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業界別M&A
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2025年6月の調剤薬局業界M&Aまとめ

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目次

6月に公表された調剤薬局M&A

2025年6月に公表された調剤薬局のM&Aは以下の通り(表1)です。調剤薬局の中小企業M&Aにおいては公表されない事例が多いため、水面下での経営主体の変更は他にも多数実行されています。

公表日

譲渡企業

業種

譲受企業

形式

2025年6月2日

株式会社ピーエイシー(未上場・東京都)

調剤薬局

総合メディカル株式会社(未上場・福岡県)

株式譲渡

<表1 2025年6月公表 調剤薬局業界のM&A>

6月に公表された事例は、ファンドとの提携関係を活かし非上場ながら積極的なM&A推進を進めている総合メディカル株式会社による株式会社ピーエイシー(東京・4店舗)のM&Aでした。

総合メディカル株式会社は、CVCというシティグループ系のファンドとともに、M&Aを積極的に活用しながら、企業価値向上を目指しています。昨年12月に発表された総合メディカル株式会社による株式会社ライフアート(広島・62店舗)のM&Aは記憶に新しいのではないでしょうか。

2025年6月2日発表の本件M&Aで、総合メディカル株式会社は全国802店舗の展開となりました。店舗数でいうと、業界(ドラッグストア除く)ではアインホールディングスの約1200店舗、クオールホールディングスの約900店舗に次ぐ規模です。

※アインホールディングスの店舗数は、先月発表されたクラフトホールディングスのM&Aを考慮していません。

業界トピックス

次回の調整報酬改定の論点

2025年4月に財務省より財政審議会での議論の内容が公表され、関係各所との調整が開始されています。発表内容を紐解くと調剤薬局業界に関連する主な論点として、以下5点が挙げられます。

項目

内容

①スイッチOTCの推進

保険適応としている処方箋薬の見直し

②後発加算の適正化

後発比率の目標を達成したため、インセンティブを見直す

③技術料の適正化

基本料1の適応範囲の見直し

④リフィルの推進

リフィルについては医療機関にインセンティブをつけていく

⑤人材紹介会社への規制

人材会社経由の薬剤師の離職率の高さを問題視

※2025年4月28日 財務省財政審議会「持続可能な社会保険制度の構築」よりスピカコンサルティングにて作成

“①スイッチOTCの推進”については近年、国会でも議論に挙げられ、世論全体の注目も高まっています。OTC医薬品を活用した健康指導は「薬局/薬剤師の活躍の場が広がる」という期待の声が挙がる一方、「自社の薬剤師がOTC医薬品を活用した健康指導に対応できるスキルを持ち合わせていない」といった不安の声も経営者の方々からは挙がっています。

同様に、期待と不安の声が入り混じっているのが“④リフィルの推進”についてです。政策として、リフィルの推進が強力に後押しされる場合、真の意味でかかりつけ機能を持つ薬局/薬剤師にとっては、立地勝負の世界線から抜け出すことができるため、大きなチャンスとなります。一方、目の前の医療機関に来る患者さんの来局頻度は減ってしまいますので、立地に依存するモデルで利益を創出していた薬局にとってはマイナスの影響が出てくる可能性があります。

スイッチOTC及びリフィルの推進は、「チャンスor脅威」が会社・経営者によって意見が分かれます。

発表資料の中で、“②後発加算”について「適正化」という言葉が多く使われていました。この適正化は実質的には減額と同義です。来年度の計画を立てる上で、どの程度自社の運営する店舗の収益性に影響があるのかは試算しておく必要があると思います。

“③技術料の適正化”については、高集中率店舗の基本料1の適応範囲が変更されることが予想されます。現時点で85%を超えている集中率の店舗は、対応策を練らなければ減益となる可能性があるように思います。

人材紹介会社への規制についても、以前から言われていましたが今回はさらに議論が進んでいきそうです。薬剤師において、人材紹介会社経由での採用とそれ以外の場合で、離職率におよそ2倍の開きがあると記載がありました。人材紹介会社が自社の利益のために無駄な転職を斡旋していると見られているということだと思います。

採用形態

3カ月以内離職率

6カ月以内離職率

人材紹介会社経由の採用

12.1%

19.8%

それ以外

6.9%

10.0%

※2025年4月28日 財務省財政審議会「持続可能な社会保険制度の構築」よりスピカコンサルティングにて作成

「保険料と税金で賄われている医療機関の経営原資が必要以上に紹介手数料に流れ、さらに保険料の上昇を招くことのないよう、実態を把握の上で必要な対応を図る必要がある」「手数料の多寡や定着状況により紹介業者が選別・淘汰される仕組みを推進」など、強い言葉で規制強化の必要性が謳われていました。

次回の調剤報酬改定の内容は、来年の2月までに少しずつ明らかになっていきます。様々な変化が予想される中、具体的な内容が発表されてからの対応では間に合わないため、次の変化を予測し事前に対策を立てておくことが必要です。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

原 佑輔

東京都出身。東京理科大学卒業後、日系コンサルティング会社にて大手企業やPEファンドの投資先などの収益改善に貢献。2017年日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界の西日本エリアの責任者として、拠点立ち上げを行う。2023年スピカコンサルティングに参画。

担当者:原 佑輔部署:調剤薬局業界支援部役職:執行役員

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