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業界別M&A
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2025年2月製造業のM&Aまとめ

目次

【DMG森精機、宮脇機械プラントを買収── MX戦略を加速する製造業M&A】

2025年2月に製造業で注目を集めたM&Aの一例として、DMG森精機が宮脇機械プラントを買収した事例があります。

DMG森精機は言わずと知れた工作機械の大手メーカーです。2025年2月28日、そのDMG森精機株式会社は宮脇機械プラント株式会社の買収を発表しました。​この買収の主な目的は、DMG森精機が推進する「MX(マシニング・トランスフォーメーション)」戦略の強化にあります。​MX戦略とは、工程集約と自動化を通じて顧客の生産効率を向上させ、経営資源の最適化や環境負荷の軽減を目指す取り組みです。 ​

宮脇機械プラントは、機械加工システムのエンジニアリングと販売を行っており、特に優秀なアプリケーションエンジニアやメンテナンス、リペア、オーバーホールエンジニアを多数抱えています。​これらの人材をグループ内に取り込むことで、DMG森精機はMX戦略の推進力を高め、より高い成長を実現する目論見があります。

【注目を集めるニデックの牧野フライス製作所へのTOB】

工作機械業界においては、ニデックによる工作機械メーカーの連続買収による業界再編加速の動きも見逃せません。2024年12月27日、ニデックが牧野フライス製作所に対して株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表しました。この買収は、ニデックが工作機械業界での地位を確立し、現在トップを誇るDMG森精機に迫るための重要な戦略とされています。買収価格は1株あたり1万1000円で、26日の牧野フライス株の終値(7750円)に対する上乗せ幅(プレミアム)は42%となりました。

ニデックは2021年以降、旧三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)など4社を買収し、現在の事業規模は1200億円に育っています。2035年を目途に売上高1兆円に伸ばし、世界屈指の総合工作機械メーカーとなることを標榜しています。

今回、ニデックが牧野フライスの買収に踏み切った背景には、牧野フライス製作所のブランドや技術開発力(放電加工機、高精度マシニングセンタなど)の獲得があることは言うまでもありません。さらに、ニデックは低PBR(株価純資産倍率)企業をターゲットにしたM&A戦略を進めていることも見逃せません。東京証券取引所は、2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等について」を発表しました。PBRが1倍未満の企業に対して改善を求める指摘がなされており、投資家もこの流れを注視しています。

「PBRが1を割る」ということは、理論上、株式価値よりも解散価値の方が高いことを意味します。つまり、今後事業継続して得られる価値よりも会社が解散した場合に株主に分配される金額が高いことと同義であり、現状では今後の成長に対して市場の評価・期待が低いことの表れとも言えます。

2024年12月26日時点での牧野フライス製作所のPBRは0.84倍と1を下回る水準にありました。このような状況の中、牧野フライス製作所は買収の対象として非常に魅力的に映ったと考えられます。

【製造業でも加速していくTOB】

グローバルな競争環境が厳しさを増し、DXや脱炭素化など新たな市場テーマが躍進する中、従来型のビジネスモデル、あるいは自前主義のみでは成長の限界が見え始めています。

同意なき買収(TOB)が増えることは、いくつかの示唆を与えます。
第一に、企業が自社の防衛策や株主構成の見直し、日頃からのIR強化による投資家理解の醸成など、平時のガバナンス体制整備の重要性が高まっていることです。
第二に、M&Aにおいては、単なる価格交渉ではなく、買収後統合(PMI)の青写真を明確化し、サプライチェーンや顧客関係など現場レベルでのシナジー創出計画を提示することが利害関係者の理解を得る上で不可欠であることです。これは上場企業に限らず、中堅・中小製造業のM&Aにおいても同様です。今後も経営資源の再配置やイノベーション創出を目的としたTOBは増加するでしょう。

しかし、こうした変化の潮流の中で、今後は買手・売手という上下関係ではなく、双方がより戦略的で長期的な企業価値向上を実現するため、公正で透明性の高いM&Aが求められていくと考えられます。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

藤川 祐喜

大阪府出身。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、2010年に新卒でキーエンスに入社。中小企業から上場企業まで工場の生産性向上やIoTシステム導入支援などに貢献。その後、日本M&Aセンターへ入社し、業界再編部において製造業専門チームを立ち上げ。2023年スピカコンサルティングに参画。

担当者:藤川 祐喜部署:製造業支援部役職:執行役員

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