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2026年8月の調剤薬局業界M&Aまとめ

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2026年8月の調剤薬局業界では、大手チェーンによる地域ドミナントの強化や特定エリアでの事業盤石化を目的としたM&Aが公表されました。

今月の事例であるクオールホールディングスによる愛知県のMH2(みどり調剤薬局)の完全子会社化は、出店が手薄だった東海エリアにおける店舗網の拡充と、高い地域加算を取得している良質な店舗の獲得を狙った動きと言えます。また業界動向としては、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の実態調査により、ドラッグストアの調剤報酬シェアが19.0%まで上昇していることが示されました。

本記事では、8月の主要事例を振り返りながら、ドラッグストアの台頭による市場構造の変化と、中小調剤薬局が検討すべき今後の経営選択肢について解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年8月の調剤薬局主要M&A一覧: クオールHDによる愛知県内3店舗の取得事例
  • 【Pick Up】クオールHD × MH2: 東海エリアのドミナント強化と「地域支援・医薬品供給対応体制加算」取得店舗の価値
  • ドラッグストアの調剤シェア拡大: 調剤額1兆6,586億円(シェア19.0%)に達した最新データ
  • ランチェスター戦略に見る業界構造の変化: 「影響目標値(10.9%)」から「上位目標値(19.3%)」目前への到達とその意味
  • 今後の経営戦略の視点: 大手調剤・ドラッグストアの台頭を踏まえた、自社の単独維持・第三者承継の検討

目次

8月の代表的な公表M&A一覧

今月は、プライム上場企業であるクオールホールディングスによる、株式会社MH2(以下、MH2社)の株式譲受が発表されました。但し、調剤薬局業界のM&Aは非公開なことが大半であり、報酬改定の影響なども考慮すると、今月も水面下では数多くのM&Aが実行されているものと予想されています。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年8月5日

(株)MH2

クオールホールディングス(株)[プライム3034・東京都]

100%株式譲渡

愛知県内のドミナント体制強化および調剤事業の拡大

<2026年8月の調剤薬局業界 公表M&A>

MH2社は、愛知県名古屋市内で「みどり調剤薬局」の屋号にて3店舗を運営している企業です。2008年12月に第一号店となる本店の開局後、福井代表自身が本店の管理薬剤師を務めながら2016年4月に熱田一番店、2020年10月に春岡通店を開局しています。3店舗すべてで地域支援・医薬品供給対応体制加算を取得※しており、特に熱田一番店は調剤基本料2を算定しているため、最低でも月間1,800枚以上の処方箋を応需していたことがわかります。

※本店:加算2取得、春岡通店:加算2取得、熱田一番店:加算4取得 2026年9月1日現在

本提携により、クオールホールディングス株式会社(以下、クオール社)の調剤薬局店舗数は955店舗、うち愛知県の店舗数は29店舗となりました。クオール社は関東エリアでの出店比率が高く、一都三県の290店舗(東京都149店舗、神奈川県51店舗、埼玉県55店舗、千葉県35店舗)に比べ東海4県は37店舗(愛知県26店舗、静岡県5店舗、岐阜県6店舗、三重県0店舗)とやや手薄なエリアでした。名古屋市内の好エリアにて3店舗を運営するMH2社との提携は、東海エリアでのドミナント展開を後押しするものと考えられます。

クオール社は2027年3月期の展望として、年商60億円規模の出店・M&Aを掲げており、2026年5月に発表した中期経営計画内では、調剤薬局事業においては早期な1,000店舗展開並びに2026年3月期の売上1,779億円営業利益77億円から2031年3月期は売上3,146億円営業利益129億円を目標に、製薬事業・BPO事業と並行して調剤薬局事業においても引き続き事業拡大を目指すことを発表しています。

ドラッグストアの調剤報酬シェア拡大

日本チェーンドラッグストア協会は9月1日に会見を開き、「2025年度JACDS実態調査結果」を公表しました。会見では、ドラッグストアの調剤規模に関して昨対比9.1%増の1兆6,586億円であると述べられました。

下表は、2015年から11年間の調剤医療費総額及びドラッグストア調剤額の推移を示していますが、調剤医療費総額は7兆8,746億円から8兆7,242億円と約10.79%増加した中で、ドラッグストア調剤額は7,158億円から1兆6,586億円と倍以上に増加、全体の比率も9.1%から19.0%と変化、伸び率も近年は9%台を安定して推移していることがわかります。

仮に今後もドラッグストア業界の調剤報酬額が約8~10%の伸び率を維持し、調剤医療費総額が同様に約1~2%の伸び率を維持した場合には、ドラッグストアの調剤報酬額は2030年には約2.6兆円、2035年には約3.9兆円、調剤医療費は2030年に約9.4兆円、2035年に約10.1兆円となり、今後10年以内にドラッグストア業界の調剤シェア率が40%近くまで高まる可能性もあると試算されます。

また、近年スギホールディングスを始めとするドラッグストア業界大手が推し進めている調剤薬局グループの譲受(2024年4月:株式会社ひかりファーマ、2025年3月:I&H株式会社等)が加速すれば、この試算を上回る可能性もあると考えられます。

年度

ドラッグストアの調剤報酬額

対前年伸び率

調剤医療費総額

対前年伸び率

比率

2015年

7,158億円

ーーー

7兆8,746億円

ーーー

9.1%

2016年

7,849億円

9.7%

7兆4,953億円

△4.8%

10.5%

2017年

8,069億円

2.8%

7兆7,129億円

2.9%

10.5%

2018年

8,858億円

9.8%

7兆4,746億円

△3.1%

11.9%

2019年

9,807億円

10.7%

7兆7,464億円

3.6%

12.7%

2020年

1兆693億円

9.0%

7兆5,447億円

△2.6%

14.2%

2021年

1兆1,738億円

9.8%

7兆7,515億円

2.7%

15.1%

2022年

1兆2,811億円

9.1%

7兆8,821億円

1.7%

16.3%

2023年

1兆4,025億円

9.5%

8兆2,678億円

4.9%

17.0%

2024年

1兆5,205億円

8.4%

8兆4,008億円

1.6%

18.1%

2025年

1兆6,586億円

9.1%

8兆7,242億円

3.8%

19.0%

<2025年度JACDS実態調査結果より ドラッグストア業界の調剤額及び調剤医療費総額推移まとめ>

ランチェスター戦略に見る次の境界線

第一次大戦時にフレデリック・ランチェスターが提唱した数理モデルであるランチェスター戦略理論では、シェア10.9%を影響目標値、19.3%を上位目標値、26.1%を下限目標値、41.7%を安定目標値と定めました。

上記数値はドラッグストア業界全体の数値のため同一ではありませんが、この10年間でドラッグストア業界が10.9%の影響目標値から、19.3%の上位目標値にシェアを拡大してきました。10年前は、ドラッグストアでも処方箋を受け取れる程度の影響だったところから、調剤薬局業界全体に影響を与えうる存在になってきたと言えます。

シェア率

名称

意味合い・状況

73.9%~

上限目標値

独占的。絶対に安全・安泰。これ以上は安定性・収益性が低下。

41.7%~

安定目標値

地位が安定。2位以下を大きく引き離した首位独走の条件。

26.1%~

下限目標値

強者の最低条件。1位だが2位と僅差で不安定な状態。

19.3%~

上位目標値

上位3位以内。弱者の中の強者。1位獲得戦略への切り替え目安。

10.9%~

影響目標値

市場全体に影響を与える存在。本格的な競争に突入。

6.8%~

存在目標値

競合に存在を認められる。本格的な競争にはまだ巻き込まれない。

2.8%~

拠点目標値

市場参入の可否を判断する基準値。

<ランチェスター戦略理論>

まとめ

2026年8月は、クオール社による愛知県のMH2社の株式譲受が公表され、2026年の調剤報酬改定を経た後でも、大手調剤グループによる地域ドミナント強化の動きが改めて示されました。

一方で、JACDSの最新調査が示す通り、ドラッグストア業界の調剤シェアは19.0%に達し、ランチェスター戦略における上位目標値(19.3%)が目前に迫っています。これは、ドラッグストア業界が調剤市場において調剤も出来る競合の一角、という立場から調剤薬局大手グループと共に市場の主導権を争う相手へと変化していることを意味します。

今後、大手調剤グループやドラッグストアグループのM&Aや調剤併設化がさらに加速し、オンライン処方などが緩やかにでも進行していけば、2028年、2030年の調剤報酬改定後の経営戦略はさらに難易度を増すものと考えられます。経営者の年齢や自社・自店舗の経営状況のみならず、業界全体の方向性を踏まえたうえで、自社単独で大手調剤グループやドラッグストアグループ、あるいは地場グループと争う形で経営を続けていくのか、第三者承継についての検討・情報収集を進めていくべきかを選択していく必要があります。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

本田 太一

京都府出身。5歳より始めたフィギュアスケートで7度の全日本選手権出場、2度のインカレ団体優勝の経験がある。関西大学経済学部卒業後、2021年に新卒で日本M&Aセンターに入社し、一貫して調剤薬局業界のM&A業務に取り組む。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:本田 太一部署:調剤薬局業界支援部役職:調剤薬局業界支援3部 部長