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2025年12月の調剤業界M&Aまとめ

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2025年12月における調剤業界のM&Aを解説します。また今月は、ドラッグストア最王手の再編状況や26年度の調剤報酬改定についても解説します。

この記事を見るとわかること

  • ドラッグストア最大手の再編
  • 2026年度調剤報酬改定について
  • 2025年の薬局倒産件数は過去最多の38件

目次

12月の公表M&Aはなし

2025年12月に公表されたM&Aはありませんでした。
調剤薬局の中小企業M&Aにおいては公表されない事例が多いため、水面下での経営主体の変更は他にも多数実行されています。

業界のニュース

業界を揺るがした「巨大再編の完了」

2025年12月における最大のニュースは、ドラッグストア最大手の一角であるイオンによるツルハホールディングスの連結子会社化です。2025年初頭に発表されたこの巨大構想は、2025年12月にその一連の手続きが完了し、ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスによる「売上高2兆円規模」の巨大連合が名実ともに誕生しました。

両社が抱える約3,200店舗に及ぶ「調剤併設型モデル」の統合は、周辺の中小調剤薬局にとって驚異となる可能性があります。この巨大資本による統合は、単独成長だけでなく他社との資本提携により、企業価値を向上させる象徴的な出来事となりました。

ツルハホールディングス発表資料:経営統合のご説明資料

2025年12月1日に発表された経営統合後のグループビジョンにおいては、「お客様の生活に豊かさと余裕を提供しよう」という経営理念のもと、調剤モデルについても強化していく方針が打ち出されました。両社のこれまでのデータを統合し、一元管理を実現させ「セルフケアを提供するプラットフォームの構築」を目指していきます。 

これまでは併設店としての調剤という位置付けでしたが、本格的に調剤業界へ展開していくことで、地域で限られている処方箋は一定数ドラッグストアへ流れていくことになるでしょう。また、社会保障費の抑制を進めている現在において調剤報酬がプラス改定を続けていくことはありません。つまり、異業種からの参入でシェアが減少する、2年に1度の改定によりトップラインが減少していく調剤薬局においては、現状維持は衰退していくことになるため、これまでとは違い独自の付加価値を提供していくことが大切です。

2026年度調剤報酬改定の「足音」とM&Aの加速

2026年調剤報酬改定について議論が深まっています。2025年12月の厚生労働省・中医協(中央社会保険医療協議会)の資料では、2026年度改定に向けた厳しい方針が打ち出され、特に「立地依存の小規模薬局」に対する厳しい評価が鮮明になりました。

中央社会保険医療協議会 総会(第631回) 議事次第より引用 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66368.html

今回の改定の前提として2015年に策定された薬局ビジョンの目標が達成されていないことが挙げられています。依然として立地依存の薬局が高収益を上げているという調査のもと、集中率規制の厳格化と対人業務へのシフトが中心に議論が進んでいます。 

特定の医療機関からの処方箋集中率が高い薬局への基本料引き下げが議論され、「門前薬局」というビジネスモデルの収益性がさらに低下することになります。また、単に薬を揃える(対物業務)のではなく、在宅医療やポリファーマシー対策などの「対人業務」を行わない薬局は、評価の対象から外される方向性が強まりました。

● 2026年度調剤報酬改定の主な議論

カテゴリー

改定の方向性

具体的な議論の内容

調剤基本料

適正化(厳格化)

敷地内薬局・医療モールの集中率判定の見直し、面積要件の検討。

地域支援体制加算

実績評価の平準化

基本料区分による有利・不利を解消し、在宅やリフィル処方等の「実績」を重視。

薬学管理料

対人業務の評価増

服薬期間中のフォローアップ、減薬提案、多職種連携への配当増。

DX関連加算

実績要件の強化

マイナ保険証利用率のノルマ化、電子処方箋・電子カルテ共有の必須化。

厚労省の発表資料からスピカコンサルティングにて作成

こうした改定の背景から、「自社単独での体制維持は難しい」と判断した経営者による譲渡相談が増えています。これまでは、「まだ数年は大丈夫」と考えていたオーナー層が、改定の具体案を見て、「価値が下がる前に譲渡する」、「現在の自社の価値を算定する」という判断をするケースが目立っています。一度加速した業界再編は元に戻ることはありません。再編の波に取り残されないためにも国の定める方針に沿って体制を整える、もしくは、すでに対応している会社と連携していくことが必要になるでしょう。

2025年の薬局倒産件数は過去最多の38件

東京商工リサーチの調査によると、2025年の調剤薬局の倒産件数は38件に達し、過去最多を更新しました(前年は28件)。複数の店舗を展開していた中堅グループが資金繰りに行き詰まり、会社更生法を申請する事例も昨年に引き続き発生しました。 「大手による戦略的統合」と「中小の力尽きた倒産」という、業界の変化を表した1年となりました。 

倒産件数の増加の背景を読み解くと、以下の3点が挙げられます。

①薬剤師不足と採用コストの増加:薬剤師の争奪戦は激化し、一人当たりの採用コストや派遣費用が薬局の経営コスト増加に直結しています。

②物価高騰と固定費用のジレンマ:光熱費や資材費が上昇する一方、処方箋の単価は公定価格(診療報酬)で決まっているため、一般企業のようにコストを価格に転嫁できない。 

③医薬品の供給不安:ジェネリック医薬品を中心とした限定出荷が2025年も続き、代替薬の確保や在庫管理、患者への説明に伴う「見えない業務負荷」が、現場を疲弊させ、経営効率を低下させている。

倒産件数の増加は、ある種の「新陳代謝」とも言えますが、地域住民にとっては身近な薬局が消えるリスクでもあります。薬をもらうための場所から健康相談をする場所に変化している中で、最も大切なことは患者様が安心して利用されることです。そのためには業界の変化や外部環境によって経営状況が悪化する前に策を講じることが必要です。最悪の状況になる前に様々な選択肢を準備しておくことが大切なのではないでしょうか。

まとめ

倒産や再編のニュースが目立つ一方で、考え方を変えれば2026年は「地域に必要とされる薬局」がこれまでにない正当な評価と収益を得る、ポジティブな転換期でもあります。

対人業務においては、これまでサービスに近い扱いだった薬剤師の専門的介入がより高い点数で評価される可能性があります。また、薬を渡した後の継続的なフォローアップや、ポリファーマシーの解消提案が収益増加に繋がります。

単なる調剤作業(対物)から、患者の生活に寄り添う(対人)へのシフトに成功した薬局は、利益率を改善させるチャンスを迎えています。薬剤師が本来の職能を発揮することで、地域住民から「なくてはならない存在」として注目される転換期なのかもしれません。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

福原 史也

京都府出身。立命館大学卒業後、株式会社三井住友銀行に入行。中小企業から大企業まで幅広い業種を担当し、事業承継や成長戦略等のソリューション提案に従事。株式会社MtechAの立ち上げを経験し、その後、経営統合を経て当社参画。

担当者:福原 史也部署:調剤薬局業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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