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2025年10月の物流業界M&Aまとめ

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目次

10月の代表的な公表M&A一覧

加速する業界再編

今月も物流業界では10件を超えるM&Aが公表され、再編の動きが一段と加速しています。なかでも業界の注目を集めているのが、日本郵便によるロジスティードへの出資です。これは、物流業界における構造変化を象徴する事例といえるでしょう(ロジスティードは、これまで投資ファンドのKKRが株式を保有していましたが、今回の日本郵便への持ち分譲渡は、取得時と同水準の価格で行われたと報じられています)。

日本郵便は、「親方日の丸」として安定した荷量と全国的なインフラ網を有する3兆円規模の企業でありながら、新たな収益源の確立が急務となっています。そうした背景のもと、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業などのコントラクトロジスティクス分野を強化する狙いで実施された今回の出資は、同社が抱く危機感の表れであり、生き残りをかけた戦略の一環と位置づけられます。

大手の合従連衡が進む一方で、再編の潮流は中堅・中小の物流事業者にも広がっており、業界全体として統合・再編の動きが一層加速していることがうかがえます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2025年10月1日

中央運輸(株)[長野県]

マルイチ・ロジスティクス・サービス(株)[長野県]

株式譲渡

長野県内における食品流通の効率化と高度化

2025年10月6日

ロジスティードホールディングス(株)[東京都]

日本郵便(株)[東京都]

株式取得

総合物流企業への進化を目指し、3PLを中心としたコントラクトロジスティクス事業を積極的に強化する

2025年10月14日

日東富士運輸(株)[東京都]

丸全昭和運輸(株)[東証9068・神奈川県]

株式譲渡

日東富士製粉グループの物流機能を担ってきた日東富士運輸を子会社化することによる物流ネットワークの拡充

2025年10月16日

(株)誠ノ真[埼玉県]

ファイズホールディングス(株)[東証9325・大阪府]

株式譲渡

取引先からのニーズの高い首都圏での組立設置配送のサービス提供

2025年10月17日

MIホールディングス(株)[東京都]

プラス ロジスティクス(株)[東京都]

株式譲渡

関西エリアの輸配送機能強化など事業基盤拡充

2025年10月31日

グリーンサービス(株)[東京都]

全農物流(株)[東京都]

株式譲渡

酪農物流事業における輸送力の強化および衛生管理技術による物流品質の維持・向上

<2025年10月の物流業界 公表M&A>

株式会社誠ノ真×ファイズホールディングス株式会社

2024年10月16日、ファイズホールディングス株式会社(東証9325・大阪府)は、家電配送および設置工事を手がける株式会社誠ノ真(埼玉県)を買収し、子会社化したと発表しました。EC業界を中心に3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業を展開する同社は、今回の買収を通じて家電配送分野でのサービス強化を狙います。

2015年に設立された誠ノ真は、創業からわずか数年で急成長を遂げています。売上高は2022年の12億6,800万円から、直近期には17億3,300万円へと拡大。営業利益は約1,700万円、純資産は8,300万円と発表されています。同社の特徴は、トラックによる運送にとどまらず、倉庫保管から各配送先での設置・電気工事までを一貫対応できる点にあります。単なる輸送サービスにとどまらず、現場作業まで担う高付加価値型の物流モデルとして高く評価されてきました。

今回の買収における誠ノ真の評価額は約3.8億円。
一般的に物流企業の株式価値は、時価に評価した純資産額に、企業が1年間で稼ぎ出す実質的な収益力(営業権)を数年分足して算出される「純資産法」によって評価されます。今回のケースでは、純資産額に加えて20年分以上の営業権が加算されており、業界水準から見ても破格の評価といえます。

この背景には、誠ノ真の事業モデルが単なる運送業にとどまらず、配送+設置という高付加価値領域を内包していること、そしてファイズHDが展開するEC物流との間に明確なシナジーが見込まれることが挙げられます。

M&Aにおける企業価値算定には一定のセオリーがありますが、最終的な条件は「譲受企業の意欲」と「市場環境」によって大きく左右されます。
業界再編が進む中では、同じ企業でも時期や相手によって評価が変動するのが実情です。そのため最適なタイミングを逃さないためには、自社の市場評価を正確に把握し、早期の準備と市場での評価確認が不可欠といえるでしょう。

業界のニュース

新政権がもたらす追い風と、迫る制度改革の波

10月21日、自民党の高市早苗総裁が衆参両院の本会議で第104代首相に指名され、日本初の女性首相が誕生しました。これに伴い、26年にわたり続いた公明党との連立は解消され、新たに日本維新の会との連立が発表されました。高市首相はトラック議員連盟のメンバーとしても知られ、就任直後から燃油税の暫定税率廃止に着手しました。1リットルあたり17.1円の暫定税率は、2026年4月1日に廃止されることが合意されています。

運送業における燃料費は原価全体の約16.3%を占めており、これが実現すれば売上に対しておよそ2%の経費削減が可能になります。業界からは「待望の政策」として好意的な声が広がっている一方で、物流業界を取り巻く法制度の変化は決して穏やかではありません。なかでも注目されるのが、2028年に施行が予定されている運送事業許可の5年毎の更新制度」です。

新制度では、許可の更新可否を「運行管理の適正さ」「法令順守」「再委託の制限」「財務状況」などの複数要件に基づいて判断します。これまで一度取得すれば半永久的だった許可が、5年ごとに審査される仕組みになることが予定されています。

新制度がどれだけの厳格さで運用されるかは、想像が難しいかもしれません。しかし、すでに貸切バス業界では先んじて同様の制度が導入されており、その影響は数字として現れています。

貸し切りバス事業では、2017年に事業許可更新制が施行され、3年連続赤字や債務超過がないこと、運転者の労働環境改善、安全設備(デジタコ・ドラレコ)の導入などが更新要件に設定されました。その結果、制度が始まった2017年には4,524社あった事業者数が、2024年には3,556社まで減少。年間約138社、制度開始から7年間で、約21%の企業が市場から姿を消した計算になります。

この減少がすべて許可失効によるものではないにせよ、制度導入が業界構造に大きな影響を与えたことは間違いありません。

物流業界においても、更新制度は厳格に運用される見通しです。トラック協会の坂本会長は「淘汰は避けられないが、必要な新陳代謝だ」と語り、業界再編に前向きな姿勢を見せています。

時代が要求する基準を満たせない企業は、生き残りが難しくなる可能性があります。まずは自社の立ち位置を見極め、次の時代を生き抜くための戦略の実行が求められています。

まとめ

軽油の暫定税率廃止の決定など、業界に追い風が吹く一方で、許可更新制度の導入など、業界変化はその速度を増しています。変化の波が押し寄せる今こそ、まず自社の立ち位置を正確に見極め、時代の要求に応える柔軟な対応が求められています。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

上野 空良

京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、2024年に新卒でGAテクノロジーズに入社、スピカコンサルティングに参画。運行管理者資格保有。

担当者:上野 空良部署:物流業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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