M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
投稿日:更新日:

2026年3月の食品業界M&Aまとめ

メールで送る

2026年3月の食品業界は、2025年の活況を維持しつつ、案件の「大型化」と「二極化」がより鮮明になった1ヶ月でした。

外食・食品メーカーともに、人手不足や原材料高騰という構造的課題を背景に、大手資本の傘下に入ることで成長を加速させる「戦略的選択」が一般化しています。とりわけ今月は、投資ファンドからの大型EXITや、海外市場を狙ったクロスボーダーM&Aが目立ちました。

特筆すべきは、買収価格の算定において、従来の利益指標(Value)だけでなく、その企業にしかない独自のストーリーや技術(Worth)がこれまで以上に高く評価されている点です。本記事では、3月の主要案件を振り返るとともに、これからの時代に「選ばれる企業」となるための企業価値の本質について深掘りします。

この記事を見るとわかること

  • 2026年3月のM&A市場概況: 前年超えのペースで進む業界再編の現在地
  • 【Pick Up】C-United × コロワイド: 441億円の大型買収から見るファンドのEXIT戦略とシナジー
  • 「高値」がつく企業の共通点: 収益性(Value)と独自性(Worth)の違いを理解する
  • 経営の「非合理」が価値を生む: しんぱち食堂や珈琲館に学ぶ、模倣困難な強みの作り方

目次

3月の代表的な公表M&A一覧

今月は、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われたM&Aとして15件が公表されました。昨年同月は14件で、2026年1-3月の累計件数は37件(前年同期間は36件)です。食品業界のM&Aが多かった2025年と同水準で進んでおり、引き続きM&A市場が活況になっています。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年3月2日

(株)藤山水産加工[北海道]

エコモット(株)[東証3987・北海道]

株式譲渡

水産加工現場にAIを導入することで効率化と品質安定化を目指す。

2026年3月3日

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン(株)[東京都]

ユニゾン・キャピタル6号投資事業有限責任組合[東京都]

株式譲渡

米クリスピー・クリーム・ドーナツの再建計画において、日本での事業運営と成長をユニゾン・キャピタルが支援。

2026年3月4日

(株)壮関[栃木県]

D Capital(株)[東京都]

株式譲渡

壮関をアジアを代表する健康素材菓子企業へと飛躍させていく。

2026年3月9日

The Mochi Ice Cream Company, LLC[アメリカ]

森永製菓(株)[東証2201・東京都]

株式譲渡

米国アイスクリーム市場でのバリューチェーンの構築を目指す。

2026年3月10日

C-United(株)[東京都]

(株)コロワイド[東証7616・東京都]

株式譲渡

グループの業態ポートフォリオを強化・補完する。

2026年3月12日

(株)Fリミテッド[東京都]

(株)SANKO MARKETING FOODS[東証2762・東京都]

事業譲渡

譲受企業の水産部門を活かした天ぷらや出汁をうどんに活かすため。

2026年3月19日

(株)me[大阪府]

(株)壱番屋[東証7630・愛知県]

株式譲渡

高い人気を誇るスパイスカレーをグループに入れることで「食のエンターテイメント企業」を目指す。

2026年3月23日

Sushi & Food Factor Sp. z o.o.[ポーランド]

(株)ゼンショーホールディングス[東証7550・東京都]

株式譲渡

近年、北米や欧州におけるテイクアウト寿司事業をM&Aで譲受しており、本件でもグローバル中食事業を拡充する。

2026年3月25日

(株)しんぱち[東京都]

(株)すかいらーくホールディングス[東証3197・東京]

株式譲渡

ロードサイドに強い譲受企業が、都心部に強い譲渡企業を迎え入れることで、更なる事業拡大を実現するため。

2026年3月26日

(株)山和食品[山梨県]

(株)SEVENRICH CAPITAL[東京都]

株式譲渡

譲受企業のネットワークや支援機能を活用しながら、財務戦略、組織構築、マーケティングなどの分野で後押しし、譲渡企業の事業を更に成長させていく。

2026年3月30日

(株)あさ開[岩手県]

(株)ジャパンインベストメントアドバイザー[東京都]

株式譲渡

後継者不足の解消と、高品質な酒造りブランドを活かした地域活性化・事業拡大のため。

2026年3月30日

(株)クロフーディング[大阪府]

ドクターリセラ(株)[大阪府]

株式譲渡

レストランでの障がい者雇用の推進と、譲渡企業のフランスとのネットワークを活用した譲受企業の海外展開のため。

2026年3月30日

大阪北部中央青果(株)[大阪府]

東京中央青果(株)[東京都]

株式譲渡

販売や物流面などで連携し、青果物の供給体制を強化する。

2026年3月31日

フランチャイズビジネスインキュベーション(株)[滋賀県]

AIフュージョンキャピタルグループ(株)[東証254A・東京都]

株式譲渡

譲渡企業が運営する「鰻の成瀬」は今後も出店余地が大きくポテンシャルがあるため。

2026年3月31日

海外の機内食事業15社[カナダ、アメリカ、ニュージーランド、香港、韓国、タイ、イギリス]

(株)MEAL HUB[兵庫県]

株式譲渡

譲受企業は業務スーパーでの海外展開ノウハウを持つ神戸物産と機内食事業の実績があるグルメ杵屋による共同出資会社で、海外の機内食市場に本格参入する。

<2026年3月の食品業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】C-United × コロワイド

近年、食品業界における有名ブランドの譲渡が相次ぎ、その評価額も高まっています。直近半年以内でも以下の表に示すようなブランドが譲渡を行っており、有名ブランドであっても大手の資本傘下に加わる時代だと言えます。その中でも今回は約441億円での取得となったC-United×コロワイドの事例について解説していきます。

譲渡企業

譲渡企業のブランド

譲受企業

取得価格

エムピーキッチン

三田製麺所など

魁力屋

50億円

松富士

六厘舎、舎鈴など

松屋フーズホールディングス

91億円

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン

クリスピー・クリーム・ドーナツ

ユニゾン・キャピタル6号投資事業有限責任組合

100億円

C-United

珈琲館、カフェ・ベローチェ、カフェ・ド・クリエ等

コロワイド

441億円

しんぱち

しんぱち食堂

すかいらーくホールディングス

110億円

<直近半年以内の食品ブランドにおける高額M&A(2026/04/14時点)>

①譲受企業側の売上高アップ観点

前提としてコロワイドは、中期経営計画「COLOWIDE Vision 2030」において、2030年3月期までに連結売上収益5,000億円の達成を目標に掲げています。

コロワイドの2026年3月期の売上高予想は2,884億2,700万円となっておりますので、残り4年間で売上高で2,000億円以上アップさせる計画です。譲渡企業であるC-Unitedの2025年3月期での売上高は323億6,393万円となっており、この売上が加わることはコロワイドとしても大きなインパクトがあります。

②譲渡企業側の戦略的EXIT

譲渡企業であるC-Unitedは、投資ファンドのロングリーチグループの投資先になります。もともとは2018年にUCCフードサービスシステムズから珈琲館事業を取得。また、2020年にはカフェ・ベローチェを展開していたシャノアールの全株式も取得しました。その後、これらを経営統合して2021年に誕生したのがC-Unitedです。その後、2022年には「カフェ・ド・クリエ」などを展開していたポッカクリエイトの株式を取得し、現在の体制になりました。

もともとのベローチェや珈琲館は、低価格路線で、店舗も少し古めかしいイメージを持たれており、ファンド傘下で価格の改善や店舗のリニューアルなど、企業価値を向上させてきました。今回のコロワイドへの譲渡は投資ファンドとして企業価値を高めたうえで441億円でEXITしたという流れになります。

③両社のシナジー

コロワイドは、牛角、かっぱ寿司やフレッシュネスバーガー、大戸屋など多岐に渡るブランドを経営しており外食のイメージが強いと思います。しかしながらコロワイド社はデザート事業にも力を入れており、2024年に投資ファンドのアドバンテッジパートナーズから日本銘菓総本舗(現:N Baton Company)を譲り受けています。日本銘菓総本舗は、地域銘菓・名産品にかかる事業承継のプラットフォーム企業として、洋菓子店クリオロを経営するエコール・クリオロ、CHEESE GARDENなどを運営する庫や、栃木の洋菓子店GrindelBergを運営するトアヴァルトの3社によって構成されています。コロワイド傘下に入ったことで現在は社名をN Baton Companyへと変更しています。

今回、コロワイドが譲り受けたC-Unitedによるカフェ業態はデザート事業との親和性も高く、C-Unitedが約600店舗を持つ国内第5位のカフェチェーンであることから、相互にシナジーを活かした成長戦略が描けることになります。

業界のニュース 

企業価値が高く評価されている会社とは?

2024年のすかいらーくホールディングスによる、資さんうどんの240億円買収劇のように、近年、有名ブランドの大手資本参画が相次ぎ、業界再編が進んでいます。また、その際の企業価値の評価額が高まっていることで大きな注目を集めています。では、どのような企業が価値が高いと評価されるのでしょうか?

日本語の「価値」ですが、英語では「Value」と「Worth」という2つの単語があります。

Valueは相対的な市場価値であり、Worthは内在的な絶対価値です。

Valueとしての市場価値は、例えば利益率の高さ、利益の絶対額、自己資本比率の高さなど、他社と比較できる数値においての価値で、これはM&Aにおいても価値算定の基準となります。M&Aは譲受企業にとっては投資になるため、当然ながら買収にかかった費用を回収しなければなりません。一般的には3年~7年くらいでは投資回収できなければ、そのM&Aではなく他のことに投資したほうが良いとなるのではないでしょうか。その際に何をもって投資回収するかといえば、譲渡企業が生み出す利益です。この観点からも、収益性の高さはValueの算定にあたって基礎となります。

ところが、近年のM&Aは買収額だけを見ると10年以上投資回収にかかりそうな、一見すると高値掴みとも思えるような高い評価を得ている事例が増えてきました。これらはWorthとしての価値を評価されているように思います。冒頭でWorthは絶対価値という言葉を使いましたが、言い換えるならば独自性の高さだと言えます。

例えば、先述のC-Unitedは焙煎所を持ち、コーヒー生豆のブレンド、焙煎から商品発送まで一環して行っています。C-Unitedの運営する珈琲館では、炭火焙煎コーヒーや、銅板で手焼きしているトラディショナル・ホットケーキなど、職人技と品質を重視したメニューを通じて、日本独自の喫茶文化を現代に継承しています。人手不足でDX推進が求められる時代に逆行するように見えるかもしれませんが、店舗マネジメントや人材育成にはABILI(旧:ClipLine)を導入し、店長の負荷を軽減するなどデジタル化すべきところはデジタル化し、代わりにホットケーキを手焼きするなど店舗の独自性へと繋がる部分を残しています。

一橋大学大学院特任教授の楠木建氏は「優れた経営は局所で非合理、全体で合理的」ということを述べています。経営の全てを合理的な判断だけで行えば、ビジネスモデルは模倣されやすいものになります。局所的な非合理があることで、差別化された競争優位が生まれます。

ホットケーキを銅板で手焼きでつくるという手間が、他社が模倣を諦めるポイントになり、珈琲館は喫茶店であるというストーリーに深みを与えています。経営において、8割の合理性と2割の非合理が強固な基盤を作ると言われますが、近年の高い企業評価を受ける企業は、こうした独自性を持っています。

すかいらーくホールディングスに110億円で譲渡したしんぱち食堂には同社が独自に開発した高速炭火焼機の技術があります。通常の炭火焼に比べて約半分の時間で、なおかつ焼き損じも少ない仕様になっています。この専用の炭火焼機により、焼き魚のファストフードとして、短時間で高品質な干物定食をリーズナブルな価格で提供ができています。電子レンジ等ではなく、炭火で焼くことにこだわり、それを追及した結果としての独自の機械。こうした独自性こそが絶対価値として、より一層の高い企業評価へと繋がっていると思われます。

まとめ

今月も有名ブランドの譲渡が複数ありました。引き続き問題になっている人手不足などの問題に加え、中東情勢の悪化による原材料費の更なる高騰など、業界を取り巻く環境が大きく変わる中で大手資本の傘下で成長を目指していくという選択は今後ますます顕著になっていくことでしょう。

加えて、ミニマムタックスの税制改正に伴い、2027年以降の株式譲渡における税金が上がるケースを想定し、2026年中の譲渡を検討する企業オーナーも増えるであろうことから、今後益々の優良企業の大手資本参画が増えることが見込まれます。

その際に譲渡オーナーが気になるのは自社の評価額だと思いますが、今月の記事をもとに自社の独自性を構築している要素は何かを一度考えてみることをおススメします。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

渡邉 智博

宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:渡邉 智博部署:食品業界支援部役職:執行役員

カテゴリ