2025年2月の調剤薬局業界M&Aまとめ
2月に公表されたM&A事例なし
今月は調剤薬局業界のM&A事例の公表はありませんでした。しかし、調剤薬局のM&Aのほとんどは非公表の事例であり、実際に弊社がお手伝いさせていただいた事例についても多くは非公表の事例となっており、今月も全国でM&Aが実行されていることが想定されます。

上記の資料は、大手調剤薬局グループの店舗推移とその内のM&Aでの譲受数をまとめたものです。現在の大手調剤薬局グループの店舗数合計のうち、約3分の1はM&Aで譲受をしたものであり、大手調剤薬局グループはM&Aを活用して現在の規模になっていることが分かります。上記4社だけでも少なくとも毎年50店舗程度はM&Aで譲受をしており、本年も同程度の成約が見込まれるでしょう。
業界全体でも譲渡を検討中の調剤薬局経営者は増加しており、今後も増加傾向は変わらないと考えています。近年の業界の様々な課題や今後の経営の見通しなどを考慮し、単独での経営ではなく、大手などとのM&Aを選択することで会社の安定と発展を目指す企業が継続的に出てくることが考えられます。特に最近の動向では、業績が順調な中堅規模の会社も戦略的にM&Aを選択しているケースが増加しており、業界の再編のスピードが加速していくことが考えられます。
譲受側の大手調剤薬局グループは、M&Aを継続して実施していくことに変わりはありませんが、より優良案件を厳選して検討するようになっています。優良な薬局には、多くの買い手企業が集まり高評価を受け、そうではない薬局への評価はかなり厳しくなってきているというのが市場の動向と言えるでしょう。
業界のトピックス
DX推進体制整備加算の要件の見直しが4月に行われます。デジタル技術を活用することで、調剤薬局経営効率を上げていくことなどを目的に2024年の調剤報酬改定にて新設されたのがDX推進体制整備加算です。この加算は医療DX進めていくための一つの施策であり、今後も調剤薬局経営において重要な加算になっていくと考えられます。
これまで通常の調剤報酬は2年に一度の改定によって要件の見直しがされてきましたが、DX推進体制整備加算については2年を待たずに見直しがされているということも注目されている点です。
マイナ保険証利用率 | ||||
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令和7年1月〜3月 | 令和7年4月〜9月 | |||
点数 | 利用率 | 点通 | 利用率 | |
加算1 | 7点 | 30% | 10点 | 45% |
加算2 | 6点 | 20% | 8点 | 30% |
加算3 | 4点 | 10% | 6点 | 15% |
<出典:中医協資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001388387.pdf)より、スピカコンサルティング作成>
このように短い期間で段階的に見直しがあることから、利用率の基準を達成できない薬局も出てくると想定されますので、早期に計画を立てて利用率を高める取り組みをしていくことが求められます。調剤薬局の収益は年々上げづらくなっている業界環境ですが、一方で優秀な人材を確保していくためには賃金を上げる必要あり、また成長に向けてさまざまな投資に資金を回していくことが重要になってきます。そういった原資を収益として上げるためには、DX推進体制整備加算は確実に算定していきたいものになるでしょう。
こういったDX化の推進は、これまで医療業界において長い間、他の業界と比較して遅れていたこともあってか、一気に変化の波が来ています。
調剤薬局業界では、DX加算をはじめとして、これから本格的に広がっていくことが予想されるオンライン調剤や異業種のプラットフォームが開始されるなど、調剤薬局業界が誕生してから最大の転換期に入っています。
在宅医療などの調剤薬局が求められる役割が複雑化、多様化しており、いずれも対人業務の比重が高まるような業務が中心となっています。そうなったときにおいても、現在と同様かそれ以上のレベルでの安全性やサービスの品質の確保が求められます。しかし、調剤報酬の頭打ちであり、当然ながら必要以上の薬剤師などの人数を配置することは経営的にも難しく、そもそも人材の採用も今後は課題にもなってきます。このような未来をより良い方向へ変えるためには、DX化によってあらゆる業務を効率化し、求められる対人業務に対して薬剤師がより多くの時間を費やせるように、生産性を向上させて、調剤薬局の経営を少しずつでも変化させていくことが必要になっていくでしょう。
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神奈川県出身。青山学院大学卒業後、大和証券株式会社に入社。2017年に株式会社日本M&Aセンターに入社し、業種特化型の中堅・中小企業のM&Aに取り組む。在籍当時のコンサルタント(約600名)中、入社後の累計成約件数2位(2019年/2021年の成約件数全社1位)。調剤薬局業界の専門書籍等も出版。2023年スピカコンサルティングに参画。