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業界別M&A
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2025年3月のエネルギー業界M&Aまとめ

目次

新たに公表されたM&A事例はなし

直近のLPガス業界におけるM&A事例は、2025年3月6日の日本瓦斯株式会社(8174・東京)がLPガスの小売りや卸売りを手がける株式会社門倉商店(未上場・東京都)の発行済株式のほぼ全てを取得し、グループ会社化を発表した以降、新たに公表された事例はありませんでした。

【Pick up M&A】岩谷産業 × アイエスジー

昨今のLPガス業界では大型M&A(LPガス顧客10,000軒以上の譲渡)が増加しているなかで、今回は2024年11月6日に公表された岩谷産業株式会社(8808・大阪府/東京都)によるアイエスジー株式会社(未上場・千葉県)の全発行済株式取得の概要について解説いたします。

岩谷産業株式会社は2024年11月6日に、アイエスジー株式会社の全発行済株式を取得することで、同社の株主と合意したと発表しました。本株式取得により、岩谷産業はアイエスジーを完全子会社化します。

今回の合意に至った背景には、下記3点がポイントとなります。

  1. 両社が持つLPガス供給事業の強化
    アイエスジーはLPガス販売やリフォーム事業を中心に幅広く事業展開を行うなかで、LPガス顧客に対して岩谷産業の持つ家庭用顧客向け商品・サービスを提供し、また脱炭素社会実現への取り組みを共有していくことで顧客提供価値の更なる強化を図りました。
  2. 物流機能の効率化を図るシナジー創出
    アイエスジーは千葉県・茨城県を中心にLPガス顧客を有するなかで、3つの充填所・17の営業所を岩谷産業の掲げる“大関東構想”との早期統合を目指すことで、関東一円における高度な物流網の組成が可能となりました。
  3. 2024年4月の故・石井会長の急逝に伴う株式承継問題の解消
    両社は2015年よりアイエスジーのマルヰ会加入によって取引を開始し、故・石井会長と事業方針での親和性があり物流の共同化などが進められておりましたが、急逝に伴い発生した株式承継問題の解決に岩谷産業が名乗りを挙げる形で本件が進捗いたしました。

総じて「成長戦略」と「事業承継」の両輪で進められたM&Aと言えるでしょう。

継続して非公表でのM&Aは進捗している

4月における新たな公表事例はありませんが、LPガス業界におけるM&Aのほとんどは非公表であり、実際に弊社がお手伝いさせていただいた事例についても、多くは非公表となっております。「自然減」「切り替え」「改正省令への適合」と明確な業界課題が散見されるなかで、今後も全国でM&Aが実行されていくことが想定されます。

業界のニュース

4月2日、三部料金制が施行

昨年7月2日の第一弾の改正省令施行から早半年が経過し、ついに三部料金制が施行されました。三部料金に対する考え方は、ワーキンググループを含め多数議論が重ねられておりましたが、実装に伴い方針が明確化されました。

三部料金制の導入における最大の論点は、消費者が支払う「料金の透明性の担保」であり、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上が禁止され、外出しでの表示が義務付けられました。従来の基本料金・従量料金の二部構成から、今後は基本料金・従量料金・設備料金の三部構成での表示が求められる点は、販売店ならびに消費者にとっても大きな変革となります。設備料金の外出し表示に伴って、販売店様にとっては、正しい費用回収のあり方が求められていると言えるでしょう。

各地域の販売店における適合状況は未知数

4月2日の施行開始から、すでに全ての販売店様が改正省令の遵守を義務付けられているなかで、実態の適合状況はいかがでしょうか。本コラムをご覧になっている皆様のご想像通り、地域の販売店の遵守状況は「芳しくない」という表現が正しいかと思います。

各地域の販売店において、三部料金制への適合の障壁となっている要因は大きく2点あると考えられます。

  1. 三部料金制の対応に向けたシステム追加投資への懸念
    各販売店の抱えるLPガス顧客軒数にもよりますが、数十万円〜数百万円のシステム更新費用が必要となっております。法令遵守の気持ちはあれど、追加投資への不安感は拭いきれないでしょう。
  2. 「正直者が馬鹿を見る」業界構造への不安
    近隣の販売店が友でありライバルである業界構造のなかで、早期に法令遵守したことによって自社が単独で損失(例:顧客の離反等)を被りたくない思考が芽生えていること。

この度の改正省令施行に関しては、広域大手企業の先んじた旗振りによって施行まで漕ぎつけた側面もありますが、各地域の販売店の実態を理解したうえで、今後も情報感度を高く、経営の舵取りを行う必要があると言えるでしょう。

まとめ

昨今のLPガス業界では、事業承継や成長戦略、また高い営業権を顕在化させ創業者利潤の獲得のために、M&Aという選択肢を選ばれる販売店が多数いらっしゃいました。しかし昨年7月から進む改正省令への適合という国を挙げての改革に対し、各地域の販売店様はあり方そのものの見直しが求められています。改正省令への適合は、販売店の生の声を聞くと非常にハードルが高い側面もあるかと感じるなかで、今後は「大手資本を活用した改正省令への適合に向けたM&A」という選択肢も増加していくでしょう。

LPガスという画期的なエネルギーが普及して半世紀以上が経過し、供給するものは変わらずとも、その仕組みや関わるステークホルダー、また業界を取り巻く法律は大きな変化を遂げました。いまその変化がそれぞれの販売店にも求められております。スピカコンサルティングが提供する「M&A支援」「バリューアップコンサルティング」は、その変化を後押しする数多くの経営手法のひとつにすぎません。変化を求められるタイミングだからこそ、自社の輝く未来に向かって、ひと呼吸おいて視野を広げてみてはいかがでしょうか。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

髙橋 真央

東京都出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、2022年に新卒で中堅M&A仲介企業に入社。2023年より株式会社スピカコンサルティングに参画。

担当者:髙橋 真央部署:エネルギー業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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