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2026年5月の食品業界M&Aまとめ

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2026年5月の食品・外食業界のM&A市場は、前年同月比で件数が増加するなど活況が続いており、中堅・中小企業が次世代へバトンを繋ぐための「前向きなアライアンス」が目立つ1ヶ月となりました。

今月の動向を象徴するのは、食に特化した事業承継プラットフォームであるまん福ホールディングスによる、下北沢の老舗飲食企業「ジャックポットプランニング」のグループ化です。ファンドとは異なり、ブランドの永続的な発展を目指すプラットフォームへの参画は、新たな生存戦略として注目されています。また、外食産業の多店舗展開において不可欠となった「AI・IT投資」の壁を突破する手段として、大手のインフラを即座に活用できる「大手傘下入り」という選択肢が現実味を帯びてきています。

本記事では、5月の主要M&A事例を振り返りながら、日本の豊かな食文化を守り、さらに成長へと導くための最先端の資本戦略について、業界専門コンサルタントが解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年5月の食品業界主要M&A一覧: 前年比増で活況を呈する市場の最新トレンド
  • 【Pick Up】老舗飲食の事業承継: まん福HDによるジャックポットプランニングのグループ化と食材調達シナジー
  • 「事業承継プラットフォーム」の強み: ヨシムラ・フードHD等に見る、イグジットを前提としない永続保有・成長支援モデル
  • 多店舗展開を阻む「2つの壁」: 中堅・中小企業が単独で直面する、データ蓄積量と投資コストの限界
  • 「大手傘下入り」という成長戦略: 大手の売上予測AIやDX化されたITインフラを活用し、リスクを最小限に抑えて店舗拡大を目指す手法

目次

5月の代表的な公表M&A一覧

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで17件となり、2026年1-5月の累計件数は71件(前年同期間は61件)です。なお、前年同月は11件となっており前年同月比で増加しており食品業界のおけるM&A市場が活況であることが伺えます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年5月7日

(株)アジテック・ファインフーズ[岩手県]

(株)ヤマタネ[東証9305・東京都]

株式譲渡

事業戦略として掲げているバリューチェーンの拡大や加工・販売機能の強化のため。

2026年5月7日

長野MCセンター(株)[長野県]

(株)マルエー[長野県]

事業譲渡

地域に根ざしたサービスの品質向上のため。県内のM&Aを今後も検討。

2026年5月8日

(株)ナナミ[千葉県]

(株)ヤグチ[東京都]

株式譲渡

業務用卸店向けの国産米の安定確保のため。

2026年5月8日

回転寿司 魚丸[北海道]

HIR(株)[北海道]

事業譲渡

地域に必要とされているものの、経営に行き詰っている事業の存続のため。

2026年5月8日

ラーメン 小太郎[北海道]

HIR(株)[北海道]

事業譲渡

地域に必要とされているものの、経営に行き詰っている事業の存続のため。

2026年5月13日

ダイヤソルト(株)[福岡県]

ジャパンソルト(株)[東京都]

株式譲渡

バリューチェーンを⼀体化することにより、さらなる競争⼒の強化を図るため。

2026年5月13日

貞光食糧工業(株)[徳島県]

(株)十文字チキンカンパニー[岩手県]

株式譲渡

貞光食糧工業が直面する後継者課題の解決のため。

2026年5月15日

(株)くらすわ[長野県]

(株)山田養蜂場本社[岡山県]

株式譲渡

より広範なリソースを持つ山田養蜂場のもとで事業を展開することで、提供価値を最大化するため。

2026年5月15日

(株)岩木 子会社8社[宮崎県,大分県,鹿児島県,大分県]

武ダGEAD(株)[北海道]

株式譲渡

九州・沖縄地域での事業基盤の構築のため。

2026年5月18日

(株)ジャックポットプランニング[東京都]

まん福ホールディングス株式会社[東京都]

事業譲渡

ブランド力や店舗開発力を活かし、“また行きたい”と思ってもらえる店舗づくりをさらに強化するため。

2026年5月21日

重西醤油醸造場[広島県]

(株)ますやみそ[広島県]

事業譲渡

伝統ある味わいと技術を絶やすことなく次世代へ引き継ぐため。 

2026年5月22日

有限会社桔梗屋[愛知県]

(株)名鉄リテールホールディングス[愛知県]

株式譲渡

これまでの歴史を絶やすこと無く、未来へとつないでいくため。

2026年5月25日

(株)やおふく[長野県]

(株)クリエイトSDホールディングス[東証3148・神奈川県]

株式譲渡

長野県におけるドミナント戦略および同エリアにおける生鮮食品・惣菜の供給拠点の構築のため。

2026年5月26日

Onigilly, Inc.[米]

ワタミ(株)[東証7522・東京都]

株式譲渡

サプライチェーンを強化し、調達力、商品開発力、製造加工能力の増強、供給網および販路の拡大を図るため。

2026年5月27日

(株)パン・オーレ[富山県]

(株)リベラ・フード&ビバレッジ[東京都]

株式譲渡

飲食事業の強化とともに、地域に根ざした食文化を守るため。

2026年5月28日

(株)HLS[岡山県]

(株)さんれいフーズ[鳥取県]

株式譲渡

地域基盤の強化、物流の効率化およびメディカル分野の専門性活用のため。

2026年5月29日

(株)New Order[福岡県]

(株)フードプラス・ホールディングス[福岡県]

株式譲渡

事業ポートフォリオの拡大及び顧客層の拡大。また、九州全域への出店拡大のため。

<2026年5月の食品業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】まん福ホールディングス × ジャックポットプランニング

食に特化した事業承継プラットフォームを展開するまん福ホールディングス株式会社(以下、まん福HD)は、下北沢を拠点に飲食事業を展開する株式会社ジャックポットプランニング(以下、ジャックポットプランニング)の事業を承継し、グループ化しました。 

まん福HDは、国内の中小企業における後継者不在という社会課題に対し、食業界に特化した事業承継を行っており、創業から約5年で本件を含め16社(米国1社含む)の承継実績を重ねています。

ジャックポットプランニングは、下北沢を原点に今年で創業50周年を迎える老舗の飲食企業です。牡蠣・ビストロ・和洋創作など多彩な7ブランド・計17店舗を展開しており、単なる飲食店にとどまらず、食材・空間・接客を融合させた独自の“食体験”や地域に根ざしたカルチャーを築き、高い顧客エンゲージメントを誇っています。 

今回の事業承継は、ジャックポットプランニングが長年培ってきたブランドや信頼、食の文化を未来へ継承することを目的としています。その上で、まん福HDグループが有する外食・食品・流通ネットワークと連携し、食材調達、商品開発、人材交流などを通じた「食のプラットフォーム」としてのシナジー創出と、グループ全体の店舗開発力の強化を目的としています。 特に、まん福ホールディングスは食肉加工会社や水産加工会社をグループ会社として保有しており、複数業態を展開するジャックポットプランニングにとって安定的な食材調達などのシナジーが期待できます。

まん福ホールディングスの他にも、株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(以下、ヨシムラ・フードHD)のような「食品特化型の事業承継プラットフォーム」企業が買い手となり、地域の優れたブランドや技術を次々とグループ化する事例が昨今相次いでいます。

ヨシムラ・フードHDは、高い商品力や技術を誇りながらも、後継者不足などを理由に存続が難しくなった中小食品企業をM&Aにより譲り受け、その再成長を支援しています。事業承継プラットフォームは、買収後一定期間でのイグジットを前提とするファンドとは異なり、永続的に事業を保有する方針をとっています。それにより、各社の独自ブランドや雇用、経営の自主性を最大限に尊重しながら、自社が持つ営業・マーケティング、商品開発、品質管理といった機能を横断的に提供するという独自の事業成長の支援モデルを確立しています。

昨今の食品業界のM&Aからもわかる通り、単独ではDX化や販路開拓、海外展開の壁を越えられない中堅・中小企業にとって、安定的な経営インフラを保有する上場プラットフォームの傘下に入ることは、極めて現実的かつ前向きなブランド生存戦略となっています。後継者不在やコスト高に伴う経営圧迫などによる廃業数の増加が懸念される国内市場において、こうしたプラットフォーム型のM&Aは、日本の豊かな食のバリエーションや技術を次世代へ、そして世界へと繋ぐ重要な手段として、今後も市場を牽引していくことが予想されます。

業界のニュース

外食店舗拡大を後押しする成長戦略:AI・IT投資と「大手傘下入り」という選択肢

外食企業にとって、30店舗、50店舗、100店舗と多店舗展開を加速させることは、事業成長において不可欠です。しかし、規模が拡大するにつれて、経営者個人の手腕に頼った属人的な店舗開発や店舗運営は限界を迎えるケースが少なくありません。 

この壁を突破するカギとして、本コラムでは「AIを活用した高精度な店舗開発」と「IT導入によるオペレーションの標準化・人件費抑制」という2つの戦略を、大手企業の事例を交えながらご説明します。

1. AIを活用した高精度な売上予測と店舗開発 

新規出店における「退店リスク」を極小化することは、多店舗展開の絶対条件といえます。

例えば、「丸亀製麺」や「ずんどう屋」を展開するトリドールホールディングスでは、AIを活用した売上予測の導入検証を進めています。このシステムでは、店舗の広さや立地といった基礎情報だけでなく、国勢調査、人流データ、競合データなど、実に4万種類以上のビッグデータを活用しています。これらのインプットデータをもとに、約18種類のアルゴリズムから予定している出店計画において最適なものを特定し、30パターンの予測を算出します。そこから平均値を導き出すことで、新規店舗の年間売上を高精度に予測しています。

今回ご紹介した事例のように、AIを活用することで、客観的かつ精緻な店舗開発が可能となり、失敗しにくい安定した出店拡大を後押しすることが出来ます。

2. IT導入による業務の標準化と収益性の向上 

出店後の店舗運営において、人手不足に対応しながら収益性を向上するために、ITツールの導入による省人化は不可欠なものになってくると考えられます。

物語コーポレーションが展開する「焼肉きんぐ」は、2010年という早期からタッチパネルを用いた注文システムを導入しました。これにより、店舗での注文受けなどの作業の軽減に成功し、人件費の大幅な抑制を実現しています。また、ITによるシステム化とマニュアル化を進めることで、スタッフの熟練度に関わらず、常に一定のクオリティを維持できるオペレーションを構築しています。この仕組みこそが、どの地域に出店しても安定した収益性を再現できる、多店舗展開のベースとなったようです。

AIやITの導入が多店舗展開のカギになることは明白ですが、中堅・中小の外食企業が単独でこれらを実行しようとすると、2つの壁にぶつかると予想されます。

1つは、「データ蓄積量」の壁です。AIを十分に機能させるには、数万規模のデータや過去の検証実績が必要になります。それらを保有していない企業が、単独でAIを最大限に活用することは非常に困難であるといえます。2つ目は、「投資コストと時間」の壁です。中堅・中小企業がゼロからシステムやインフラを構築するには、莫大な資金と時間を要します。安定した出店拡大の為にとった施策が、逆に経営を圧迫し、出店拡大を遅らせてしまうという、本末転倒な状況になりかねません。

これらの壁を克服するためのアプローチの一つが、すでに莫大なビッグデータと強固なIT基盤を保有している「大手外食企業のグループ傘下に入る」選択肢です。

大手企業の傘下に入ることで、豊富な顧客データや物件情報、独自の売上予測AIを駆使した「出店成功率の向上」に加え、導入済みのタッチパネルやDX化された発注システムといった「ITインフラの即座の活用」を同時に実現できます。これにより、自社単独では莫大なコストと時間がかかるシステム構築をスキップし、リスクを最小限に抑えながら、深刻化する人手不足の中でも安定した収益性を担保した多店舗展開が可能となります。

まとめ

AI・ITによる仕組み化は、これからの外食企業が持続的に店舗拡大をしていくための必須条件となってくることが予想されます。しかし、ゼロから自社でシステムを構築していては、激しい市場競争のスピードに置いていかれかねません。

自社が築き上げてきた「ブランド力」や「味・コンセプト」という強みに、大手企業が持つ「ビッグデータ」「ITインフラ」「資金力」を掛け合わせる 。そのような目的でのM&Aは、決して後ろ向きな選択肢ではなく、自社のポテンシャルを最大限に発揮し、安定的に出店を拡大していくための合理的な成長戦略の1つと言えます。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

吉原 圭吾

埼玉県出身。実家は埼玉県にて結婚式場・葬儀場を営む。一橋大学商学部卒業後、2025年に新卒でスピカコンサルティングに参画。

担当者:吉原 圭吾部署:食品業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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