M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
投稿日:更新日:

2026年5月の調剤薬局業界M&Aまとめ

メールで送る

2026年6月1日より新たな調剤報酬改定が施行されました。

4月の薬価改定に続き、システム対応や現場のオペレーション変更、スタッフの賃上げなど対応することが多く、忙しい毎日を過ごされているのではないでしょうか。「対物」から「対人」へという変化の中で単独成長だけでなく、資本提携を行い、共に成長するという事例も数多く実施されています。

今回は2026年5月の事例をもとに譲受企業のM&A戦略を紐解きます。また、メディアにも取り上げられた離島の薬局がどのような承継を選択されたのか、具体的な事例について解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年5月の調剤薬局主要M&A: フロンティアによる売上70億円規模の有力グループの買収
  • 【Pick Up】フロンティアの資本政策: 関西圏の地盤強化と、医療・福祉の「多機能化」を評価する譲受戦略
  • 【業界ニュース】離島の薬局を救った事業承継: 対馬の100年企業「永瀬永寿堂」が直面したリソースの限界
  • M&Aがもたらした経営イノベーション: 離島手当やSNS活用による薬剤師採用、DX投資による持続可能な運営体制の構築
  • 「単独成長」にこだわらない選択: 6月改定を乗り越え、地域での信頼と歴史を次世代へ繋ぐための資本提携の意義

目次

5月の代表的な公表M&A一覧

今月は1件のM&Aが公表されました。調剤薬局業界のM&Aは株式譲渡だけでなく店舗の営業権を譲渡する事業譲渡も多く、非公開なことが大半です。水面下では数十件のM&Aが実行されているものと予想されます。また、法人の株式譲渡では開設者変更が不要であり公表されない事例も多くあります。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年5月29日

(株)M&C[大阪府]

(株)フロンティア[大阪府]

株式譲渡

ドミナントでの店舗拡大により運営の効率化を図るため。

<2026年5月の調剤薬局業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】M&C ×フロンティア

株式会社フロンティア(大阪市淀川区)は、2026年5月29日付でM&Cグループ(大阪府富田林市)の全株式を取得しました。M&Cグループは、大阪府南部を中心に「キタバ薬局」15店舗を展開するなど、保険薬局事業、福祉・介護事業、物販事業など合わせて全42事業所を運営しています。創業70年という歴史があり、2024年5月期は売上高約70億円、社員数は400名を超える会社です。

フロンティアは保険薬局ならびに福祉用具のレンタル、訪問看護・介護、介護施設の運営を軸として地域に根差したサービスを展開しています。薬局事業においては2026年5月時点で約170店舗を運営しており、北海道から沖縄まで全国に拠点があります。

本件提携によって大阪南部における圧倒的なドミナントと多機能化を進めることとなりました。同社はM&Aを積極的に活用しながら事業拡大を行っており、公表ベースで過去に8社のM&Aを実行しています(図1)。

<図1>

2014年4月

株式会社アール・エス(本社:奈良県奈良市)を100%取得

2015年4月

有限会社コスモサービス(本社:神戸市須磨区)を100%取得

2015年7月

株式会社メディカルアソシエーション(香川県高松市)を100%取得

2015年12月

株式会社オフィスシンセリティ(本社:愛知県一宮市)を100%取得

2019年12月

有限会社百々(本社:岐阜県羽島郡岐南町)を100%取得

2024年3月

株式会社BOUNCEBACK(本社:東京都調布市)の株式を100%取得

2024年9月

有限会社メディカルノブと株式会社サン薬局(本社:兵庫県伊丹市)の株式を100%取得

2026年5月

株式会社M&C(本社:大阪府富田林市)の株式を100%取得

M&A実績から当社を分析すると二つの戦略が考えられます。

まず一つ目は、関西圏のドミナント強化です。 闇雲に全国へ広げるのではなく、大阪・兵庫・奈良といった足元の地盤を確実に固めるM&Aを優先しています。次に、調剤単体ではなく多機能を評価するということです。M&Cグループのように、薬局だけでなく介護や福祉の拠点もセットで持っている企業と積極的に資本提携をしています。

調剤薬局単体だけでなく、医療と福祉のプロフェッショナル集団として地域の健康を支える方針が表れています。調剤報酬改定やドラッグストアによる調剤併設店の増加など、外部環境の変化による影響が大きい業界であり、現状維持だけでは経営の難易度が高くなっていきます。

薬局以外の事業を持つ会社と連携することで新たな収益の柱を作ることもでき、多職種が連携することで地域での差別化にも繋がることになります。

業界のニュース

離島の調剤薬局を救うM&A

2026年5月27日に弊社がお手伝いをした事業承継がPHARMACY NEWSBREAKにて取り上げられました。

記事を読む(PHARMACY NEWSBREAK)

離島の100年企業が直面した「後継者難」と「採用難」

譲渡企業は、1922年創業で100年の歴史を持つ対馬の老舗「永瀬永寿堂」です。5代目の永瀬正義社長(当時73歳)は、地域の医療や町づくりに深く貢献されてきましたが、離島という土地柄もあり後継者が育たず、ご自身の体調悪化を機に本格的な承継先探しを始められました。 

島内全体の人口減少に加え、慢性的な薬剤師不足。島外からの採用は本土よりもハードルが高く、後継者の選定に悩んでおられました。私たちがこのバトンを繋いだのは、福岡市内で「ゆに薬局」を展開する太平NSEの中村紳吾社長(当時37歳)でした。

福岡でのドミナント戦略を基本としていた太平NSEにとって、県外の離島への進出は本来「想定外」でした。しかし現地視察を経て、中村社長は「長年この地で営業してきたからこそ、患者さんから寄せられる信頼に価値がある」と思い決断されました。

懸案だった薬剤師不足に対しては、従来の給与に上乗せする「離島手当」を設定し、SNSを通じて関東から新たな薬剤師の採用に成功されました。さらに、調剤機器の導入による業務効率化を進めることで、限られた人員でも持続可能な運営体制を整えておられます。

離島という限られた医療機関の中で、承継難により歴史が途切れてしまうことは大きな損失です。これまで大切に築いてこられた歴史を新たな経営者が引き継ぎ、時代に合わせて変化していくことが大切です。SNSの活用や新たな機械の導入による効率化といった中村社長の経営によりこれからも歴史は続いていきます。何より、島民の方にとって健康を守る薬局が存続されたことを大変嬉しく思います。

まとめ

「単独成長」の先にある、資本提携・事業承継という選択肢

今回の6月改定が示す通り、これからの薬局には「在宅対応」や「DX投資」「業務効率化」が不可欠です。しかし、それらをすべて自社単独の力で背負い込む必要はありません。

皆様が築いてこられた地域での「信頼」や「歴史」は、確かなノウハウや資金力を持つパートナーと手を組むことで、より強固なものへと進化させることもできます。

自社でリスクを取って機能転換への投資を進めることも、信頼できる相手にバトンを託して地域医療を確実に守ることも、どちらも素晴らしい経営判断です。

改定のシミュレーションを踏まえつつ、未来に向けた前向きな選択肢の一つとして、資本提携も考えていくことが大切です。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

福原 史也

京都府出身。立命館大学卒業後、株式会社三井住友銀行に入行。中小企業から大企業まで幅広い業種を担当し、事業承継や成長戦略等のソリューション提案に従事。株式会社MtechAの立ち上げを経験し、その後、経営統合を経て当社参画。

担当者:福原 史也部署:調剤薬局業界支援部役職:M&Aコンサルタント

カテゴリ