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業界別M&A
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2025年4月の調剤薬局業界M&Aまとめ

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目次

2025年4月に公表された主な調剤薬局M&A

2025年4月に公表された調剤薬局のM&Aは以下の通りです。調剤薬局の中小企業M&Aにおいては公表されない事例が多いため、水面下での経営主体の変更は他にも実行されていることが予想されます。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

業種

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年3月31日

株式会社Relax

調剤薬局

株式会社ファーマシィ

グループ再編

2025年4月1日

株式会社みお薬局

調剤薬局

中部薬品株式会社

株式譲渡

2025年4月1日

有限会社愛進堂薬局

調剤薬局

中部薬品株式会社

株式譲渡

2025年4月7日

株式会社MU

動物病院

株式会社大賀薬局

株式譲渡

2025年4月11日

ウエルシアホールディングス株式会社

ドラッグストア・調剤薬局

株式会社ツルハホールディングス

グループ再編

株式交換

2025 年4月24日

高知第一薬品株式会社

医薬品卸売事業

株式会社メディカル一光

株式譲渡

2025 年4月24日

株式会社サイト薬品

医薬品卸売事業

株式会社メディカル一光

株式譲渡

<調剤薬局・ドラッグストア業界における主な公表M&A(2025年4月)>

4月に公表された事例においては、調剤薬局運営企業による異業種へのM&Aが目立ちました。

 例えば、福岡に本社を置く大賀薬局は、調剤薬局、ドラッグストア、化粧品専門店など118店舗を展開しており、2024年からは動物向けの調剤事業にも参入しています。今回のM&Aでは動物病院を運営する会社をグループ化しました。「ペットも人と同じように健康を守るべき存在である」との信念のもと、地域の動物医療機関との連携を強化しています。 

また、上場企業であるメディカル一光は、約100店舗の調剤薬局を展開していますが、M&Aを活用し、医薬品卸売事業も拡大させています。2025年2月期の連結売上高483億円のうち、約30%にあたる145億円が医薬品卸売事業です。2023年9月には旧西部沢井薬品と事業統合を行い、さらに2025年2月期中には佐藤薬品販売、若松薬品、京葉沢井薬品を子会社化しました。今回の高知第一薬品との資本提携により、医薬品卸売事業でのさらなる収益増加を見込んでいます。

上場している他の大手薬局グループでも異業種への進出は進んでいます。最大手のアインホールディングスは2024年7月に株式会社Francfrancの株式を取得し、小売事業の強化を図っています。

また、日本調剤は2005年に設立した日本ジェネリックを通じてジェネリック医薬品の製造を行っており、2024年3月期には同事業の売上高が全体(約3,403億円)の約12%にあたる404億円を占めています。

Amazon薬局の参入や、ドラッグストア併設型薬局の増加など、業界を取り巻く環境が大きく変化する中で、大手薬局グループ各社は保険調剤事業に依存しない収益構造の構築を模索しています。

業界トピックス

日本調剤の非公開化報道と株価上昇

2025年4月、上場企業である日本調剤の株価が1カ月で約1.8倍に上昇しました(図①)。時価総額に換算すると、約510億円から約910億円へと約400億円の増加です。背景として、4月15日の一部報道において「非公開化に向けた入札プロセスを開始した」と報じられたことが挙げられます。

<日本経済新聞 日本調剤(3341)株価よりスピカコンサルティング作成>

日本調剤はこの件に対し「現時点で決定している事実はなく、企業価値向上に向けて様々な可能性を検討しており、当該検討の一環として上記プロセスを実施していることは事実」とコメントしています。

※コメント全文:https://www.nicho.co.jp/corporate/ir/news.html(日本調剤IRニュースより引用)

非公開化とは

非公開化とは、経営陣や特定の出資者が株式を買い集め、上場を廃止することで、意思決定の迅速化や上場維持コストの削減、同意なき買収のリスク低減といった利点があります。今回の件が確定事項ではないにせよ、企業価値向上に向けて様々な戦略を模索していることが窺えます。

このように、上場企業であっても資本政策の一環として、株式売却を選択肢として検討する動きが見られます。調剤薬局業界は、調剤報酬や薬価改定など、外部環境の影響を受けやすいため、事業の安定継続や将来の承継を見据えた幅広い選択肢を考えておくことが必要とされるのです。

上場会社である日本調剤が株式を売却するということに驚かれる方もいるかもしれません。しかし、いわゆる大企業でも株式売却という選択肢を、経営戦略として活用している会社はいくつもあります。

例えば、4月にツルハホールディングスとウエルシアホールディングスの経営統合が発表されました。イオンがツルハの株式50.9%を取得し、ツルハがウエルシアの株式を100%取得して完全子会社化することになります。これにより、当社IRによると調剤業界最大手のアインホールディングス、昨年に阪神調剤をグループ化したスギ薬局グループを上回り、調剤売上において業界首位の地位を確立する見込みです。

調剤薬局業界は、院外処方箋の増加とともに薬局数が増加し、市場規模が拡大してきました(図②)。しかし、図2に示す通り、院外処方箋の増加による市場規模の拡大は今までのようには見込めません。これまでの薬局の役割であった「安全・確実に薬を患者さんに渡すこと」を行うだけでは、自社の成長は実現しづらくなっているということです。

このような業界の変化に対応するためには、他社との差別化を図り、特徴のある薬局にしておかなければなりません。自社単独の成長だけでなく様々な成長戦略を視野に入れ、選ばれる薬局づくりに向けた経営判断が必要になってくるでしょう。

<2022年2月14日 厚生労働省 第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 資料2、及び 日本薬剤師会HP 「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」より引用しスピカコンサルティング作成>

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

福原 史也

京都府出身。立命館大学卒業後、株式会社三井住友銀行に入行。中小企業から大企業まで幅広い業種を担当し、事業承継や成長戦略等のソリューション提案に従事。株式会社MtechAの立ち上げを経験し、その後、経営統合を経て当社参画。

担当者:福原 史也部署:調剤薬局業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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