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2025年総まとめ、食品業界の主要M&Aを振り返る

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2025年に実施された食品業界の主要M&Aを月毎に振り返ります。

この記事を見るとわかること

  • 2025年の食品業界で実施されたM&A
  • 2025年の月毎の業界動向
  • 業界別M&Aの内容

目次

2025年1月の食品業界M&A

2025年1月の食品業界M&A
2025年1月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡がなされた件数は公表ベースで10組となりました。なお、前年同月は16組でした。単月でM&Aの増減は見ることはできませんが、特徴的な点として前年1月は海外とのクロスボーダーM&Aが3組公表されていたのに対し、今年はクロスボーダーM&Aはありませんでした。1月は米国のトランプ大統領の就任月であったことや、不安定な国際情勢もあり、先行き不透明な点からもクロージングまでは少し様子見といった判断もあったのかもしれません。また、原材料や人件費の高騰により既存事業だけでは成長戦略を描くことが難しい国内企業にとって、新業態の開発が急務となっており、まずは国内の地盤固めを推進することが譲受側企業のニーズとしても高いことが影響しているようにも感じます。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年1月6日

(株)UWS ENTERTAINMENT[東京都]

(株)ビーリンク[神奈川県]

株式譲渡

2025年1月6日

(有)よし平[和歌山県]

(株)ホットランドネクステージ[東京都]

株式譲渡

2025年1月7日

(株)たくみや[石川県]

(株)COC[北海道]

株式譲渡

2025年1月14日

(株)サンオーネクスト[静岡県]

三幸食品(株)[東京都]

株式譲渡

2025年1月16日

(株)たちばな[神奈川県]

ダイセーホールディングス[東京都]

事業譲渡

2025年1月20日

(有)辻元[京都府]

アジャイルメディア・ネットワーク(株)[東証6573・東京都]

株式譲渡

2025年1月21日

(株)今佐[東京都]

(株)グリーンハウスフーズ[東京都]

事業譲渡

2025年1月22日

上原食品工業(株)[東京都]

(株)神戸物産[東証3038・兵庫県]

株式譲渡

2025年1月24日

(株)坂本[熊本県]/(株)マルタカ物流[熊本県]

ベーシック・キャピタル・マネジメント(株)運営のファンド

株式譲渡

【Pick Up M&A】オーウイル子会社、サンオーネストの切り離し

今月の主なM&Aの中から取り上げたいのは、東証スタンダード市場に上場しているオーウイル株式会社(以下、オーウイル)の子会社である株式会社サンオーネスト(以下、サンオーネスト)の切り離しです。食品を中心とした複合機能商社であるオーウイルは、2010年にアイスクリームの製造販売を行うサンオーネストを連結子会社化し運営してきましたが、今後のサンオーネストの持続的な成長を考え、今回の株式譲渡に至りました。

サンオーネストは2023年3月期には営業利益が▲42,351千円、純資産は▲30,916千円の債務超過に陥っており、業績の回復を見せた2024年3月期においても営業利益は8,857千円、純資産は引き続き債務超過の▲10,416千円でした。上場企業であっても、昨今の国際情勢の不安定化、原材料・物流費・人件費などの高騰、人口減少による採用難など、事業環境の変化による脅威に晒されている時代です。

オーウイルの公表内容によると、経営資源の選択と集中や、グループ事業運営の最適化などにより、事業ポートフォリオの見直しを推進することで企業価値の向上を図っている一環で本件を実行したとありますが、グループ会社のより一層の成長を考えた際に、親会社のリソースだけでは解決が難しい場合や時間がかかる場合など、このようなカーブアウト(切り離し)は今後増えてくるように思います。

本件の譲受企業である三幸食品株式会社(以下、三幸食品)は、食品原料を国内外から調達し販売している企業で、砂糖・油糧食材・鶏卵などアイスクリームとも関連がある商材を取り扱っています。本件の取得価格は175,000千円となっており、2024年3月期のサンオーネストの純資産が▲10,416千円、営業利益8,857千円だけを見ると、債務免除などのスキームを組んだかどうかは公表資料からのみでは判断できませんが、一定の高い評価をして取得されているように思われます。

建設資材なども高騰している昨今、時間をかけて工場を自前で建設するよりも早期に工場を取得することができ、サンオーネストの従業員の雇用を守ることは働き手の確保にもつながるため、三幸食品にとってもメリットが大きかったのだと思われます。

業界のニュース:国内の基盤強化のために、高い企業評価でのM&Aが増えている

昨年後半から国内で高い企業価値でのM&Aが成立しています。食品業界を賑わせた事例としては2024年10月の株式会社資さんと株式会社すかいらーくホールディングスのM&Aでしょう。資さんうどんは北九州のソウルフードとして知られ、2024年8月期(見込み)の売上高は152億円、営業利益3億6,000万円、EBITDAは14億円、純資産は約25億円となっています。これに対し譲渡対価は240億円となっており、営業権を215億円も計上する巨額のM&Aとなりました。

また、2024年9月の株式会社一幻フードカンパニーと株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスのM&Aも同様です。えびそば一幻を経営する譲渡企業の2024年4月期の売上高は10億円、営業利益2億円、純資産は2億5,800万円となっています。これに対し譲渡対価は約15億円となっており、こちらも高い企業評価でのM&Aとなりました。

更には、2024年10月にはジーホールディングス株式会社と株式会社サンマルクホールディングスのM&Aも発表されました。京都勝牛などを運営する譲渡企業は売上高92億円、営業利益12億円、EBITDA14億円、純資産が約57億円となっています。これに対して譲渡対価は110億円となりました。

加えて、株式会社サンマルクホールディングスは翌11月には株式会社B級グルメ研究所ホールディングス及びBQ International株式会社の2社を譲り受けることも発表しています。譲渡企業は牛カツ定食業態の牛かつもと村を運営しており、牛かつもと村の売上高は45億円、営業利益6億7,900万円、純資産11億円となっていますが譲渡対価は104億円となりました。

これまでの外食業界は営業権については3年~7年程度での回収が相場となっていましたが、市況が不安定な時代だからこそ、次の時代の勝者を目指すために良いブランドであれば、大手が積極的に獲得を目指している状況が見えます。今後、業界再編はますます活性化していくことでしょう。

2025年2月の食品業界M&A

2025年2月の食品業界M&A
2025年2月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡がなされた件数は公表ベースで13組となりました。なお、前年同月は12組であり、大幅な増減は認められませんでした。

本年1月にはなかったクロスボーダー案件ですが、本年2月ではアメリカ国内にて寿司店9店舗を展開するMikuni Restaurant Grop Inc.を、ドン・キホーテなどを展開するパンパシフィックインターナショナルが譲り受けました。

近年では、ゼンショーホールディングスやワタミによるアメリカ国内の寿司事業の譲り受けなど行われており、国外寿司マーケットへの進出という動きが見られています。

トランプ大統領就任なども含め不確定要素が多かった本年一月を乗り越えたことで、同様のクロスボーダーや海外事業に関する進行中のM&A案件に動きが出てくるか今後注目です。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年2月4日

(株)佐藤園[静岡県]

大五通商(株)[静岡県]

株式譲渡

2025年2月4日

加ト吉水産(株)[香川県]

寿がきや食品(株)[愛媛県]

商標権譲渡

2025年2月5日

(株)猪貝[新潟県]

(有)間瀬屋商店[新潟県]

株式譲渡

2025年2月6日

(株)丹後蔵[京都府]

(株)パソナグループ[東証2168・東京都]

株式譲渡

2025年2月10日

ウェルユー・フード(株)[茨城県]

尾家産業(株)[東証7481・大阪府]

株式譲渡

2025年2月13日

(株)浜信[東京都]

(株)STIフードホールディングス[東京都]

株式譲渡

2025年2月17日

Mikuni Restaurant Group Inc.[アメリカ]

(株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス[東証7532・東京都]

株式譲渡

2025年2月17日

(株)ライズ[東京都]

(株)力の源ホールディングス[東証3561・福岡県]

株式譲渡

2025年2月18日

(株)ヒナショッピングセンター[岡山県]

(株)天満屋ストア[東証9846・岡山県]

株式譲渡

2025年2月19日

(株)カラダノート[東証4014・東京都]

(株)ウェルディッシュ[東証2901・東京都]

事業譲渡

2025年2月28日

(株)栄田フーズ[秋田県]

和弘食品(株)[東証2813・北海道]

株式譲渡

2025年2月28日

(株)フードキャッチ[東京都]

(株)ペッパーフードサービス[東証3053・東京都]

事業譲渡

2025年2月28日

ペッツファーストホールディングス(株)[東京都]

アークランズ(株)[東証9842・新潟県]

株式譲渡

【Pick Up M&A】大五通商×佐藤園

今月の公表M&Aにおいて取り上げたいのは、プライム上場企業である稲畑産業株式会社が連結子会社の大五通商株式会社を通じて株式会社佐藤園の全株式を取得した事例です。
稲畑産業株式会社は、2030年頃のありたい姿である長期ビジョン「IK Vision2030」を目指す第三ステージとして、2024年4月より、2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「New Challenge 2026(以下、NC2026)」を推進しNC2026における成長戦略の一つとして「投資の積極化による収益拡大」を掲げており、本件はこの戦略に沿ったものです。
生活産業ビジネスにおける食品分野では、農産品、水産品の栽培・生産から加工・販売に至るまで、稲畑産業グループが一貫してマネジメントを行う垂直統合型の体制を構築することで(川上・川下領域の強化)、シナジーの拡大や能力及び付加価値の向上を図っています。
一方で、譲渡企業である佐藤園は茶の生産量が国内一の静岡県を中心に、主に茶の栽培・製造販売を行っており、ECサイトやカタログ通販を通じた販売に強みを持っている企業です。
緑茶市場は国内で安定した需要があるほか、海外への輸出を中心に伸長が続いており、財務省貿易統計によると、緑茶の世界向け輸出量は平成18年の1,576トンからおおむね右肩上がりに上昇し、令和6年には約5倍に当たる7,770トンとなっており、さらなる拡販予知が大きいと考えられます。

今回の佐藤園の株式取得により、稲畑産業株式会社の海外ネットワークを利用した販売網の拡大を目指せます。また、佐藤園のECサイトやカタログ通販といった強みを活用し、稲畑産業の取り扱う商品の販売ルートの獲得も見込めます。

製造と販売という垂直統合の動きと考えられる本件と類似した事例として、前月に行われた株式会社神戸物産(業務スーパー)による上原食品工業株式会社(レトルトカレーなどの製造)のM&AによるPB商品の強化などがあげられ、垂直統合を目的とした同様の動きは引き続き増えていくものと予測されます。

業界のニュース:原材料高騰による利益圧迫とその対策

昨年より食品業界の問題として「原価高騰」が頻繁に話題に上がっています。
スーパーでのコメの平均価格(5キロ当たり)は2025年2月10日~同16日の一週間において販売価格平均5キロあたり3,892円となっています。
これは7週連続値上がりとなり、前年同時期と比較すると5キロあたり2.000円程度で推移しており実に90%以上の驚異的な値上がりとなっています。

コメ以外にも、円安傾向による輸入調達コストの高騰や人件費・物流費の高騰により多くの原材料が高騰しています。利益率がおおむね5~10%程である食品業界において、これらの原材料費高騰は利益圧迫に直結してくる課題となります。

これは、食品メーカーにおける動きにも実際に表れており、帝国データバンクによる国内主要食品メーカー195社を対象に行われた調査では、2月に値上げされる食品品目は併せて1,656品目となり、1月に続き2カ月連続の1,000品目超えとなっています。さらに、すでに判明している今年一年間の値上げ予定品目は8,800品目余りに上り、現在のペースが一年を通して続く場合、値上げ品目の総数は2万品目に達する可能性すらあります。これは去年一年間で値上げされた1万2500品目を大幅に超えるペースであり、食品メーカーの利益圧迫は大きな課題となっていることがわかります。

2025年3月の食品業界M&A

2025年3月の食品業界M&A
2025年3月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が確認できた件数は公表ベースで14組となりました。なお、前年同月は9組でした。1‐3月の累計比較においては前年と今年が共に37組であることから数としては前年並みの推移と見られますが、昨年の後半から規模の大きいM&Aや有名ブランドの譲渡が増加傾向にあります。今年3月はトライアルホールディングスが西友を3,826億円で譲り受けたことや、上場企業同士のM&Aとしてウェルネオシュガーによる東洋精糖のTOBも話題となりました。食品業界全体が原材料高・人件費高・物流費高など厳しい状況下にある中で、大型のM&Aを実行して売上規模を一気に拡大することや、今後の成長が見込める有名ブランドへの投資が目立つようになりました。この流れが加速していくことで将来的に大手企業と中堅・中小企業の差が一層拡大していくことが懸念されます。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年3月3日

株式会社プレディア

株式会社CS-C

株式譲渡

2025年3月3日

株式会社 NEPAL HYDRO POWER HOLDINGS

株式会社海帆

株式譲渡

2025年3月4日

有限会社海晴丸

マルハニチロ株式会社

株式譲渡

2025年3月4日

株式会社 Innovation Planning

GYRO HOLDINGS株式会社

株式譲渡

2025年3月5日

株式会社西友

株式会社トライアルホールディングス

株式譲渡

2025年3月11日

Leiber GmbH(ドイツ)

アサヒグループ食品株式会社

株式譲渡

2025年3月11日

株式会社エナビードゥーエ

株式会社バルニバービ

株式譲渡

2025年3月12日

神州一味噌株式会社

株式会社グローバルサンホールディングス

株式譲渡

2025年3月14日

シンセンフードテック株式会社

株式会社JR東日本クロスステーション

株式譲渡

2025年3月18日

Shin Nihon Kousan Inc.(米国)

Storytellers USA, Inc.

株式譲渡

2025年3月19日

株式会社55style

株式会社JBイレブン

株式譲渡

2025年3月25日

株式会社ザ・ハミルトン

株式会社OICグループ

株式譲渡

2025年3月26日

東洋精糖株式会社

ウェルネオシュガー株式会社

TOB

2025年3月31日

コメックス株式会社

株式会社OICグループ

株式譲渡

【Pick Up M&A】東洋精糖×ウェルネオシュガー

今月の公表M&Aにおいて取り上げたいのは東証プライム市場に上場しているウェルネオシュガー株式会社(以下、ウェルネオシュガー)が、東証スタンダード市場に上場している東洋精糖株式会社(以下、東洋精糖)に対して実行したTOB(株式公開買付)です。実は精糖業界は日本の食品製造業界でも古くから再編が進んできた業界で1900年代初頭から合併が進んでいる業界で、今回、譲り受け側となったウェルネオシュガー自体も2023年に日新製糖と伊藤忠精糖が経営統合してできた企業です。業界再編が進んでいる精糖業界を知ることは他の食品製造業の先行事例にもなり得るため、今月の事例として取り上げたいと思います。

日本の精糖業界は、他の食品製造業と同じく人口減少や原材料の価格高騰の影響を受けているだけではなく、近年の低甘味・低カロリー志向によって砂糖の代替製品が数多く発売されるなど、業界全体の先行きが不透明な状況です。こうした中で、成長分野である機能素材への注目が集まっています。東洋精糖は、砂糖事業としては「みつ花」ブランドの精製糖が有名ですが、機能素材としてはステビア甘味料、ゆずポリフェノール、酵素処理ルチン、バオバブオイルなど多岐に渡る機能素材を製造・販売しています。ウェルネオシュガーは、東洋精糖を譲り受けることで、砂糖事業そのものの規模拡大だけではなく、機能素材事業の成長や、スケールメリットを活かしたコスト削減等を目指し、今回のTOBを実行しました。食品業界を取り巻く事業環境の変化を受けて、大手同士であっても手を組む時代です。中堅・中小企業にとっても、今後ますますM&Aが重要な経営戦略になってくる時代になったと言えるでしょう。

業界のニュース:農林水産省が価格形成の行動規範に『判断基準』を検討

2025年3月21日、農林水産省は広範な食品事業者からなる「適正な価格形成に関する協議会」を開催し、すべての食品のサプライチェーン各層で適正コストを下回る取引を防止するための「判断基準」の検討に入りました。これは「食品システム法」(食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律)が閣議決定し、国会審議入りしたことを受けてのことです。

この「判断基準」では、まず、価格交渉の協議に誠実に対応することなどを食品事業者に対して新たに課す2項目の努力義務が含まれます。1つは「持続的な供給に要する費用等の考慮を求める事由を示して取引条件の協議の申出がされた場合、誠実に協議」すること、もう1つは「取引の相手方から持続的な供給に資する取組の提案があった場合、検討・協力」することです。

また、農林水産省が実施する取引実態調査に照らし、対象とする品目の価格形成が合理的か否かを判断する際の基準も定められます。取引が判断基準から逸脱していると認めた場合、逸脱の度合いと品目に応じて「指導・助言」「勧告・公表」「公正取引委員会への通知」が行われます。

今回改正された食品システム法は、主に食糧供給の不安定化や異常気象、紛争などのリスクに対応し、食糧安全保障を強化する目的で改正されており、現在の世界情勢を鑑みるに必要な対応ではあると思います。また、本法案では、食品産業の持続的な発展を優遇税制などで支援する新たな計画認定制度も盛り込まれています。しかしながら、持続的な供給のために追加で発生するコストを十分に吸収できるかなど、食品事業者が対応を考えなければならないことは数多くあり、経営の難易度が高い時代になっていることは間違いないでしょう。

2025年4月の食品業界M&A

2025年4月の食品業界M&A
2025年4月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡がなされた件数は公表ベースで13組となり、1-4月の累計件数は50件となりました。なお、前年同月は14組であり前年1-4月の累計件数は51件となり、前年同様の推移となっています。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年4月2日

丸山食品工業株式会社

株式会社プレコフーズ

事業譲渡

2025年4月2日

阿さ川製菓株式会社

株式会社シベール

株式譲渡

2025年4月3日

株式会社岩村製餡工場

株式会社OICグループ

株式譲渡

2025年4月15日

株式会社サンモール

株式会社ジェーソン

株式譲渡

2025年4月15日

株式会社狼煙

株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス

株式譲渡

2025年4月18日

株式会社うちだ屋

日本創生投資(こむぎの)

株式譲渡

2025年4月21日

株式会社RedList

株式会社KeyHolder

株式譲渡

2025年4月22日

株式会社RERA WORKS

メディエア株式会社

事業譲渡

2025年4月22日

マリンテック株式会社

非公表

事業譲渡

2025年4月24日

Ajinomoto Althea, Inc

Packaging Coordinators Inc.

株式譲渡

2025年4月25日

株式会社帝人目黒研究所

アサヒグループ食品株式会社

株式譲渡

2025年4月30日

株式会社岐阜タンメンBBC

MSD第二号投資事業有限責任組合

業務資本提携

2025年4月30日

Mary’s Gone Crackers, INC. (亀田製菓)

ROSSEAU INCORPORATED

株式譲渡

【Pick Up M&A】こむぎの × うちだ屋

今月の公表M&Aにおいて取り上げたいのは、株式会社こむぎのによる株式会社うちだ屋とのM&Aとなります。

株式会社うちだ屋の展開する博多うどんブランド「うちだ屋」は博多うどん4大ブランドの一角を担う人気ブランドです。一方で、株式会社こむぎのは堀江貴文氏が主宰するオンラインサロンから生まれた“地方活性型エンタメパン屋”「小麦の奴隷」を全国に展開する企業です。博多うどんといえば、昨年の資さんうどんのM&Aが記憶に新しいと思いますが、それに続く形となりました。

これまで、国内におけるうどんチェーンとしては丸亀製麵(トリドールホールディングス)が先行して全国展開しており国内店舗数840店舗(2024年3月)、続いてはなまるうどん(吉野家ホールディングス)が国内店舗数418店舗(2024年2月)、杵屋(グルメ杵屋)がうどんブランド113店舗(2024年3月)となっていました。ここに資さんうどん(79店舗)やうちだ屋(42店舗)がM&Aによって大手資本の傘下になり出店を加速することで業界勢力図に変化が起きると予測されます。

このように、うどん業態に熱い視線が送られる背景としては、原材料費の高騰による値上げや不景気の影が見え隠れする中で、従来はファミリーレストランで食事をしていた顧客層による、より価格を抑えた気軽な食事を求めるニーズを拾い上げ、顧客を取り込みたいという考えがあります。また、企業側としても同様に原材料費高騰による利益圧迫が止まらない中で、原材料の多くを占める小麦のスケールメリットを活かし仕入れ価格を抑えたいという意図も感じられます。今回の株式会社こむぎのはすでにベーカリーを全国に100店舗以上展開(2024年5月)しており、原材料が小麦という点でのシナジーも想定していると考えられます。

うどんと同じ麺業態のラーメンの歴史を見ると、中華料理のメニューとして支那蕎麦と呼ばれた時代から独自の進化を経て、日本料理ともとらえられることができる現代の「ラーメン」が生まれるまでの約100年の間で、スープだけを見ても、しょうゆ・塩・味噌・とんこつなど様々なものが生まれ、ブランドごとに差別化を図ってきました。1990年前後に博多発祥の「とんこつラーメン」が首都圏で一大ブームとなったことを覚えている方も多いと思います。

現在、全国展開をしているうどんチェーンの多くが讃岐うどんである中、うちだ屋や資さんうどんのように「博多うどん」が全国展開を目指す動きを発端とし、国内うどん市場もラーメンの歴史同様にさらなる商品の差別化やスタイルの多様化などにより独自性が生まれていくなど、新たな局面に移行する可能性に期待できます。 

なお、株式会社こむぎのによるリリースでは、5年後に80店舗超の店舗展開を目指すとの記載もあり、今後の国内うどん市場の動きに引き続き注目です。

業界のニュース:カルビーが音楽レーベルを立ち上げ?R&D拠点は3倍に拡張

大手菓子メーカーでは、商品やブランドなどの知的財産を活用した取組が増えています。大手菓子メーカーのカルビーは新たな取り組みとしてIP管理プラットフォーム「かるれっと」を開発し、2025年4月17日より実証実験をスタートしました。

これまで、カルビーは新規事業を担う「Calbee Future Labo」にて、2023年から様々なデザインやキャラクターのIPを活用したグッズやNFTを手掛けており、食べるシーン以外での顧客体験の場を広げています。今回開発した、「かるれっと」ではカルビーのIPを活用し顧客との接点を拡大することを目的としており、プラットフォーム上で登録することでデザインなどをライセンス展開することが可能となります。すでに第一弾としてコンテストで入賞した8名のクリエイターがかるれっとを通じて契約を結び、入賞作品デザインを使用した商品企画を提案する実証実験を行います。今後、カルビー食品の食べ音を使用した音楽レーベルの立ち上げやクリエイターコンテストなどを予定しているとのことです。

このように、食品企業において「食べる」以外の顧客体験をユーザー参加型で行うことは、顧客の楽しむ機会を広げるのと同時に、盛り上げ・バズらせる といった「話題性」が求められる今のSNS時代に適したマーケティング手法であるともいえます。また、これらの研究開発を行うにあたってカルビーでは自社研究開発拠点「R&Dセンター研究棟」が以前の約3倍に拡張され、また海外でのグローバルな研究開発を進めるために海外にもR&Dセンターを建設するなど、新しい商品やサービスの開発に非常に積極的です。大手メーカーでは利益をこうした次世代を担う新しい取組に投資が行われおり、大手企業と渡り合っていくためには中堅・中小企業においても積極的な商品開発や新規ビジネスへの投資が求められます。

2025年5月の食品業界M&A

2025年5月の食品業界M&A
2025年5月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで11件となり、1~5月の累計件数は61件となりました。なお、前年同月は5件、前年1~5月の累計件数は56件です。前年と同程度からやや増加傾向にあるといえるでしょう。今年の1月から5月のM&Aの事例をみてみると、仕入れの内製化や新業態への進出など、リスク分散のための多角化が目立ちました。食品業界を取り巻く厳しい環境の中で、各社がM&Aをコスト削減や新しい収益の柱を作ることに活用しています。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年5月2日

株式会社アロッサマヌエル

株式会社リベラ・フード&ビバレッジ

事業譲渡

2025年5月7日

株式会社コーシン

株式会社事業承継機構

事業譲渡

2025年5月9日

株式会社ミワ商店

株式会社クスリのアオキホールディングス

株式譲渡

2025年5月12日

クーデーションカンパニー株式会社

株式会社あみやき亭

株式譲渡

2025年5月13日

JAVISTAR JOINT STOCK COMPANY

株式会社梅の花グループ

事業譲渡

2025年5月13日

Seagrass Holdco Pty Ltd

株式会社コロワイド

株式譲渡

2025年5月15日

株式会社サンライズサービス

株式会社テンポスホールディングス

株式譲渡

2025年5月15日

株式会社洋菓子のヒロタ

株式会社ALEXANDER&SUN

事業譲渡

2025年5月26日

G.T Japan, Inc.

片岡物産株式会社

株式譲渡

2025年5月26日

株式会社永野

株式会社丸久(株式会社リテールパートナーズ)

株式譲渡

2025年5月26日

合同会社松田商店

株式会社柴田屋ホールディングス

株式譲渡

【Pick Up M&A】片岡物産 × G. T Japan

今月公表されたM&Aの中で注目したいのは、片岡物産によるG. T Japanの買収です。

G. T Japanは、日本の抹茶文化を「世界のMATCHA」として広めることを目指し、40年以上にわたり日本茶・抹茶のあるライフスタイルを世界に発信してきた、米カリフォルニア州のパイオニア企業です。

一方、片岡物産は、160年の歴史を持つ日本茶・抹茶ブランド「辻利」や、伝統あるココアブランド「バンホーテン」など、多くのブランドを展開し、食品の輸入・生産・販売を手がける企業です。

昨今、健康志向の高まりを背景に、抹茶が海外で人気を集めており、ラテやお菓子などへの活用が増えています。米国や英国、オーストラリアではもはや「抹茶ラテ」が定番となり、ASEAN地域ではココナッツミルクと抹茶を組み合わせたドリンクが人気を博すなど、世界各地で抹茶文化が根付きつつあります。今回のM&Aは、日本の抹茶文化の普及を後押しするM&Aとなるでしょう。

近年、日本の食品業界では海外企業とのM&Aが活発化しています。たとえば、ゼンショーホールディングス(7550)は、2018年にアメリカ等で4,000店舗超のテイクアウト寿司店を営むAdvanced Fresh Concepts Corp.を譲受しています。さらに2023年には、アメリカで約3,000店舗のテイクアウト寿司を展開するSnowFox Topco Limitedを譲受したことでも話題になりました。2024年3月末時点で、ゼンショーホールディングスが運営する海外店舗は実に15,109店舗になります。 

2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降、日本の食文化への海外からの関心はより一層高まっています。今回の片岡物産とG. T JapanのM&Aは、日本の伝統的な食文化を海外に広げる大きなチャンスをつかんだ好例といえるでしょう。片岡物産はチリやアルゼンチンに事業拠点を保有しており、本件が、アメリカ本土のみならず、南米方面への日本食文化の普及につながるM&Aとなることが期待されます。

また、少子高齢化や原材料コストの高騰は日本の課題であり、この課題を解決するための海外進出は今後益々増加すると予想されます。結果的に日本の素晴らしい食文化が世界に広まることに繋がり、食品業界のさらなる発展に貢献すると考えられます。

業界のニュース:スシロー未来型万博店が示す、養殖技術と業界連携による海のサステナビリティ

2025年4月中旬に開幕した日本国際博覧会(大阪・以下、関西万博)で、株式会社FOOD & LIFE COMPANIES(以下、F&LC)の子会社である株式会社あきんどスシロー(以下、スシロー)は、「まわるすしは、つづくすしへ。− すし屋の未来 2050 −」をコンセプトに「スシロー未来型万博店」を出店しました。

同店舗では、未来へ続く持続可能な水産資源の安定的な調達を目指し、すべての商品に“養殖”の素材を使用しています。地球温暖化などの影響で天然の水産資源の確保が難しくなることが予想される中、スシローを運営するF&LCはさまざまな養殖技術を持つ企業との資本提携や業務提携を進めており、水産資源の安定調達に向けた基盤づくりに取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、2022年4月にはF&LCと株式会社拓洋が共同出資し、熊本県に株式会社マリンバースを設立しました。マリンバースは魚の養殖・販売、種苗生産、飼料の仕入れ・製造などを手掛けており、大規模化による餌の調達や販売コストの削減を実現しています。成長した魚はF&LCが直接買い付ける契約を結んでおり、市場を介するよりも調達コストを抑えることが可能となります。

また、F&LCは京都大学発のスタートアップ、リージョナルフィッシュ株式会社(リージョナルフィッシュ)と共同研究を実施しており、リージョナルフィッシュが持つゲノム編集技術やスマート養殖技術を活用し、安価で品質の良い魚の仕入れを目指しています。リージョナルフィッシュは品種改良やスマート養殖など最先端技術を駆使し、持続可能な水産業の発展に貢献しています。

水産業界全体としては、地球温暖化の影響で海水温が歴史的な上昇をみせ、漁獲量の大幅な減少や養殖魚の高水温による大量死など深刻な課題に直面しています。こうした状況を受け、F&LCだけでなく、さまざまな大手企業も課題解決に向けた取り組みを強化しています。 

今後もF&LCグループをはじめとする大手企業各社は、養殖技術やバイオテクノロジーなどとの業界横断的な連携を通じて、持続可能な水産資源の確保と安定調達の実現に取り組んでいくと考えられ、そのアピールの場所として関西万博の「スシロー未来型万博店」は重要な役割を担っています。今回の取り組みのように、単体では難しい挑戦を乗り越えていく手段としての他業態との協力は重要な選択肢になると考えられます。

2025年6月の食品業界M&A

2025年6月の食品業界M&A
2025年6月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで18件でした。これにより1~6月の累計件数は79件となりました。なお、前年同月は9件、前年1~6月の累計件数は64件となっており、明らかに食品業界のM&Aは増加傾向といえるでしょう。

 公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年6月2日

相生ユニビオ株式会社(非上場・愛知)

株式会社OICグループ(非上場・神奈川)

事業譲渡

2025年6月2日

有限会社ノース・カントリー(非上場・北海道)

株式会社竹下製菓(非上場・佐賀)

事業譲渡

2025年6月2日

持留製油株式会社(非上場・鹿児島)

ボーソー油脂株式会社(非上場・東京)

株式譲渡

2025年6月2日

株式会社グランキュイジーヌ(非上場・東京)

株式会社魁力屋(5891・京都)

株式譲渡

2025年6月3日

株式会社城山ストアー(非上場・鹿児島)

株式会社西原商会(鹿児島・非上場)

株式譲渡

2025年6月4日

森谷食品株式会社(非上場・北海道)

生活協同組合コープさっぽろ(北海道・非上場)

株式譲渡

2025年6月5日

株式会社甲羅(非上場・愛知)

株式会社ヨシックスフーズ(3221・愛知)

事業譲渡

2025年6月6日

有限会社農産ベストパートナーズ(非上場・熊本)

株式会社ヤマタネ(9305・東京)

株式譲渡

2025年6月6日

株式会社弁天堂(非上場・熊本)

株式会社フードラボ合志(非上場・熊本)

株式譲渡

2025年6月10日

MILIFEPLUS株式会社(非上場・広島)

非公表

事業譲渡

2025年6月12日

株式会社セブンズ(非上場・滋賀)

マリンフード株式会社(非上場・大阪)

株式譲渡

2025年6月12日

株式会社三協食鳥(非上場・兵庫)

株式会社トーホー(8142・兵庫)

吸収合併

2025年6月17日

EXAMAS JAYA SDN. BHD.(非上場・マレーシア)

株式会社ヨシムラ・フードホールディングス(2884・東京)

株式譲渡

2025年6月17日

EQUIPMAX PTE. LTD.(非上場・シンガポール)

株式会社ヨシムラ・フードホールディングス(2884・東京)

株式譲渡

2025年6月20日

Riga Bay Aquaculture,AS(非上場・ラトビア)

MusholmA/S(非上場・デンマーク ※株式会社オカムラ食品工業子会社)

51%株式譲渡

2025年6月25日

株式会社L’ATELIER de SHIORI(非上場・東京)

株式会社クラダシ(5884・東京)

株式譲渡

2025年6月25日

株式会社チモトコーヒー(非上場・東京)

株式会社西原商会(非上場・鹿児島)

株式譲渡

株式会社チモト商店(非上場・静岡)

2025年6月30日

Bubbies Homemade Ice Cream & Desserts Inc.(非上場・アメリカ)

丸紅株式会社(8002・東京)

株式譲渡

【Pick Up M&A】魁力屋×グランキュイジーヌ

今月公表されたM&Aの中で注目したいのは、魁力屋(5891・京都)によるグランキュイジーヌ(未上場・東京)の譲受です。

魁力屋のIRによれば、外食産業の中でもラーメン市場はまだまだ寡占化が進んでおらず、シェア拡大の余地が大きいマーケットと捉えているとのことです。そして、今後も優良な独立ブランドをグループに迎え入れていく第1弾が本M&Aであると公表しています。

譲渡企業のグランキュイジーヌは「肉そばけいすけ」等の5つのブランド、直営店19店舗を展開しています。売上高16億円、営業利益7千万円、純資産が2億861万円に対して、取得価格が9億7100万円となっており、7億6000万円超の営業権をつけたM&Aとなりました。

この1年少しの間、大手企業による有名ブランドのM&Aが増加しており、買収時の評価額も上がっている傾向にあります。ブランド力のある中堅・中小企業が、大手資本の傘下のもと更なる成長していく流れが今後も加速していくことが予想されます。

業界のニュース:68万人ショック到来。2024年の出生数は遂に70万人割れ

2025年6月、厚生労働省から『令和6年(2024年)の人口動態統計(概数)』が発表されました。出生数は68万人、合計特殊出生率(一人の女性が生涯で産む子どもの平均数を示す指標)は1.15人となり、どちらも過去最低を記録しています。人口維持のために必要な合計特殊出生率が2.07と言われていることに対し、実態が大きく乖離していることがわかります。一方で、2024年の死亡数は160万人超と過去最多を記録。この一年の出産数から死亡数を差し引いた自然増減数は、マイナス91万人となりました。食品業界は「胃袋の数」が市場に大きな影響を与えるため、当然ながら影響は大きいと言えます。

今後もこの流れが続く中で、新しい商機を見つけられるかどうかが各社の課題となっています。例えば、少子化だからといって、必ずしも乳幼児向け食品に未来がないわけではありません。共働き世帯の増加など社会の変化に合わせて、子供1人あたりにかける費用は上がっており、粉ミルク市場などは堅調に伸長しています。森永乳業も2022年に一度は撤退したベビーフード領域に再参入しています。森永乳業が市場を牽引するジュレの製造技術を活用し、海外では一般的な口栓付きのパウチタイプゼリーを展開することで、外出時などでの利便性が高く、より子育てしやすい環境づくりに貢献していくとされています。

また、新しい商機を見つけるために積極的に活用されるのがM&Aです。大手各社は、まだまだ成長余力がありながらも、自社単独資本だけでは成長のチャンスを十分に掴めていない優れたブランドを持つ中堅・中小企業を求めています。直近のM&Aで評価額が高まっているのはその期待の表れでと言えるでしょう。将来的に得られる利益で十分に投資回収ができることを見込んでの評価となっています。食品業界で、より成長を求める中堅・中小企業のオーナーの皆様には、最適なパートナー探しのタイミングが来ています。2025年のM&A件数は冒頭記載の通り、前年を大きく上回るペースで推移しており、今後しばらくはこの傾向が続くことでしょう。

2025年7月の食品業界M&A

2025年7月の食品業界M&A
2025年7月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで14件となり、1~7月の累計件数は93件となりました。なお、前年同月は13件、前年1~7月の累計件数は77件となっており、累積件数では増加傾向にあるといえるでしょう。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年7月1日

株式会社イノダコーヒ(非上場・京都)

キーコーヒー株式会社(2594・東京)

株式譲渡

2025年7月1日

株式会社Food Emotion(非上場・東京)

株式会社日本共創プラットフォーム(非上場・東京)

株式譲渡

2025年7月2日

株式会社モリノキ(非上場・神奈川)

株式会社Antway(非上場・東京)

事業譲渡

2025年7月3日

宇佐パン粉有限会社(非上場・大分)

ヤマエグループホールディングス株式会社(7130・福岡)

株式譲渡

2025年7月3日

株式会社鈴木商店(非上場・北海道)

栗林商船株式会社(非上場・鹿児島)

株式譲渡

2025年7月3日

青柳食品販売株式会社(非上場・東京)

エコナックホールディングス株式会社(3521・東京)

株式譲渡

2025年7月4日

株式会社北研(非上場・栃木)

株式会社OICグループ(非上場・神奈川)

事業譲渡

2025年7月11日

株式会社fufumu(非上場・東京)

キッコーマン株式会社(2801・千葉)

事業譲渡

2025年7月15日

OSMICホールディングス株式(非上場・東京)

株式会社キャピタルギャラリー(非上場・東京)

株式譲渡

2025年7月17日

株式会社宮崎酒造店(非上場・千葉)

株式会社穴太ホールディングス(非上場・千葉)

事業譲渡

2025年7月18日

豊創フーズ株式会社(非上場・東京)

株式会社フーデックホールディングス(非上場・東京)

株式譲渡

2025年7月24日

株式会社Yappa(非上場・東京)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡)

株式譲渡

2025年7月30日

有限会社松尾魚嘉(非上場・福岡)

株式会社サワライズ(非上場・福岡)

株式譲渡

2025年7月31日

有限会社マルヒロ太田食品(非上場・北海道)

クックビズ株式会社(6558・東京)

株式譲渡

【Pick Up M&A】イノダコーヒ×キーコーヒー

京都の老舗コーヒー店である株式会社イノダコーヒ(以下、イノダコーヒ)をキーコーヒー株式会社(以下、キーコーヒー)が譲受しました。

本件の注目すべきポイントは、イノダコーヒは2022年9月にアント・キャピタル・パートナーズが運営するファンドに株式譲渡が実行されており、今回の株式譲渡はファンドから事業会社であるキーコーヒーに再度譲渡された点です。

個人オーナーからの譲渡により、ファンドによる企業価値の向上が実施され、さらにシナジーの見込める事業会社に譲渡されるといったファンドが関与するM&Aの一連の流れが実施されました。

また、イノダコーヒとキーコーヒーは一度目の株式譲渡以前である2021年に業務提携契約を締結しており、従前から良好な関係性やシナジーが見込めたことも本件M&Aの実施に影響したと考えられます。

このような、企業成長のためにその時にベストな企業に譲渡をすることができるというのもM&Aの醍醐味であり、事業会社の子会社となることでイノダコーヒがどのように変化するか、今後に注目です。

業界のニュース:2030年を見据えた大手冷凍食品メーカーの戦略

昨今の共働き世代や高齢者世帯の増加に加え、食の時短効率化といったライフスタイルの変化により、冷凍食品市場は需要が増加。冷凍食品大手メーカーはそれぞれ市場の変化を見据えた動きをとっています。

株式会社ニップン(以下、ニップン)は長期ビジョン2030の中で、成長分野である冷凍食品事業の売上高目標を900億円(23年度比73%増)と発表。主に中食や家庭内での需要増加を見込んでおり、4月にM&Aで連結子会社化した株式会社畑中食品のもとで冷凍食品の新工場を建設中です。

また、日清食品冷凍株式会社は「2030VISION」の中で、「冷凍麺の2つの“シンカ(深化・進化)”により、ニッポンの孤食をもっと笑顔に変えていく」取り組みを推進すると発表しています。
具体的には冷凍麵の(1)購入者あたりの購入数拡張に向けたクロスカテゴリー購買促進(衝動購買促進)(2)LTV(顧客生涯価値)拡張に向けたヘルス&ウェルネス市場開拓(3)未顧客開拓に向けたTVコマーシャル攻勢、などの取り組みで冷凍食品市場の活性化を図るようです。 

冷凍食品の需要が増加する一方で、原材料費の高騰による価格改定が引き続き行われています。

冷凍うどんに力を入れているテーブルマークでは、価格改定の影響もあり販売実績は金額で前年比1桁前半減、販売数で前年比一桁後半減となっています。この数字を受け、テーブルマークは技術力を投入し、味を高める取り組みや、注力商品を工程が短縮できる商品に絞るなどの対策を進めています。

 このように市場としては拡大傾向にある冷凍食品市場ですが、価格に対する顧客の目線は厳しく、効率的な生産体制の構築による原価調整や金額に納得感のあるブランディングなど、各大手メーカーの企業努力が引き続き求められる状況にあります。

2025年8月の食品業界M&A

2025年8月の食品業界M&A
2025年8月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで19件となり、1~8月の累計件数は112件となりました。なお、前年同月は15件、前年1~8月の累計件数は92件となっており、累積件数では増加傾向にあるといえるでしょう。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年8月1日

株式会社フーズパレット(非上場・兵庫)

株式会社フーズパレット(非上場・大阪)

株式譲渡

2025年8月1日

AP Company USA Inc.(3175・アメリカ)

株式会社フューチャーバイブス(非上場・東京)

株式譲渡

2025年8月1日

株式会社pangaea(非上場・神奈川)

株式会社beagle(非上場・東京)

株式譲渡

2025年8月3日

株式会社風土食房(非上場・千葉)

ヤマモリ株式会社(非上場・三重)

 

株式譲渡

2025年8月4日

井原水産株式会社(非上場・北海道)

株式会社西原商会(非上場・鹿児島)

 

株式譲渡

2025年8月4日

株式会社ナカムラ米飯(非上場・埼玉)

株式会社ベルク(9974・埼玉)

 

株式譲渡

2025年8月4日

株式会社マッシュフードラボ(非上場・東京)

株式会社グリーンハウスフーズ(非上場・東京)

事業譲渡

2025年8月5日

株式会社古川ミート(非上場・宮城)

株式会社OICグループ(非上場・神奈川)

 

株式譲渡

2025年8月5日

株式会社スタイルズ(非上場・東京)

株式会社エスクリ(2196・東京)

 

事業譲渡

2025年8月5日

たびスル株式会社(非上場・東京)

ロイヤルホールディングス株式会社(8179・東京)

株式譲渡

2025年8月7日

株式会社とりやたまや(非上場・長野)

株式会社テイクオーバー(非上場・静岡)

 

株式譲渡

2025年8月8日

小畠酒類販賣株式会社(非上場・広島)

ヤマエグループホールディングス株式会社(7130・福岡)

株式譲渡

2025年8月18日

株式会社PAPABUBBLE JAPAN(非上場・東京)

株式会社アカツキ(3932・東京)

 

株式譲渡

2025年8月18日

株式会社すし丸(非上場・愛媛)

株式会社三福ホールディングス(非上場・愛媛)

株式譲渡

2025年8月25日

有限会社いしかわ(非上場・鳥取)

株式会社サンインマルイ(非上場・鳥取)

 

事業譲渡

2025年8月27日

株式会社ミートプランニング(非上場・群馬)

株式会社G-7ホールディングス(7508・兵庫)

株式譲渡

2025年8月28日

株式会社金谷ホテルベーカリー(非上場・栃木)

東武鉄道株式会社(9001・東京)

株式譲渡

2025年8月28日

株式会社アジアンテイブル(非上場・神奈川)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡)

事業譲渡

2025年8月29日

株式会社JYU-KEN(非上場・神奈川県)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡)

事業譲渡

【Pick Up M&A】ワイエスフード

「九州筑豊ラーメン 山小屋」などの飲食事業を展開するワイエスフード株式会社(以下、ワイエスフード)は、子会社の株式会社Yappa(以下、Yappa)を通じて、この8月に2件のM&Aを公表しました。Yappaは、ワイエスフードが2025年7月31日にM&Aにより完全子会社化したばかりの、「焼肉やっぱ。」を運営する企業です。M&A後わずか1か月にして、今度は譲受側として2社を引き受けることになりました。まさに、大手資本のグループに加わり、成長戦略を描く典型的な事例と言えるのではないでしょうか。

もともとYappaは、DXを通じた業務オペレーションの高度化が高く評価され、ワイエスフードが掲げる「多様なジャンルを取り込む総合飲食プラットフォームへの進化」という中長期方針と合致することから、ワイエスフードとのM&Aに至りました。

今回、YappaがM&Aで譲り受ける事業は、株式会社JYU-KENが運営する高級焼肉店「焼肉BEEFMAN横浜」と株式会社アジアンテイブルが運営するフランス郷土料理店「ROTISSERIE☆BLUE」の2つです。これらのブランドは、いずれも高単価かつ好立地に位置しているため、Yappaが有するDXのノウハウを共有・導入することにより、人的資源の効率的活用・商品開発力の強化・市場競争力の向上が見込まれます。

また、親会社であるワイエスフードは、事業の中核である国内直営店及びフランチャイズ店の店舗数の減少に伴い収益性が低下していたため、Yappaの業績が伸びることで、全体業績の回復が期待されます。

ワイエスフードに限らず、昨今、フランチャイズビジネスは一つの危機に面しています。もともと、フランチャイズ加盟店は1980~1990年代でブームとなった「脱サラ」を機に開業したオーナーも多いです。それからすでに30~40年が経過しており、オーナーの高齢化が進んでいます。そして、高齢のオーナーは、自分の経営している間に投資回収が出来ないと考えると、途端に設備投資に消極的になる傾向があります。その結果、店舗の競争力が低下し、顧客離れや収益性の悪化を経て、最終的に撤退に至る例も少なくありません。ワイエスフードがこのようなケースに該当するかは明らかではありませんが、こうした背景から、店舗数を大きく減少させるフランチャイザーが存在することも事実です。そのため、各社は次なる事業の柱を模索する必要に迫られています。

今回のYappaのような、次の事業の柱になりそうな企業をグループに迎え入れ、その企業に新たな企業をロールアップしていくケースは、今後も増えることが予想されます。単独での成長が厳しいと感じる中堅企業のオーナーは、大手資本を借りながら自社をより成長させる選択肢があることを知っておくと良いかもしれません。

業界のニュース:食の壁への挑戦~世界のハラール市場へ広がる日本食品の可能性~

オタフクソース株式会社(以下、オタフクソース)のマレーシア現地法人であるOTAFUKU SAUCE MALAYSIA SDN,BHD.(以下、オタフクソースマレーシア)は、マレーシアに社屋と工場を新設しました。今回の新工場は、マレーシアのハラール認証制度「JAKIM」の監査のもと、ハラール製造工場としての認証を取得しています。

オタフクソースマレーシアは、2016年4月にマレーシア・セランゴール州に設立されました。ムスリム市場の食文化に貢献することを目的とし、ハラール対応の調味料を製造・販売しており、オタフクグループ唯一のハラール調味料専用の工場です。 

昨今、高品質で安全性の高い日本の食品は、ハラール市場においても高い信用力があり、注目を集めています。世界の4人に1人を占めるムスリム人口の増加に伴い、急速に拡大するハラール食品市場の規模は、世界全体で約370兆円を超えるといわれています。その拡大は中東や東南アジアにとどまらず、欧米にも広がっています。今後、2033年までに約770兆円まで拡大するといわれているハラール食品市場は、日本の企業にとっても非常に魅力的な市場であるといえます。

しかし、国内に目を向けると、訪日外国人観光客が増加しているにも関わらず、国内のハラールフード対応飲食店の数はいまだに少ないのが実情です。今後国内の飲食店にとって、ハラール認証の取得は顧客層拡大の戦略の1つとなるでしょう。

日本の人口が減少している一方で、世界の人口は82億人超と増加の傾向を見せています。そのような中、今後国内の食品企業は、海外市場での競争力の向上が必要になってくることでしょう。今回のオタフクソースのような挑戦は、今後も多くの日本企業で増えていくことでしょう。

2025年9月の食品業界M&A

2025年9月の食品業界M&A
2025年9月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで22件となり、1~9月の累計件数は134件となりました。なお、前年同月は13件、前年1~9月の累計件数は105件となっており、前年と比較して食品業界のM&Aが活発化していることが分かります。今月は4件のクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)が見られました。2025年に入ってから私たちが集計している件数で11組(うち、アメリカ5組、シンガポール3組)です。アメリカでのM&Aが多いのは市場の大きさに加え、関税の影響などもあるかもしれません。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年9月1日

株式会社アイビイケイ(非上場・茨城)

モトヤユナイテッド株式会社(非上場・岡山)

株式譲渡

2025年9月1日

有限会社ライスアイランド(非上場・神奈川)

ダイセーホールディングス株式会社(非上場・東京)

事業譲渡

2025年9月1日

斎藤商業株式会社(非上場・千葉)

株式会社久世(東証:2708・東京)

事業譲渡

2025年9月2日

株式会社鈴屋(非上場・東京)

シャディ株式会社(非上場・東京)

株式譲渡

2025年9月2日

東葛食品株式会社(非上場・千葉)

昭和産業株式会社(東証:2004・東京)

株式譲渡

2025年9月2日

株式会社ラマイ(非上場・北海道)

株式会社USEN(非上場・東京)

株式譲渡

2025年9月2日

株式会社デリカシェフ(非上場・埼玉)

株式会社武蔵野(非上場・埼玉)

株式譲渡

2025年9月2日

MERCER OFFICE株式会社(非上場・東京)

SYNC Group株式会社(非上場・東京)

株式譲渡

2025年9月4日

株式会社萬平(非上場・神奈川)

株式会社西原商会(非上場・鹿児島)

株式譲渡

2025年9月4日

株式会社グッドクリエイト(非上場・東京)

株式会社ガーデン(東証:274A・東京)

事業譲渡

2025年9月10日

Freshmart Singapore Pte Ltd(非上場・シンガポール)

富永商事ホールディングス株式会社(非上場・兵庫)

株式譲渡

2025年9月10日

有限会社高千穂漢方研究所(非上場・兵庫県)

有限会社二軒茶屋餅角屋本店(非上場・三重県)

株式譲渡

2025年9月11日

Hodo, Inc.(非上場・アメリカ)

カルビー株式会社(東証:2229・東京)・相模屋食料株式会社(非上場・群馬)

株式譲渡

2025年9月16日

株式会社すし弁慶(非上場・鳥取)

SRSホールディングス株式会社(東証:8163・大阪)

株式譲渡

2025年9月16日

株式会社ピソラ(非上場・滋賀)

株式会社串カツ田中ホールディングス(東証:3547・東京)

株式譲渡

2025年9月18日

奥野食品株式会社(非上場・三重)

株式会社ルミエール(非上場・大阪)

事業譲渡

2025年9月18日

株式会社島田食品(非上場・神奈川)

株式会社OICグループ(非上場・神奈川)

株式譲渡

2025年9月24日

ファームストン株式会社(非上場・東京)

白鶴酒造株式会社(非上場・兵庫)

株式譲渡

2025年9月25日

ADiRECT SINGAPORE PTE. LTD.(非上場・シンガポール)

スターゼン株式会社(東証:8043・東京)

株式譲渡

2025年9月26日

FB Food Service (2017) Co., Ltd(非上場・タイ)

フジッコ株式会社(東証:2908・兵庫)

株式譲渡

2025年9月26日

株式会社明友(非上場・山形)

株式会社古窯ホールディングス(非上場・山形)

株式譲渡

2025年9月30日

株式会社北海道加ト吉(非上場・北海道)

株式会社ちぬやホールディングス(非上場・香川)

株式譲渡

【Pick Up M&A】カルビーと相模屋食糧×Hodo, Inc.

2025年9月、カルビー株式会社は相模屋食糧株式会社とアメリカで豆腐や大豆加工食品の製造を手掛けるHodo, Inc.の株式の過半数を取得することを発表しました。カルビーが発行済株式の58%、相模屋食糧が10%を保有します。スナック菓子業界のリーディングカンパニーと、豆腐業界のリーディングカンパニーの2社が共同でアメリカの豆腐市場へ挑戦します。このM&Aで興味深いのは、カルビーのIRによると「クリーンプロテインとしての豆腐を北米市場に定着させることを目指す。」としていることと、相模屋食糧との協業によってM&Aを実行した2点です。

Hodoは、アメリカで高品質な豆腐や湯葉など植物ベースの食品を製造しており、その製品には有機の非遺伝子組み換え大豆を使用することで、タンパク質が豊富で栄養価が高く、グルテンフリーであることが特徴です。世界的に持続可能な食品の需要が高まる中、植物性タンパク質を豊富に含む豆腐は、加工度が低く原料に近い食品として、健康や環境問題への関心が高まるアメリカでも注目を集めています。日本の伝統食が私たちの認識とは少し異なって、クリーンプロテインとして海外で受け入れられるのは面白いと思います。カルビーはじゃがいもを原料としたポテトチップスが主力商品であるように、植物ベース食材をコアビジネスとする企業の姿勢が見て取れるM&Aとなりました。

また、豆腐事業への新規参入にあたり、自社だけでは足りない知見を相模屋食糧というパートナーによって解決している点も注目すべきポイントです。単体では実現できないことも専門家をパートナーに迎え入れることで可能になります。何事も自社だけで乗り越えようとするのではなく、資本も絡めた強力なパートナーを獲得していく柔軟なM&A思考がこれからの日本に必要ではないでしょうか。

業界のニュース:ニューヨークで50店舗以上のスターバックスが予告なく閉店

アメリカのスターバックスは、年末までに北米店舗の1%を閉店、900名の従業員の削減を発表しました。ニューヨークでは突如として50店舗以上が閉店しました。

かつてはカフェチェーンの成功モデルとされ、単にコーヒーではなく、自宅・職場に継ぐリラックスできる空間「サードプレイス」を提供する体験価値を訴求することで成功しました。一般的なカフェチェーンと比較しても高単価が受け入れられやすく、高い収益性からパート・アルバイトも含めたストックオプション制度を1991年からいち早くスタートするなど常に注目される存在でした。

しかし、時代は変わり、現在はその高単価が客足を遠のかせているとのことです。2024年にオンライン金融サービスマーケットプレイスを運営するレンディングツリー(アメリカ)の調査では、アメリカ人の既に8割がファストフードを贅沢品として認識しているとの結果が出ました。スターバックスはカフェチェーンとしては高価格帯に位置する印象があり、物価高が進む時代において消費者心理との乖離があったのかもしれません。

また、アメリカのスターバックスは2023年に労働組合を妨害するために、労働組合に加盟している店舗を閉鎖させたとの疑いから炎上した過去があり、かつてのリラックスできる空間というイメージも現地では希薄化している可能性があるようです。

日本でも、原料などが高騰する中で、食品業界の企業にとって高価格帯の顧客獲得は重要な戦略の一つと言えます。一方で、顧客自身が実質的な手取りが減少している中で、顧客の理解を得られない高価格戦略は難しいことは言うまでもありません。価格と集客のバランス、そして価格を上げたとしても顧客から理解を得られるための企業の在り方がより一層求められる時代になりました。

2025年10月の食品業界M&A

2025年10月の食品業界M&A
2025年10月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで14件となり、1~10月の累計件数は148件となりました。なお、前年同月は9件、前年1~9月の累計件数は114件となっており、前年と比較して食品業界のM&Aが活発化していることが分かります。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2025年10月01日

(株)カネシン[北海道]

(株)レブニーズ[北海道]

株式譲渡

道東地域の海産物の付加価値向上や、礼文島をはじめとする産地との連携をさらに深め、新たな価値を創出するため

2025年10月01日

(株)文化堂[東京都]

(株)ブルーゾーンホールディングス[東証417A・埼玉県]

株式譲渡

経営資源を相互活用して切磋琢磨し、スーパーマーケットとして独自の「強み」をさらに磨きながら自律的な成長発展を目指すため

2025年10月01日

デライトホールディングス(株)[愛知県]

(株)ブルーゾーンホールディングス[東証417A・埼玉県]

株式譲渡

お互いの良さを磨き上げ、更なる成長を目指すとともに、全国に仲間を増やし、個性あるローカルスーパーを残し発展させるため

2025年10月02日

(株)エスサーフ[滋賀県]

国分グループ本社(株)[東京都]

株式譲渡

滋賀県の酒類食品流通を持続的に支え、地域になくてはならない卸となるべく、商品調達力、物流機能を相互に活用し、地域活性化に貢献するため

2025年10月3日

(株)優食[岡山県]

(株)KOMPEITO[東京都]

株式譲渡

給食・在宅配食サービスの強化で働く世代からシニア世代まで幅広い層に向けた「日常に寄り添う食のサービス」の提供を加速するため

2025年10月6日

(株)京北スーパー[千葉県]

(株)ランドロームジャパン[千葉県]

株式譲渡

これまでの株式会社京北スーパーの事業実績と信頼を受け継ぐとともに、ランドロームジャパンがすでに持つノウハウを組み合わせることにより、さらに発展させていくため

2025年10月6日

(株)ジョイア・ミーア・ガーデン[栃木県]

日本テーマパーク開発(株)[東京都]

事業譲渡

持続可能な観光産業の発展と地域活性化を目指し、地域全体の魅力を高めるため

2025年10月7日

(株)八百半ホールディングス[栃木県]

(株)クリエイトSDホールディングス[東証3148・神奈川県]

株式譲渡

新商勢圏における知名度の高いスーパーマーケット運営企業であることに加え、出店地域における地域特性を踏まえた食品・生鮮の品揃えや売り方のノウハウを得るため

2025年10月7日

(株)あじさいホールディングス[長崎県]

ヤマエグループホールディングス(株)[東証福証7130・福岡県]

株式譲渡

事業ポートフォリオの変革による事業多角化のため

2025年10月8日

(株)亀製麺[東京都]

(株)松屋フーズホールディングス[東証9887・東京都]

株式譲渡

麺事業拡充によりグループの成長を加速させるため

2025年10月14日

フィリコ・ジャパン(株)[東京都]

(株)GENDA[東証9166・東京都]

株式譲渡

販売網やナイトマーケット市場動向の共有、IP(知的財産)ファンへの価値提供の幅を拡充するため

2025年10月14日

(有)ロイヤルファーム[青森県]

神内ファーム二十一(株)[北海道]

株式譲渡

ロイヤルファームのさらなる成⾧を実現し、事業の発展を追求するため

2025年10月15日

(株)九州堂[東京都]

(株)evisu[東京都]

事業譲渡

九州のブランドを再生し未来へつなぐため

2025年10月28日

(有)オーパス[大阪府]

(株)イートアンドホールディングス[東証2882・東京都]

株式譲渡

餃子ブランド群の多角化のため

【Pick Up M&A】松屋×亀製麺

「松屋の牛丼」で有名な牛丼チェーン大手である株式会社松屋ホールディングスが、株式会社亀製麺を譲受しました。これは、本年7月に同社が新宿に開業した「松太郎」において、新業態となるラーメン事業への参入を果たしたことが背景にあり、その内製化や展開を見据えたものと考えられます。

「農林水産省 令和7年産米の相対取引価格・数量(令和7年9月)(速報)」によると、令和7年度米の相対取引価格は、対前年比で全銘柄平均148%の価格となっています。

一方で、米と並んで主食に使われる小麦はその約85%を輸入に頼りつつも輸入小麦の価格は令和7年10月で対前年比▲4%と引き下げられています(農林水産省 輸入小麦の政府売渡価格の改定について 令和7年9月10日 より)。

引き続き、外食各社が米の高騰に対策を講じる中で、松屋ホールディングスはラーメン業態への参入により、丼業態以外へのポートフォリオ展開を狙い原価高騰の影響抑制を進めようとしていると推察されます。

また、ラーメン業態の展開は同社の主要ブランド「松屋」における牛肉を主としたブランド以外へのポートフォリオ分散も可能としており、牛肉高騰への対策も併せていると思われます。

さらに、小規模ブランドが多いラーメン業態において、仕入れルートに乗せる事による仕入れ価格の抑制ができる大手のメリットを最大限に活用できるというシナジーも有利な点です。

吉野家ホールディングスなど大手外食企業が、同様に原価高騰対策も含めてラーメンブランドをM&Aにより譲受を進める流れが続く中で、同様にQSR(クイックサービスレストラン)を得意とする松屋ホールディングスの今後の展開に注目です。

業界のニュース:ボージョレ・ヌーヴォー2025「太陽に恵まれた当たり年」

サントリーは10月22日、毎年11月の第3木曜日に解禁されるフランス産新酒ワイン、ボージョレ・ヌーヴォーの日本戦略取材会を羽田空港にて開催し、初荷便を披露しました。

ボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピーは実は2つあり、フランス食品振興会が打ち出しているものとサントリーが販売拡大のためにアレンジしたものに分かれます。本年サントリーが取り扱うボージョレ・ヌーヴォーは「太陽に恵まれた当たり年で、甘く濃い味わいに仕上がった」とのことです。

ボージョレ・ヌーヴォーが諸外国と比較して、特に日本で盛り上がりを見せる理由として、まず文化的に「初物」への意識が挙げられます。さらに、先進国の中で日本のみがフランスより先に解禁日を迎えることができるため「フランス本国より先に」というマーケティング戦略が展開しやすい背景もあります。

2004年のピーク時には製造量の半数近くが日本に輸入されておりましたが、2024年の輸入数は7分の1程度まで減少しています。しかしながら、依然として国内ではスーパーや飲食店における「イベント」として、その存在感を維持しています。

このようなイベントにおいては「バレンタインデー」のようにモロゾフ株式会社が販促のために掲載した広告を契機としたものや、「土用の丑の日」のように平賀源内が夏の売上低迷期におけるうなぎの販売促進のために考案したものなど、多様な事例が存在します。

2025年11月の食品業界M&A

2025年11月の食品業界M&A
2025年11月の食品業界M&A

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで16件となり、1~11月の累計件数は164件となりました。なお、前年同月は10件(前年1~11月の累計件数は124件)となっており、累計で前年対比+32%の増加となります。2025年はほぼ確実に前年の件数を大きく超えてくるといえるでしょう。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2025年11月4日

ひらのや[沖縄県]

(株)岸本組[北海道]

事業譲渡

「ひらのや」の歴史、伝統の味を守りながら、現代的な視点や新しい発想を融合させ、新たな食文化を提供するため。

2025年11月4日

クックデリ(株)[大阪府]

ヒューリック(株)[東証3003・東京都]

51%株式譲渡

高齢者施設の人材不足を、クックデリの提供する「完調食」により解消するため。

2025年11月4日

「稚内回転寿司 花いちもんめ」(有)タイタス[北海道]

(株)札幌海鮮丸[北海道]

事業譲渡

ノウハウ共有を通じてシナジーを高め、商圏拡大と新規顧客の獲得を推進し、北海道発の“うまい”を全国へ届けるため。

2025年11月4日

(株)しまとうふ[沖縄県]

(株)西原商会[鹿児島県]

株式譲渡

商品ラインナップを拡大することにより、事業規模の拡大を図るため。

202511月10日

Hoàng Anh Flavors and Food Ingredients Joint Stock Company[ベトナム]

長谷川香料(株)[東証4958・東京都]

株式譲渡

香料事業とのシナジー創出および顧客重複が少ないため販路拡大が可能であり、東南アジアへの浸透の推進を図るため。

2025年11月12日

ラーメンなかむら[アメリカ・ハワイ]

まるやすホールディングス(株)[三重]

事業譲渡

「ラーメンなかむら」を発展させるとともに、海外展開のハブを獲得するため。

2025年11月14日

(株)エムピーキッチンホールディングス[東京都]

(株)魁力屋[東証5891・京都府]

株式譲渡

つけ麺業態の拡大に加え、サプライチェーンや同業界による事業の管理プラットフォーム化などのシナジー創出により、グループ全体の価値を向上させるため。

2025年11月18日

(株)KEING CORPORATION[アメリカ]

(株)OICグループ[神奈川県]

株式譲渡

アメリカへの事業展開を通じ、外食事業にとどまらない「日本食」を世界へ届け、一番「おいしい日本食」を提供する会社として確立するため。

202511月19日

Burger King Japan Holdings Co. Ltd.(Affinity Equity Partners)[香港]

Private Equity at Goldman Sachs Alternatives[アメリカ]

株式譲渡

これまでの海外での外食産業への投資実績や潤沢な資金的後方支援をもとに、日本国内のバーガーキング事業の価値のさらなる向上を図るため。

2025年11月25日

Silbury Marketing Ltd[イギリス]

カゴメ(株)[東証/名証2811・愛知県]

株式譲渡

欧州におけるマーケティング、開発、生産、販売の各機能を効果的に連携できる体制を構築するため。

2025年11月25日

(株)大寿[神奈川県]

(株)エムアイフードスタイル[東京都]

事業譲渡

「OONOYA」「大野屋商店」の魅力的な商品をエムアイフードスタイルが運営する店舗で展開することにより、企業価値の向上を図るため。

2025年11月25日

(株)後藤酒造店[山形県]

KURAND(株)[東京都]

株式譲渡

後藤酒造店が長年培ってきた伝統および技術を未来へつなぐことにより、地域に根ざした酒造文化を継承していくため。

2025年11月25日

「飛騨高山麦酒」(有限会社農業法人飛騨高山麦酒)(非上場・岐阜)

株式会社CRAFTED JAPAN(非上場・東京)

事業譲渡

「飛騨高山麦酒」の技術と味を未来に受け継ぐことで、地域におけるCRAFTED食材の価値を多くの人に届けるため。

2025年11月26日

駒越食品株式会社(非上場・静岡)

いなば食品株式会社(非上場・静岡)

51%株式譲渡

いなば食品グループにおける缶詰販売事業のさらなる強化を図るため。

2025年11月27日

有限会社セイコーポレーション(非上場・宮城県)

ホリイフードサービス株式会社(3077・茨城)

株式譲渡

ホリイフードサービスが展開する1都9県における新たな業態構成により、食事需要への強化と郊外型のリモデル等、今後の収益力や競争力の向上を図るため。

2025年11月28日

株式会社ヤンバル琉宮水産(株式会社ヒガシマル連結子会社)(非上場・沖縄)

旭物産株式会社(非上場・徳島)

株式譲渡

旭物産株式会社が考えるシナジー効果や養殖経営のノウハウが、ヤンバル琉宮水産の企業価値の向上および水産業界の発展につながると考えたため。

【Pick Up M&A】ヒューリック×クックデリ

ヒューリック株式会社(以下、ヒューリック)による、クックデリ株式会社(以下、クックデリ)の株式取得は、高齢化社会の課題と巨大な市場機会に対応する戦略的な一手として注目されます。

本件は、ヒューリックが重点領域である高齢者・健康分野の事業を強化するため、クックデリの提供する業界トップクラスの高齢者向け「完全調理済み食品」(完調品)事業の株式を51%取得したものです。

 昨今、日本では高齢化が盛んに叫ばれる中、高齢者施設における人手不足が深刻化しています。クックデリが提供する完調品は、盛り付けや解凍のみで提供が可能なため、ヒューリックが展開する高齢者施設の人的負担の軽減や人手不足の解消に貢献することが見込まれます。

人口の3分の1が高齢者となる中で、高齢者向け事業の市場規模は、2025年時点で100兆円を超え、2040年度には115兆円へ拡大する見込みです。人口減少の中、高齢者向け産業は日本経済を支える産業として、デジタル技術を活用したサービスや人手に頼らないサービスをはじめ、今後も多様なビジネスチャンスが広がると予想されます。 

本件のM&Aは、巨大な高齢者市場の成長機会を捉えつつ、深刻化する人手不足という社会課題をビジネスで解決するモデルを示しています。本件のように、今後もM&Aが既存ビジネスの安定的成長と社会構造の変化への適応を両立させる有力な選択肢として活用されていくでしょう。

業界のニュース:クリスマス商戦

2025年も終盤を迎え、街路樹のイルミネーションや、デパートのショーウィンドウがきらめき始めると、誰もがクリスマスムードに心躍らせます。クリスマスの市場規模は非常に大きく7,000億~1兆円ほどあるとされています。プレゼントなどを含むため単純に食品業界としての市場規模が大きいとは断定できませんが、その他の代表的な季節イベントであるハロウィンが約1,600億円、バレンタインデーが約1,000億円と比較して、期間中に多くの金額が動く魅力的なマーケットであることは間違いありません。

クリスマス商戦を勝ち抜くためには、顧客の理解が重要です。2023年にアウトドア総合情報サイトの『TAKIBI』による調査によると、全体の約30%が「家で過ごす」と回答し、「家族で出かける」が約15%、「恋人と出かける」が約10%であり、その他「友人と出かける」「一人で出かける」が合わせて約10%となっています。それぞれニーズが異なるため、自社のターゲットを定めたうえでの戦略が必要となります。また、今年は物価高の影響もあり、外食ではなく家で過ごす割合が例年より上昇する可能性があります。そのため、家庭での調理の手間が減るようなテイクアウト商品に力を入れるなど、時代背景にあった商品展開を考えることも重要となるでしょう。


いかがでしたか。

2025年の食品業界における主要なM&Aを一つの記事にまとめてみました。

随時更新してきますので、最新情報はアップデートをお待ちください。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

渡邉 智博

宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:渡邉 智博部署:食品業界支援部役職:執行役員