M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
投稿日:更新日:

2026年6月物流業界M&Aまとめ

メールで送る

2026年6月の物流業界は、企業の枠を超えた資本・業務提携やトップ人事の交流が活発化し、業界再編が「個別の企業買収」から「社会インフラの共同設計」へと進化していることを強く印象づける1ヶ月となりました。

今月のM&A動向では、ダイセーエブリー二十四による広島・林運送の完全子会社化など、コールドチェーンの広域ネットワーク化を狙う動きが目立ちます。さらに実務に直結する大きな動きとして、2028年に本格施行を控える「適正原価運賃制度」の具体的な大枠が見えてきました。今後は、自社の輸送原価をデータとして把握・管理できているかどうかが、運賃交渉力のみならず、事業許可の更新さえも左右する時代に突入します。

本記事では、6月の主要事例を振り返りながら、制度の転換期を乗り越えるために運送会社が押さえておくべき「原価管理経営」の実態について解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年6月の主要M&A一覧: ファンド、MBO、マイノリティ出資など、多様化するアライアンス手法
  • 【Pick Up】中国・九州の地盤強化: ダイセーエブリー二十四による林運送のグループ化と、独立性を維持する提携モデル
  • 物流インフラの共同設計: AZ-COM丸和・和佐見社長の西濃運輸会長就任が示す、企業の垣根を越えた連携の形
  • 「適正原価運賃制度」の仕組み: 従来の運賃表(タリフ方式)から、距離と時間を積み上げる「原単価方式」へのシフト
  • データ経営への転換: 運行データや原価算定の根拠を説明できる体制が、数年後の生存を決定づける理由

目次

6月の代表的な公表M&A一覧

6月も物流業界では、さまざまなスキームによるM&Aが見られました。

ファンドによる運送会社の子会社化や、大手物流グループによるエリア拡大型のM&A、過半数に満たない株式を取得するマイノリティ出資、さらには経営陣が自社株式を取得して独立を図るMBO(マネジメント・バイアウト)など、その手法は実に多様です。物流業界ではさまざまなプレイヤーが、それぞれの経営課題や成長戦略に応じてM&Aを活用していることがうかがえます。

また今月は、AZ-COM丸和ホールディングスの和佐見勝社長が、セイノーホールディングスの中核企業である西濃運輸株式会社の会長に就任しました。企業の枠を超えて経営トップが重要な役職を担う事例であり、物流業界における連携の在り方が大きく変化していることを象徴する出来事と言えるでしょう。

和佐見社長はインタビューの中で、「われわれが一緒にやらせていただくのは、国力向上のためだ。人口減少が進む中、一企業だけでは解決できない問題にどう挑むのか。互いのノウハウ、アセットを相互補完すれば、価値を創造できる」と語っています。

物流業界では2024年問題や人口減少、人手不足、輸送効率の向上など、一社だけでは解決が難しい課題が山積しています。今後は資本提携や業務提携、人材交流なども含め、企業の垣根を越えた連携がさらに加速していくことが見込まれます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年6月1日

(株)林運送[広島県]

 

ダイセーエブリー二十四(株)[愛知県]

株式取得

中国・九州エリアにおける食品輸送の事業基盤の強化

2026年6月10日

(株)角栄組[広島県]

NYC(株)[東京都]

株式取得

広島県における建設事業および運送事業基盤の獲得

2026年6月15日

ユニオン運輸(株)[愛知県]

キョウエイトランスポート(株)[富山県]

マイノリティ出資

(株)東洋陸送社の子会社(ユニオン運送)への出資を通じ、自動車関連輸送を手掛ける両社の相互連携を強化

2026年6月30日

ロジHR(株)[東京都]

取締役 玉井生氏    

 

 

MBO(マネジメント・バイアウト)

(株)シーアールイー子会社であるロジHR(株)の経営層によるロジHR社の経営権の取得

<2026年6月の物流業界 代表的な公表M&A>

Pick Up M&A 林運送×ダイセーエブリー二十四

6月1日、ダイセーエブリイ二十四株式会社(愛知県一宮市)は、株式会社林運送(広島県広島市)の全株式を取得し、完全子会社化したと発表しました。ダイセーエブリイ二十四は、ダイセーグループの中核企業として、全国31拠点の配送ネットワークと24時間365日稼働するチルド物流を強みに事業を展開しています。直近の売上高は301億円に達し、グループ最大の売上規模を誇る存在です。

一方の林運送は、広島・福岡・熊本の4拠点でチルド食品や自動車部品の輸送・保管を手掛ける物流会社で、2025年5月期の売上高は12億4,600万円にのぼります。

ダイセーエブリイ二十四は全国規模のコールドチェーン(低温物流ネットワーク)の構築を進めており、今回のグループ化によって中国・九州エリアにおける事業基盤のさらなる強化を図る考えです。

ダイセーグループはこれまでも積極的にM&Aを推進しており、パン輸送を手掛ける株式会社日研(広島県広島市)や、食品・医薬品の輸配送を担う株式会社日新トランスポート(三重県松阪市)などをグループに迎えてきました。現在は物流事業を中核に、IT事業、ホテル・飲食事業、食品事業など幅広い分野を展開しており、グループ会社は44社に上ります。

なお、両社は以前から協業関係にあり、M&A後も林運送は社名や組織体制を変更せず、独立した運営体制を維持する予定です。これまで培ってきた地域密着型の営業基盤を活かしながら、ダイセーグループの経営資源やネットワークとの相乗効果によるさらなる成長が期待されます。

 

業界のニュース

適正原価運賃制度の導入で変わる運送会社の経営

2028年6月に施行が予定されている「適正原価運賃制度」について、国土交通省は徐々にその制度の大枠を示しています。

2025年6月に成立した改正貨物自動車運送事業法では、成立から3年以内に適正原価制度の詳細を告示・施行するとされており、現在は具体的な制度設計が進められている段階です。

「適正原価」という言葉は耳にしていても、実際にどのような運用になるのかイメージできていない方も少なくないのではないでしょうか。しかし、国交省の示す制度の方向性は徐々に明らかになってきています。

 

これまでの「標準的運賃」では、車格や輸送距離ごとに運賃を示すタリフ方式が基本でした。例えば、「4トン車・200kmで6万円」といった形で運賃の目安を提示する仕組みです。

一方、今回検討されている適正原価運賃制度では、こうした運賃表とは異なる「原単価方式」の採用が有力視されています。

 

原単価方式では、自社の運送原価を構成する費用を積み上げ、「1km当たりの変動費」と「1時間当たりの固定費」をそれぞれ算出します。

例えば、1km当たりの変動費には、

・燃料費、オイル代、タイヤ費、車検・修理費、尿素水など

が含まれます。

 

一方、1時間当たりの固定費には、

・人件費、車両償却費、自動車保険料、各種税金など

が該当します。

 

そのうえで、各運行について「走行距離」と「必要時間」を確定し、

(1km当たりの変動費×走行距離)+(1時間当たりの固定費×運行時間)

によって適正原価運賃を算出する考え方です。

 

つまり、これからは運送会社自身が自社の原価を把握するだけでなく、運行ごとの距離や拘束時間を正確に管理し、その運賃が適正原価を上回っているかを確認することが求められます。

 

従来の標準的運賃は、あくまで参考価格という位置付けでした。そのため、「荷主との力関係で価格が決まってしまい、運賃交渉では十分に活用できなかった」と感じている経営者も多いのではないでしょうか。

 

しかし、今回の制度は従来とは性格が大きく異なります。

2028年から始まる事業許可更新制との連動が予定されており、適正原価を大きく下回る運賃で営業を継続している場合には、事業許可更新へ影響を及ぼす可能性があるためです。努力義務に近かったこれまでの制度とは異なり、一定の実効性を持つ制度として運用されることが期待されています。

 

運送会社にとっては、適正な運賃を収受しやすくなるという意味で追い風になるでしょう。

一方で、すべての事業者が同じように恩恵を受けられるわけではありません。

重要なのは、自社の原価を正確に把握し、それを根拠として荷主と交渉できる体制を整えているかどうかです。

 

これまでは、社長の経験や勘を頼りに「この仕事なら利益が出る」と判断し、電話一本で運賃を決める場面も少なくありませんでした。

しかし今後は、そのような属人的な判断だけでは対応が難しくなります。案件ごとに距離・時間を把握し、原価を計算したうえで受注の可否を判断する経営へ移行していかなければなりません。

 

さらに、デジタコや運行管理システムを備え、運行データや運賃算定の根拠を記録・保存し、必要に応じて説明できる体制づくりも重要になるでしょう。

 

適正原価運賃制度は、どんな運送会社においても運賃向上を保証する制度ではありません。数字に基づく経営へ転換できる企業と、従来の感覚的な経営にとどまる企業との間で、競争力や企業価値に差が生まれる制度とも言えるでしょう。

 

制度開始まで残された期間は2年を切っており、準備に残された時間は意外と長くありません。今から原価管理や運賃管理の仕組みを整備しておくことが、数年後の競争力を左右する重要な準備になるはずです。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

上野 空良

京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、2024年に新卒でGAテクノロジーズに入社、スピカコンサルティングに参画。運行管理者資格保有。

担当者:上野 空良部署:物流業界支援部役職:M&Aコンサルタント

カテゴリ