2025年8月のエネルギー業界M&Aまとめ
8月の代表的な公表M&A一覧
2025年8月のLPガス業界を取り巻くM&A動向は、業界の特性上、公表件数自体は少数となりますが、引き続き卸元による販売事業者に対する商権譲受の動きも継続されており、業界全体を通したM&Aに対する温度感は高い水準で維持されております。
公表日 | 譲渡企業(売り手企業) | 譲受企業(買い手企業) | 形式 |
---|---|---|---|
2025年8月22日 | 株式会社第一ガス(未上場・群馬県) | 株式会社ミツウロコヴェッセル(未上場・東京都) | 吸収合併 |
株式会社ミツウロコヴェッセル草津(未上場・群馬県) |
<2025年8月に公表されたLPガス業界におけるM&A事例>
M&Aでは実行後の目指す未来像や譲渡企業、譲受企業の思いによって多様なスキームが取られます。
上記は吸収合併スキームになりますが、当該合併によって経営資源を集約することにより、販売体制の最適化や業務効率化を進めるとともに、地域市場の開拓を促進し、エネルギー事業における経営基盤を相互に盤石化したい意図が考察されます。
業界再編は衰退ではなく進化
LPガス業界におけるM&Aは、引き続き公表情報以外でも水面下で卸元による商権譲受が活発に行われています。また昨今は近隣異業種を含めて業界外からの資本参入が進んでおります。大手企業により市場の寡占化が進むことを一般的に「衰退」と考える方もいるかと思いますが、我々はこの業界再編を「進化」と捉えています。日本経済における過去を振り返ってみても、業界構造として、同一商品を扱い、商品の選択が消費者に委ねられている市場は、大手企業による寡占化により、市場の効率化と活性化が促されてきました。とくに調剤薬局業界ではLPガス業界以上に大手企業による寡占化が進むなかで、業界再編の進行に伴い、中堅中小規模の事業者に限らず大手事業者においてもM&Aを活用した経営課題の解決が進められていきました。業界は異なるものの、進む道と描く未来像は限りなく酷似することが想定されます。また昨今のLPガス業界に対する業界外からの資本算入は、市場におけるキャッシュの潤沢化の観点からも業界にとってプラス要因となります。また第三者的な視点から業界に対してアクションを起こすことで、業界全体の収益力や効率の底上げとなることが推測されます。引き続きLPガス業界におけるM&Aは連続的に起こるなかで、業界の潮目、自社の立ち位置を日々意識しながら経営の舵取りを行うことが求められます。
販売店に求められる経営視座
業界再編の進行にあわせて、販売店オーナーに求められる経営視座は日々上昇しています。2025年4月2日の改正省令施行による三部料金への対応はその最たるものです。三部料金への対応は、販売店にとってはシステム更新や顧客説明が主題となりますが、業界全体としては消費者が支払うLPガス料金の透明性担保への挑戦となります。LPガス業界の歴史を振り返るなかでも、業界におけるルール改正は、近隣事業者の動向を見ない限りは進められない、進めたくないという側面もあるかと思います。しかし業界全体の動きとしてはそれをよしとしない風潮が過去にも増して強くなっています。販売店会や地域団体による連携強度は高まるなかで、より強固な連携を可能とする経営戦略がM&Aという選択肢になります。M&A=資本政策と定義される中で、資本の連携により経営権や経営リソースが限定されると考える方も多いかと思いますが、実態は正反対です。販売店単独で経営を行っていた際は、ヒトモノカネが一定限定されていたなかで、資本の連携により莫大なリソースが活用可能となり、結果的に販売店オーナーによる意思決定の自由は格段に広がります。自由の定義は各販売店オーナーによって差異があるかと思いますが、自社の存在意義や地域のエネルギーインフラとしての責務を考えると自然と答えは導き出されるでしょう。
LPガスという人々の生活を豊かにするエネルギーが普及して半世紀以上が経過し、販売店が供給するものは変わらずとも、業界環境は大きな変化を遂げました。断言できることは、LPガス業界は今まさに進化が大きく進んでいます。販売店にとって、新たな施策や従来と異なる意思決定が求められつつあるなかで、業界進化の流れに乗れるか否かは、オーナー様の業界への理解度と近い未来を具現化する力に委ねられています。スピカコンサルティングが提供する「M&A支援」「バリューアップコンサルティング」は、オーナー様の日常業務における意思決定や、業界動向を踏まえた近い未来の見える化を支援するひとつの選択肢にすぎません。業界全体がすべての販売店に進化を求めるいま、自社の輝く未来と、従業員様、ご家族の輝く未来を想像しながら、ひと呼吸おいて視野を拡げてみてはいかがでしょうか。
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東京都出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、2022年に新卒で中堅M&A仲介企業に入社。2023年より株式会社スピカコンサルティングに参画。