M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
投稿日:更新日:

2025年9月の調剤薬局業界M&Aまとめ

メールで送る
目次

9月の代表的な公表M&A一覧

2025年9月に公表された調剤薬局のM&Aは以下の通りです。2025年9月に公表された調剤薬局業界に関連する主なM&Aは3件でした。調剤薬局の中小企業M&Aにおいては公表されない事例が多いため、水面下での経営主体の変更は他にも多数実行されています。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

概要

2025年9月1日

ノックオンザドア株式会社(患者支援プラットフォーム)

スギホールディングス株式会社

子会社化

難病・希少疾患領域の支援サービス企業を完全子会社化し、薬局+支援ネットワークを強化。

2025年9月12日

株式会社プレカル(調剤支援ソフト)

株式会社EMシステムズ

事業譲渡

AIによる処方箋自動入力技術を取得し、DX領域を強化。

2025年9月17日

日本調剤株式会社

株式会社アドバンテッジ・パートナーズ

TOB成立

ファンドによる経営参画が成立。調剤大手への資本流入が進行。

<2025年9月の調剤薬局業界 公表M&A>

今月は、株式会社プレカルが運営する調剤支援ソフト事業を株式会社EMシステムズが譲受けたM&Aが注目を集めました。譲渡対象事業の主な商品である「プレカル」はご存じの方も多いのではないでしょうか。プレカルは処方箋入力業務を「オンライン事務員(プレカルの提供サービス)」が遠隔で代行するサービスです。さらに入力代行されたデータはレセコンにも自動で入力されるため、受付から印刷までを限りなく無人化に近づけることを可能にしたことで注目されているサービスでした。これまで薬局の事務員の方が担っていた業務の一部を外注することができることにより、浮いた時間を調剤補助や患者さんとのコミュニケーションの時間に充てることができます。まさに対物から対人への流れをサポートしてくれるサービスです。レセコンメーカー大手の株式会社EMシステムズがプレカル事業を譲り受けることにより、多くのユーザー(薬局)の対人化が推進される可能性があります。

業界のニュース

中医協「調剤について」の論点整理

2025年9月10日に開催された中医協総会では、「調剤報酬の在り方」が主要議題として取り上げられました。厚労省資料(PDF)によると、次期2026年度改定に向けた方向性は「対人業務の評価」「DX推進」「費用対効果の再整理」の3軸に整理されます。

まず、後発医薬品調剤体制加算の適正化では、実績と評価の乖離を指摘する意見が強まり、減額・条件厳格化の方向性が示されました。

集中処方率の上限見直しでは、特定医療機関への依存度が高い薬局に対し、基本料1の適用制限を検討。地域連携・分散化を促す制度設計が意図されています。

さらに、医療DX推進体制加算の創設が大きな焦点となりました。電子処方箋・オンライン資格確認・マイナ保険証対応を基盤とした情報連携を“評価対象”とし、薬局が地域医療情報網の一部として機能する方向へ舵を切っています。

一方で、リフィル処方・長期処方の普及が進む中、薬剤師による服薬管理・残薬対応がますます重要となり、「服薬フォローアップ」の質が次期報酬体系の鍵を握る見通しです。

中医協資料では、将来的に「薬局間の機能格差」を前提とした段階的評価制度(いわゆる機能別薬局評価)の導入可能性にも触れられており、単店舗経営の薬局にも早期のDX対応と在宅・服薬支援体制の明確化が求められます。

アインホールディングス×FrancfrancのM&A発表から1年

株式会社アインホールディングスの2026年4月期第1四半期決算が発表されました。売上高1,329億円(前年同期比+28.3%)、経常利益42億円(+43.4%)と増収増益を実現しています。

特に、Francfrancの完全子会社化による、小売事業の売上増(前年同期比+241%)と営業利益増(前年同期比+287%)が好業績に寄与しています。ご存じの通り、2024年7月にアインホールディングスは雑貨販売のFrancfrancを譲り受けることを発表しました。当時は、「なぜ調剤薬局大手のアインホールディングスがFrancfrancをM&A?」と思った方も多かったと思います。

もともと、アインファーマシーズはコスメ・ビューティー型ドラッグストアであるアインズ&トルペ業態を展開しており、「健康×美容」という切り口で存在感を高めていました。メインの顧客層は20代~30代の女性です。Francfrancも顧客層は同様に20代~30代の女性です。アインファーマシーズは、自社がもともと持っていた「健康×美容」という提供サービスに、Francfrancが持つ「ワクワク感」というエッセンスを加え提案の幅を広げ、質を高めようとした。のだと思います。

また、 出店エリアも、商業施設・駅ビルを中心とする都市部が主で、両社の出店モデルやターゲットエリアにも重なりがありました。

M&Aの発表から1年が経ち、両社のコラボ店舗なども登場する中、相乗効果(シナジー)も明確になってきました。

シナジー①

美容・健康関連商品の購入顧客が、生活雑貨・インテリア雑貨にも接触する動線を創出

シナジー②

店舗内デザイン・顧客体験を両社で融合し、「ビューティ+ライフスタイル」をトータルコーディネートできるようになった

シナジー③

購買データ・顧客属性データを統合することで、クロスマーチャンダイジング(ついで買いを促す販売手法)が可能に

M&A発表時、アインホールディングスは「小売り事業の売上高が全売上4,000億円のうちの1割を占めているに過ぎない状況から、2割を目指す」という計画を明らかにしていました。実際、小売事業の第1四半期決算発表による売上+241%、営業利益+288%という結果は、狙い通りだったのではないでしょうか。

アインホールディングスが掲げる中期経営計画「Ambitious Goals 2034」では、「医療×ライフスタイル企業」への変革が明記されており、本買収はその実践的ステップと位置づけられます。 調剤薬局事業を中心にしてきた企業が、生活領域(美容・雑貨・インテリア)まで接点を伸ばすことで、患者・利用者の“生活そのもの”に関わる価値を提供し、「かかりつけ薬局」+「ライフスタイル提案型店舗」という新たな経営モデルの実現が可能となりました。 

最大手であっても、調剤薬局だけでは成長に限界を感じており、新たなビジネスモデルの構築を目指しています。変革期を迎えた薬局業界においては、従来の枠を超えた新たな取り組みが必要です。

2026年調剤報酬改定を見据えて

今月は、「M&A」「中医協発表」「アインホールディングスのIR発表」の三方向から「薬局業界の転換期」を感じさせる1か月でした。

 株式会社EMシステムズによるプレカル事業のM&Aは、DXとAIが推進された「次世代薬局モデル」の到来を予感させます。中医協の発表では「薬局機能の再定義」が明確になされていました。薬局業界大手であるアインホールディングスは“調剤薬局”から“健康的で美しいライフスタイル提供サービス企業”へと事業領域を拡張させてきています。

 調剤報酬に依存しない経営構造を築けるかが、次期改定後の生存戦略の分岐点となります。薬局はもはや「薬を渡す場所」ではなく、「生活と健康をデータでつなぐ場」へと進化する段階に入りました。2026年改定を見据え、各薬局がどのように“価値を再設計するか”が、これから1年の最大のテーマとなるでしょう。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

藤村 太一

大阪府出身。関西大学卒業後、2015年に新卒で株式会社三井住友銀行入行。中小企業オーナーの資産運用や相続・事業承継ビジネスに従事。株式会社GA technologiesにおいて株式会社MtechAを立ち上げを経験し、その後、経営統合を経て当社参画。

担当者:藤村 太一部署:調剤薬局業界支援部役職:M&Aコンサルタント

カテゴリ