ両社が、持続的な成長と地域貢献を加速させるため |
2025年12月26日 | 山芳製菓(株)[兵庫県] | (株)おやつカンパニー[三重県] | 株式譲渡 | おやつカンパニーの有する国内外およびECの販売ネットワークを活かした展開により両社の顧客層の相互拡大を図るため |
<2025年12月の食品業界 代表的な公表M&A>
【Pick up M&A】松富士 × 松屋フーズホールディングス
松屋フーズホールディングスは「六厘舎」「舎鈴」等のブランドで、つけ麺・ラーメン業態を展開する株式会社松富士をグループ会社化しました。松富士は六厘舎が5店舗ですが、舎鈴は69店舗、他にもジャンクガレッジやトナリなど計120店舗もの運営をしています。本M&Aにより、松屋フーズはラーメン業界において一気に120店舗の基盤を築いたことになります。
本件の取得価格は91億円であり、松富士の連結純資産が15億円であることから76億円の営業権(取得価格と純資産の差額)が評価されたことになります。松富士の連結営業利益が4億円、当期純利益が1.6億円であったことから、現状のままでは営業権の回収には長い年月を要します。ここからも松富士を大きく飛躍させていこうという松屋フーズの覚悟が見受けられます。IRでは海外を含めた未進出エリアへの出店余地が大きいと評価しているとのことだったので、今後、店舗数は大きく伸びていくことでしょう。
松屋フーズによれば『外食市場は、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大が進む一方、原材料価格の高止まりや人件費・エネルギーコストの上昇、為替変動など不確実性が併存しています。こうした環境下、「マルチブランドの推進」と「収益構造の高度化」を中長期戦略の柱に据え、ラーメン領域を取り込むことで業態ポートフォリオを拡充し、持続的な企業価値向上を図ってまいります。』とリリースされています。
2025年は米の価格が大きく上昇したように、先行きが不透明な現代において、他業態を取り込むことでリスクヘッジする手法は今後ますます重要になってくると共に、外食産業における業界再編が進んでいくことが予測されます。こうした兆しは2025年の年間M&A件数の昨年対比大幅増にも表れていると言えるでしょう。
業界のニュース
2025年の外食業界を総括
原価・人件費・物流費など物価高による激動の2025年は、M&Aの前年対比37%増というかたちで終わりました。2025年の外食業界の市場動向はまだリリースされておりませんが、前年までの各指標を2015年からの10年間の推移で分析すると以下の表が導かれます。

店舗数は10年前より7%ほど減少するも、客数は微減に留まっており10年前とほぼ変わっていません。2011年以降は日本国内の人口は減り続けていますが、コロナ前まで客数が増加していることを考えると、これはインバウンド客の増加が考えられます。そして注目すべきは、市場規模(売上高)が2015年と比較して29.6%増加していますが、その背景としては客単価が30.2%増加しているという点です。客数は横ばいながらも、物価高に伴う価格高騰が市場規模を拡大している構図になります。
顧客の経済状況が物価高に追いついていれば問題ないのですが、客単価上昇と客数のバランスをどこまで保てるか、非常に繊細なバランスの上に成り立っているのが外食産業だと言えます。

この10年間で大きく伸長した業態として「はま寿司(ゼンショーHD)」「スシロー(FOOD & LIFE COMPANIES)」「くら寿司」などの回転ずし業態が挙げられます。
回転ずし業態は、価格設定の自由度が高い業態で、お皿ごとに価格帯の違いがあり、お財布事情にあった選択ができます。また、食べる枚数も子供から大人まで個人の胃袋のキャパシティに応じて適量にコントロールすることが可能です。外食の割高感が高まっている中で、こうした価格設定や食べる量の自由度・納得度の高い業態が支持を集めているのかもしれません。最近は、焼肉やすき焼き店などでも1枚単位で追加ができるような業態が人気になっています。こうしたセルフコントロールが可能な業態が、これから益々人気を得ていくのかもしれません。
2026年の税制改正は外食産業の業界再編につながるか
ラーメン業界のM&Aが大型化しています。11月には魁力屋が、つけ麺専門店「三田製麺所」の運営会社を傘下に持つエムピーキッチンホールディングスを子会社化しました。三田製麺所の純資産9,950万円に対し、50億円での取得となったので、ここでも営業権が49億円ほど評価されています。なお、エムピーキッチンの営業利益は売却時で△4億4,000万円のため、松富士同様に営業権の回収には早急な業績拡大が求められます。
これまで外食産業は顧客が様々な味を求めることから、どこかのチェーンに統一されていくような業界再編は、コンビニ業界などとは異なり、起こりづらいとされてきました。ところが、コロナ禍やインバウンド客の変動、原材料や人件費、物流費などの高騰といった劇的な変化が起きている中で、ここにきて中堅企業が大手企業の傘下に入り、業界再編の波が起きようとしています。
一見、独立したブランドに見えても、実は同じ大きな資本の傘下のもとで成長を目指しているという戦略が従来以上に増えてきました。この流れが加速することで、大手企業グループと中小企業では、仕入や採用など様々な面での差が開いていき、中小企業にとって単独での経営が難しくなっていくことが懸念されます。中小企業は資本政策を今一度検討すべきタイミングにきていると思います。
一方で、中堅企業にとっては、タイムリーな譲渡タイミングが訪れています。営業権を評価されやすい風潮があることだけではなく、2026年の税制改正では従来は30億円以上の所得がある富裕層だけに適用されていたミニマム課税が約6億円まで引き下げらえる方向で調整されています。中堅企業クラスでは6億円以上の譲渡対価になることは珍しくないため、税制改正により増税となることで手取りが減少する可能性があります。創業者利潤としての手取り額を最大化するためにも、中堅企業では税制改正前の駆け込みでのM&Aが増えることでしょう。
税制改正は何も外食産業に限った話ではなく、当然ながら食品製造業・食品卸・食品小売といったあまねく業界へと影響します。こうした背景から2026年は大型のM&Aが更に増えることが予想されています。
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宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。