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2026年5月物流業界M&Aまとめ

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2026年5月の物流業界は、業界内でも知名度の高い有力企業や大手グループによる、大型M&Aが相次ぐ月となりました。

背景にあるのは、多重下請け構造の是正を迫る法規制の強化と、深刻化するリソース不足です。自社単独での維持が困難になる中、大手グループへの参画によって実運送機能やネットワークを補完し合う動きが急速に具現化しています。さらに目を世界に向けると、米Amazonが自社の巨大な物流インフラを外部へ開放する新サービスを本格始動させ、既存の3PL市場に巨大な地殻変動を起こそうとしています。

本記事では、5月に公表された主要なM&A事例を振り返るとともに、メガプラットフォーマーの参入という新たな局面において、日本の運送事業者が生き残るために必要なデジタル対応力と経営戦略について解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年5月の物流主要M&A一覧: センコー、澁澤倉庫、AZ-COM丸和など、業界トッププレイヤーによる大型買収の全貌
  • 【Pick Up】樋口物流サービス × AZ-COM丸和: 4,000社の協力金網を持つ大手利用運送会社が、今このタイミングでグループ入りを選んだ理由
  • 多重下請け是正のインパクト: 二次請負制限の潮流の中、庸車(ようしゃ)依存型ビジネスモデルが直面するリスク
  • Amazon「ASCS」始動の激震: 3PL市場への正面参入と、AWS(クラウド)モデルに酷似したインフラ外販戦略
  • メガプラットフォームと共存する条件: 運行のリアルタイム可視化やデータ連携など、運送会社に急務となるデジタル化への投資

目次

5月の代表的な公表M&A一覧

5月は比較的規模の大きな物流企業のM&Aが相次ぎました。

旧マルハニチロの物流子会社であるUmiosロジのセンコーグループホールディングス入りや、名鉄ワールドトランスポートの澁澤倉庫グループ入り、さらにはオーナー系利用運送会社として業界最大手の樋口物流サービスがAZ-COM丸和ホールディングスグループへ参画するなど、業界内でも知名度の高い企業のグループ入りが続いています。

こうした動きからは、物流業界における再編の加速がうかがえます。この流れは物流業界に限ったものではなく、例えば、家電量販店業界では2026年6月、ヤマダホールディングスとエディオンの経営統合が発表され、ドラッグストア業界では昨年末、ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスが統合しました。これらは業界トップ10社内の統合が始まっている業界です。これらの行きつく先は3社、ないし4社に集約される構造でしょう。コンビニ業界、ガソリンスタンド業界、新聞業界、ビール業界などあらゆる業界の再編が完了していますが、物流業界もまたこの一途を辿っていると言えます。

 

人口減少や人材不足、デジタル化への対応、顧客ニーズの高度化などを背景に、企業が単独で競争力を維持することは年々難しくなっています。そのため、M&Aによる規模拡大や機能補完を通じて競争力を高める動きは今後さらに加速していくでしょう。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年5月11日

Umios ロジ(株)[東京都]

 

センコーグループホールディングス(株)[東証9069・東京都]

株式取得

Umiosロジの冷凍・冷蔵物流領域における顧客基盤や拠点網と、センコーグループの輸配送ネットワークを融合することで、コールドチェーン領域における双方の事業価値向上とサービス拡充を図る

2026年5月11日

名鉄ワールドトランスポート(株)[東京都]

澁澤倉庫(株)[東証9304・東京都]

株式取得

す長期事業計画『Shibusawa 2030 ビジョン』に掲げる国際物流事業の強化のため、フォワーディング大手の名鉄ワールドトランスポートを子会社化

2026年5月22日

(株)樋口物流サービス[大阪府]

AZ-COM丸和ホールディングス(株)[東証9090・東京都]

株式取得

オフィス、店舗、商業施設向けの什器・家具物流における3PL事業のノウハウに加え、4,000社超の協力会社ネットワークを獲得することで、輸配送ネットワークのさらなる強化と物流サービスの拡充を図る。

2026年5月25日

(株)トーヨー[千葉県]

セイノースーパーエクスプレス(株)[東京都]

 

 

吸収合併

子会社の吸収合併による資本の最適配置。

<2026年5月の物流業界 代表的な公表M&A>

【Pick Up M&A】 樋口物流サービス×AZ-COM丸和HD

5月22日、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社は、株式会社樋口物流サービスの全株式を取得し、完全子会社化したことを発表しました。

 

樋口物流サービスは、オフィス・店舗・商業施設向けの什器・家具などについて、保管から輸送、搬入・設置までをワンストップで提供する独自サービスや、専門性の高い3PL事業に強みを持つ企業です。また、4,000社を超える協力会社ネットワークを有しており、オーナー系利用運送会社としては全国トップクラスの規模を誇ります。

 

直近期の売上高は約180億円、当期純利益は約4.7億円と業績は堅調です。また、全国各地に拠点を展開している一方で、自社保有車両は200台未満にとどまっています。このことからも、同社の事業基盤が利用運送を中心に構築されていることがうかがえます。

 

これまで樋口物流サービスは、荷主との強固なリレーションや4,000社超の協力会社ネットワークを武器に成長してきました。しかし近年、利用運送事業者を取り巻く環境は大きく変化しています。

 

2025年に成立した改正貨物自動車運送事業法では、実運送体制管理簿の作成や、下請構造を二次請負までに抑制する努力義務が定められました。業界全体として多重下請構造の是正が進められる中、中間事業者である利用運送会社には逆風となる可能性があります。実際に、一部の荷主企業では二次請負までしか認めない方針を打ち出しており、従来のように協力会社へ依存した事業運営は難しくなりつつあります。

 

一方で、樋口物流サービスが有する「保管・輸送・搬入・設置」までを一気通貫で提供するサービスは高い付加価値を持っており、単なる取次会社とは一線を画しています。オーナーである樋口氏は2年前に社長を山崎氏に託していましたが、上記の業界の環境の変化や再編の波を鑑み、規制強化がさらに進む前のタイミングで、実運送機能を有する大手物流グループとの提携を選択し、企業価値の維持・向上を図ったことは合理的な経営判断であったと考えられます。

 

今後、三次請負以降の取引に対する規制はさらに強化される可能性が高く、多重下請構造の解消は業界全体の大きなテーマとなるでしょう。庸車利用の割合が高い企業や、自社が三次請負以降の立場で業務を受託している企業は、自社の受注構造や事業モデルを改めて見直す必要があります。

業界のニュース

Amazon Supply Chain Services(ASCS)は物流業界をどう変えるか

2026年5月、EC大手の米Amazonが、自社の物流ネットワークを外部企業に開放する新サービス「Amazon Supply Chain Services(ASCS)」を発表しました。これは、これまでフォワーダーや運送会社、既存の3PL事業者が担ってきた市場へ、Amazonが正面から参入することを意味します。このニュースを受け、5月4日の米ニューヨーク株式市場では運輸関連銘柄が急落しました。フェデックスの株価は一時9%超下落し、約1年ぶりの大幅安を記録。同業のUPSも一時10%安となりました。市場が警戒したのは、Amazonが保有する巨大な物流インフラが外部向けに開放されることで、既存の物流事業者の競争環境が大きく変わる可能性があるためです。

 

Amazonはこれまで長年にわたり配送ネットワークを拡充してきましたが、その主な目的は自社マーケットプレイス出品者向けの配送品質向上でした。しかし今回は、その輸配送ネットワークをAmazon出品者以外の企業にも提供します。発表によると、3M(日用品・医療関連製品メーカー大手)やランズ・エンド(アウトドア用品小売大手)などに対し、貨物輸送、流通、受注処理、小口配送サービスを提供するとのことです。Amazonは顧客の商品保管や配送のために、世界中で大規模な倉庫網と配送拠点を運営しています。今回の狙いは、その余剰能力を活用し、新たな収益源を確保することにあります。自社ECと直接関係のない貨物まで取り扱うことで、対応可能な市場を大きく広げようとしているのです。

 

実はAmazonは、過去にも同じような戦略で成功を収めています。それがAWS(Amazon Web Services)です。AmazonはEC事業の成長に対応するため、大規模なサーバーインフラを保有していました。しかし、セール時期などのピーク需要に備えて整備した設備は、閑散期になると余剰が発生します。そこで余ったサーバー能力を外部企業向けに提供した結果、AWSは世界最大級のクラウドサービスへと成長しました。今回の物流事業への展開は、そのAWSモデルと非常によく似ています。

 

EC物流は需要の波動が大きく、繁忙期には膨大な輸送能力が必要です。Amazonはそうした波動に耐えられる物流ネットワークを構築してきました。そして今、その余剰能力を外部へ販売しようとしています。もしこのモデルが本格的に拡大すれば、物流専業事業者を取り巻く環境は大きく変わるかもしれません。

 

これまで物流業界では、求荷求車システムや共同配送、AZ-COMネット、コンソーシアムBATONなどを通じて、事業者同士が連携しながら効率化を進めてきました。しかしAmazonは、すでにエンド・ツー・エンドの物流ネットワークを保有しています。調達から保管、配送、ラストワンマイルまでを一気通貫で最適化できるプラットフォーマーが参入することで、業界のあり方そのものが変わる可能性があります。

 

実際、日本では「Amazon Relay」というサービスが運送会社向けに提供されています。このサービスでは、運送会社がAmazonの案件をリアルタイムで受注できます。自社車両の空き状況や出発地、目的地、希望運賃などを登録しておけば、条件に合った案件が自動的にマッチングされる仕組みです。従来は各社の配車担当者が個別に行っていた需給調整を、Amazonがプラットフォーム上で最適化しようとしているとも言えるでしょう。こうした環境の中で、今後運送事業者に求められるのは、Amazonのようなメガプラットフォーマーと共存できる体制を整えることです。

 

こうしたプラットフォームから仕事を獲得するためには、自社車両のGPSによる動態管理、配車担当者へのデジタル教育、デジタコの導入、電子請求書への対応などが欠かせません。また、Amazon RelayのようなWebベースの受発注システムを使いこなせる体制づくりも必要になります。

 

今すぐ求められるわけではないかもしれません。しかし、物流業界全体がデータ連携とリアルタイム管理を前提とした仕組みへ移行するなかで、こうした対応は徐々に必須条件になっていくはずです。

こうしたIT化への投資や業務改革は、自社単独では負担が大きいケースも少なくありません。その場合は、同じ課題意識を持つ企業との協業や、すでに体制を構築している企業との提携を検討することも有効な選択肢となるでしょう。Amazonの物流参入は、一企業による新サービスの発表にとどまりません。物流業界のプラットフォーム化が加速するなかで、運送会社にはこれまで以上にデジタル対応力や業務標準化が求められるようになります。その変化にどう向き合うかによって、今後の競争力や企業価値にも少なからず差が生まれてくるのではないでしょうか。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

上野 空良

京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、2024年に新卒でGAテクノロジーズに入社、スピカコンサルティングに参画。運行管理者資格保有。

担当者:上野 空良部署:物流業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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