M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
業界別M&A
投稿日:更新日:

2025年4月のエネルギー業界M&Aまとめ

メールで送る
目次

2025年4月に公表された主なM&A事例

2025年4月に公表されたLPガス業界におけるM&A事例は、国内外あわせて計4件となりました。地域別の事業統合やグループ内再編などの経営資源の最適配置を意図した動きが顕著な印象です。

自然減による顧客件数の減少や収益性の低下によって、単独での事業継続が困難になりつつある地方小売事業者の再編が加速しており、エリア単位でのスケールメリットの追求が重要なテーマとなっていることを示唆しています。また、海外事業の整理・集中も見られ、国内市場へのリソース再配置や、新規成長分野への投資余力の確保といった、戦略的なポートフォリオ転換を意識した再編も垣間見えます。これらの動きは、将来的な業界の持続可能性を高める土台づくりと位置づけられ、今後も同様の事例が各地で続くことが予想されます。

今月の公表M&A一覧

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

4月1日

総社ガス株式会社

伊藤忠エネクスホームライフ株式会社

吸収合併

4月1日

南九州マルヰ株式会社

イワタニ南九州株式会社

吸収合併(組織再編)

イワタニ鹿児島株式会社

4月1日

イワタニセントラル東北株式会社

イワタニ東北株式会社

吸収合併(組織再編)

イワタニセントラル福島株式会社

マルヰ産業株式会社

4月21日

Taiyo Gases Co., Ltd.(タイ)

株式会社巴商会

株式譲渡

<2025年4月のLPガス業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】イワタニグループの組織再編

イワタニグループは九州・東北の地域会社を再編し、エリア単位で営業・保安・配送業務を統合しました。これは“グループ内再編”による経営の効率化を図る動きであり、改正省令以降の価格競争や自然減によって採算性の低下が懸念される中、リソースの最適配置を目指すものと位置づけられます。

従来、地域ごとに分かれていた組織を一本化することで、重複する業務を削減し、保安や配送の品質を維持しながらコストを抑えることが可能になります。人口減少と高齢化が進む中、こういったグループ内での再編はLPガス業界内においても今後さらに広がると見られます。

小売事業者にとっても、市況が変わりゆく中で、今後の運営体制をどう維持・強化するか、同様の視点で見直すヒントとなる事例です。

<本件における吸収合併のイメージ図>

南九州マルヰ株式会社、イワタニ鹿児島株式会社 → イワタニ南九州株式会社
イワタニセントラル東北株式会社、イワタニセントラル福島株式会社、マルヰ産業株式会社 → イワタニ東北株式会社
【参考文献】
・イワタニ東北株式会社:経営統合ならびに社名変更のお知らせについて 2025/3/3
・イワタニ南九州株式会社:合併及び社名変更のお知らせ 2025/3/26
・Yahoo!ファイナンス:日本酸素HD、タイの販売子会社を巴商会グループへ売却(Taiyo Gases Co., Ltd.✕巴商会)
・官報検索!:合併公告(総社ガス✕伊藤忠エネクスHL)

業界のニュース

米中貿易摩擦がもたらすLPG輸出の変化

同月には、LPガスの国際市場を左右する要因として、米中貿易摩擦の激化も報じられました。2025年4月、中国は米国のトランプ関税に対し、全輸入品に課す報復関税の税率を84%から最大125%へと引き上げました。これにより、対中国向けのLPG輸出が1日あたり約20万バレル減少し、代わって日本・インドなどのアジア市場への供給が増えています。結果として米国内の在庫が増加、国際価格は下落の見込みとなっており、一見すれば日本のLPG市場にとっては仕入価格が好転するようにも見えます。

しかしながら、日本のLPG市場にとってはコストメリットとは必ずしも言い切れません。現在進行しているドル高円安傾向(1ドル=140円前後)は、輸入コストを押し上げる要因となっており、価格変動リスクはむしろ高まっていると言えるかもしれません。

【参考文献】
・ロイター:アングル:世界のLPG市場、米高関税で激変 勝ち組はアジア勢か

まとめ

2025年4月に公表されたLPガス業界のM&Aは、地域ごとの統合やグループ内再編が中心となり、経営資源の再配置や営業体制の集約といった観点からの動きが目立ちました。人口減少や収益性の低下といった課題に直面する中で、地域単位での経営の効率化が、引き続き業界全体の大きなテーマとなっているように思います。

加えて、米中貿易摩擦や為替の影響により、LPGの国際価格や仕入コストにも不確実性が増しており、経営判断においては短期的な目線だけでなく、中長期の安定性も見据えた意思決定が求められる状況です。

こうした業界の変化が進む中で、今後の事業成長や地域に対する供給責任をどう保っていくか、各事業者が自社の立ち位置をあらためて確認する機会とも言えます。M&Aは有力な経営戦略ではありますが、あくまで一つの選択肢にすぎず、必ずしも全てのLPガス事業者にとっての最適解とは限りません。そうした中で、すぐ具体的なアクションに移さなくとも、中長期的な目線で準備や情報収集を進めておくことが、結果として経営の自由度を高めることにつながるかと思います。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

芹川 雅典

熊本県出身。神戸大学国際人間科学部卒業後、2024年に新卒で株式会社GA technologiesに入社、スピカコンサルティングに参画。

担当者:芹川 雅典部署:エネルギー業界支援部役職:M&Aコンサルタント

カテゴリ