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2026年1月の製造業M&Aまとめ

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2026年1月における製造業の主要なM&Aを解説します。今月は、スター精密のTPPによるTOBや、半導体業界の動きに見る企業価値の決まり方を解説しました。

この記事を見るとわかること

  • 2026年1月における製造業の主要M&A
  • スター精密のTPPによるTOBに関する解説
  • 半導体業界の動きに見る、企業価値の決まり方

目次

1月の代表的な公表M&A一覧

2026年1月は15件以上のM&Aが公表され、既存事業の深化と新領域への挑戦を両立する動きが活発化しています。また、製造業同士の統合だけでなく、IT(システム開発)やサービスとの連携型M&Aも複数見られ、M&Aという手段が「事業承継」だけでなく「成長戦略」として浸透していることがうかがえます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年1月7日

広播電子工業(株)[東京都]

オー・エイチ・ティー(株)[広島県]

株式譲渡

非接触技術と精密搬送技術を融合し、成長するEV・5G市場に対応した次世代の検査体制を構築することで、グローバルな事業基盤を強化。

2026年1月15日

センクシア(株)[東京都]

ノーリツ鋼機(株)[東証7744・東京都]

株式譲渡

インフラ老朽化やデータセンター需要が見込まれる建材分野を新たな成長の柱に据え、国内事業の拡充により収益基盤の多角化とポートフォリオの安定化を推進。

2026年1月16日

堀越精機(株)[東京都]

(株)技術承継機構 [東証319A・東京都]

株式譲渡

高度な精密切削加工技術を承継し、技術の持続可能性を確保するとともに、産業機器分野における事業基盤の拡充と収益力の強化を推進。

2026年1月21日

(株)福本鉄工所[兵庫県]

中興化成工業(株)[東京都]

株式譲渡

高機能樹脂技術と精密治具設計・組立技術を融合し、素材から精密加工まで一貫したソリューション提供体制を構築することで、事業領域の拡大と製品のさらなる高付加価値化を推進。

2026年1月22日

ソニックガード(株)[神奈川]

(株)東陽テクニカ[東証8151・東京都]

株式譲渡

計測・通信技術と遠隔監視・録画技術を融合し、セキュリティ分野での製品ラインアップ拡充と高度な監視ソリューションの提供を通じて、事業領域の拡大と収益基盤の強化を推進。

<2026年1月の製造業 公表M&A>

【Pick up M&A】スター精密のTPPによるTOBに関する解説

2025年11月、工作機械や精密機器を手がけるスター精密が米系投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズ(TPP)からTOB(株式公開買付)を受け入れるというニュースが発表されました。今回のTOBでは、1株2,210円(直近株価比約29%のプレミアム)が提示され、発表後に同社株はストップ高となり、大きな注目を集めました 。2026年3月13日には上場廃止となり、非上場の体制で新たなスタートを切る見込みです。

スター精密は静岡に本社を置く、世界屈指の精密機械メーカーです。TPPは2000年代からスター精密の株主として関わり続けてきました。通常、ファンドは数年での利益回収を狙いますが、TPPはスター精密の持つ「ミクロン単位の超精密加工技術」の強みを理解し、その価値を最大化するために「非上場化」させる結論に至りました。

非上場化に踏み切った理由は、「経営の柔軟性の確保」です。

スター精密の主力製品である自動旋盤は、スマートフォン部品や医療機器、電子部品、自動車関連部品などの製造に不可欠な設備です。これらの市場は、設備投資が活発な時期は好調ですが、冷え込む局面ではどうしても業績が落ち込みます。しかし、上場企業である以上、四半期ごとの業績開示と「右肩上がり」の期待から逃れられることはできません 。

一方で、製造業の競争力の源泉である研究開発や工場再編には、数年単位、時には10年単位の投資が必要です。「短期的な業績のために、未来への投資を削るわけにはいかない」といった強い危機感が、経営の柔軟性の確保に舵を切り、非上場化を選択した最大の理由と言えるでしょう。2030年を見据えた次世代機の開発や医療分野への本格参入は、まさに長期目線でしか取り組めないテーマです。

また、スター精密の強みは、何と言っても「現場」の技術力にあります。

現在、静岡県の菊川市と牧之原市では、総額約150億円を投じた大規模な工場リニューアルが進行中です。  

これらは単なる増産のためではありません。AIやIoTを駆使した「世界最先端のスマートファクトリー」を確立することで、人手不足が深刻化する日本国内においても競争力を維持し続けるための布石です 。

こうした挑戦的な投資は、非上場化によって今後も加速していくことでしょう。

スター精密のTOBは、工作機械業界の再編を象徴する出来事です。技術力はあっても長期的な改革が必要な企業が、ファンドの資本を活用して成長を目指す動きが加速しています。この潮流は、中堅・中小企業にとっても他人事ではありません。市場環境が変化する中で、現状に固執せず、ファンドや大手との提携を「未来への選択肢」とする柔軟な経営判断が、自社存続の鍵になるかもしれません。

業界のニュース

半導体業界の動きに見る、企業価値の決まり方

最近の半導体ニュースは、正直どれも桁違いです。TSMCはGAA構造を採用した2nmチップの量産を開始し、「CES 2026」ではIntelが1.8nm世代のCPUを発表しました。日本ではラピダスが、AI半導体の性能を左右する後工程(パッケージング)の拠点整備を加速させています。

これらのニュースを、「すごい話だとは思うけれど、自社とは別世界の話」と感じる方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、これらのニュースは、単なる技術の話として読むには少しもったいない気がします。

半導体の世界で起きているのは、最先端技術の競争だけではありません。サプライチェーンの中で「無くなると困る会社」を増やす競争とも読み取れます。

TSMCが2nmの量産を始めたということは、この会社が止まれば世界中のAI、自動車、スマートフォンが止まる状態を、さらに強固にしたということでもあります。ラピダスが後工程に力を入れているのも、同じ構図です。「ここが止まると代わりがない場所」を、自ら握りにいっているのです。

ここで一度、視点を自社に戻してみてください。

もし明日、自社がなくなったら、

・困る取引先はどれくらいあるでしょうか
・代替先は「すぐ」「簡単に」見つかるでしょうか
・数か月止まった場合、誰かの事業は止まるでしょうか

半導体業界が示しているのは、「すごい会社」ではなく、「止められない会社」が会社の価値を決めるという現実です。そこに、必ずしも最先端の装置や材料が必要な訳ではありません。

・図面が読める
・微妙な調整ができる
・品質が安定している
・短納期に応えられる

こうした一つひとつの積み重ねが、「ここが無くなると困る」というポジションをつくります。さらに今、AM(アディティブ・マニュファクチャリング/3Dプリンティング)も、試作段階を超え、最終製品の量産フェーズへと移行しています。

ここでも起きているのは、「人に依存しない生産体制」へのシフトです。これもまた、労働人口が減少する時代において、企業が「他社にとって無くてはならない存在」になるための取り組みと言えます。

半導体のニュースは、遠い世界の話ではありません。これからの中堅・中小製造業における企業価値の作り方を、分かりやすく教えてくれているように感じます。

まとめ

スター精密のTPPによるTOBと非上場化は、「短期業績からの解放」と「長期視点での技術・生産基盤の再構築」を象徴する動きです。自動旋盤という装置産業の中核を担いながら、研究開発やスマートファクトリー化に腰を据えて取り組む姿勢は、半導体業界に見られる「止まると困るポジション」を握る戦略と重なります。2026年の製造業は、最先端か否かではなく、代替不可能な役割をどれだけ担えるかが企業価値を決める時代に入ったと言えるでしょう。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

石渡 隆也

神奈川県出身。横浜市立大学院生命ナノシステム科学研究科卒業後、2025年に新卒でスピカコンサルティングに参画。

担当者:石渡 隆也部署:製造業支援部役職:M&Aコンサルタント

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