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業界別M&A
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2025年3月の調剤薬局M&Aのまとめ

目次

3月に公表されたM&A

3月14日、株式会社アインホールディングスによる株式会社エーアンドエムの株式取得が発表されました。株式会社エーアンドエムは1996年の設立から約30年間、新潟県全域で「しなの薬局」の屋号で店舗を拡大し、近年は医療モールや商業施設と連携したアメニティモールなどの開発にも積極的に取り組んできた企業です。

株式会社エーアンドエムは、直近5年間の売上高も2020年度78億182万円、2021年度83億6,800万円、2022年度83億9,500万円、2023年度87億5,800万円、2024年度92億8,000万円(予測)とコロナ渦でも順調に推移しているなか、将来を見据え、業界最大手のアイングループをパートナーに選びました。

アイングループは表1のとおり、従来から新潟県内にてM&Aを積極的に実施しており、本件を含めて通算100店舗以上をグループに迎え入れていることになりました。

<表1 新潟県にてアイングループがM&Aにて譲受した企業抜粋>

株式取得日

譲渡企業

店舗数

売上高

2007年1月

株式会社ダイチク

18店舗

約83億円

2018年9月

株式会社コム・メディカル

54店舗

約79億円

2018年9月

有限会社ABCファーマシー

2店舗

約3億円

2025年4月

株式会社エーアンドエム

30店舗

約92億円

※公開情報よりスピカコンサルティング作成

本件譲受以前、アイングループは新潟県内店舗数ランキングでクオールグループ、ウエルシアグループ、クスリのアオキグループ、ファーマみらいグループに次ぐ第5位でしたが、本件譲受により、クオールグループに次ぐ第2位に上昇する形となりました。また、この5社店舗数を合計すると、県内1,139店舗の3割超を占めることとなり、新潟県は全国的に見ても業界再編がかなり進んでいる都道府県であることが見て取れます。

<表2 新潟県内店舗数ランキング>

                       企業名

県内店舗数

県内シェア

全国店舗数

クオール株式会社

99店舗

8.69%

945店舗

株式会社アインホールディングス

82店舗

7.20%

1,262店舗

ウエルシア薬局株式会社

68店舗

5.97%

2,278店舗

株式会社クスリのアオキ

55店舗

4.83%

665店舗

株式会社ファーマみらい

51店舗

4.48%

315店舗

355店舗

31.2%

5,465店舗

※公開情報よりスピカコンサルティング作成

業界のトピックス

4月に入り、来年度の調剤報酬改定の発表まで残り1年となりました。今月は、「後発医薬品調剤体制加算」について、後発医薬品の使用率推移や過去の厚生労働省の発言から、2026年以降の報酬改定においてどのような変化が起こる可能性があるかを検討します。

3月6日、参議院議員の猪瀬直樹氏が国会にて、現行の服薬管理指導料を「関所の通行料」と例え、OTC類似薬を公的医療保険の適応外にする等、社会保険料引き下げに向けた政策が必要であると述べられ、業界では大きな話題となりました。

それに続き、4月3日の国会答弁においては後発医薬品調剤体制加算に言及され再度関心を集めています。答弁内で猪瀬氏は、「一般名処方加算が年間287億円、後発医薬品体制加算は1643億円。かつてはジェネリックの使用割合低かったから、いろんなインセンティブをつけてジェネリックをたくさん使ってもらいましょうというふうにやってきたんだけれども、今80%ぐらいのシェアになってきて、政策的役割を終えているんじゃないか。(中略)」と述べています。

表3は、後発医薬品調剤体制加算が導入された2014年以降の点数と後発医薬品使用率の推移ですが、近年後発医薬品の使用率は後発医薬品調剤加算の要件引き上げに伴い上昇を続けてきたことが分かります。

また、2022年以前の改定では加算取得に必要な割合>前年9月の平均値だったのが、2024年では逆転し、加算取得に必要な割合<前年9月の平均値となっている点にも注意が必要です。

<表3 後発医薬品使用体制加算の点数推移>

年度

前年

使用率

加算1

点数/割合

加算2

点数/割合

加算3

点数/割合

減算

点数/割合

2002年

約30%

1調剤あたり2点を加算

――

2014年

46.9%

18点/55%超

22点/65%超

――

――

2016年

56.2%

18点/65%超

22点/75%超

――

――

2018年

65.8%

18点/75%超

22点/80%超

26点/85%超

△2点/20%以下

2020年

72.6%

15点/75%超

22点/80%超

26点/85%超

△2点/40%以下

2022年

79.0%

21点/80%超

28点/85%超

30点/90%超

△5点/50%以下

2024年

80.2%

21点/80%超

28点/85%超

30点/90%超

△5点/50%以下

※厚生労働省資料よりスピカコンサルティング作成

表4では、厚生労働省が過去発表した後発医薬品使用促進に向けた施策をまとめています。以前は平均使用率の上昇に伴い目標水準の引き上げが発表されてきた中、近年は達成時期の変更や都道府県ごとの達成を促しており、85%という目標値が出てきた事はありません。

2023年3月時点の都道府県別データでも、45位東京79.8%、46位奈良78.3%、47位徳島77.6%の使用率となっており、44都道府県が80%を超過、残り3都県においても達成間近であることが見て取れます。

<表4 後発医薬品の使用促進に向けた主な施策>

年度

施策

結果

2007年

2012年度までに30%

達成

2013年

2018年度までに60% 達成

達成

2015年

2017年度までに70%/2020年度までに80%

遅れて達成

2021年

2023年度までに全都道府県で80%

残り3都県

※厚生労働省資料よりスピカコンサルティング作成

これらをまとめると、国が目指す後発医薬品の数量ベース目標値は「全都道府県において80%以上」が上限であり、目標は概ね達成されたという捉え方が現実的です。実際、弊社が支援している企業様においても、門前のドクターの強い意向がある場合、もしくは科目性によって患者様が先発医薬品を好まれやすい場合を除くと、80%以上、つまり加算取得済の店舗が大半となっており、後発医薬品は既に市民権を得たように感じます。

薬局経営において、後発医薬品調剤体制加算は収益源として重要な役割を占めているものの、国全体として「ジェネリック医薬品」の認知度が充分に上昇し、他の地域支援体制加算や医療DX推進体制整備加算等と比べると、各薬局が加算取得に向けて能動的に動く必要性は以前より低くなってきているのも事実と言えます。

2024年改定においては2022年度の改定から変更がありませんでしたが、次回の2026年、次々回の2028年改定では大きな変更が加えられる可能性が大きいと考えられます。ひとつのシナリオとして、
①80~85%の加算撤廃
②金額ベースの要件追加
③加算点数の大幅減少
が実施され、後発医薬品使用体制加算の減少分は、対人業務に伴う加算の新設もしくは地域支援体制加算の項目追加などに振り分けられていくことが想定されます。

まとめ

新潟県のように県内店舗数トップ5社を大手グループが独占するなど、業界再編が終盤に突入している都道府県も散見されるようになりました。直近でウエルシアグループとツルハグループの経営統合が当初の2027年から2025年中に前倒しで実行されるとの報道もあり、実現すれば調剤売上高においても同グループはスギグループを上回り業界最大手となり、業界再編がまさに終盤戦に突入していると言えます。
来年度の調剤報酬についても、弊社の想定が的中するかは不明ですが、どのような改定が発表されるにせよ、国が掲げてきたビジョンに適応した薬局経営に柔軟にシフトできるか否か鍵になるのは間違いありません。従来の経営から脱却し、5年後、10年後の業界を予測しつつ、先を見据えた経営が今後さらに重要となっていくでしょう。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

本田 太一

京都府出身。5歳より始めたフィギュアスケートで7度の全日本選手権出場、2度のインカレ団体優勝の経験がある。関西大学経済学部卒業後、2021年に新卒で日本M&Aセンターに入社し、一貫して調剤薬局業界のM&A業務に取り組む。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:本田 太一部署:調剤薬局業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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