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2025年11月食品業界M&Aまとめ

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この記事を見るとわかること

  • 2025年11月における物流業界の主要M&A
  • 高齢者市場における課題を解決するためのM&A戦略
  • 時代背景にあった商品戦略の重要性

目次

2025年11月の食品業界のM&A件数は16組(公表ベース)

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで16件となり、1~11月の累計件数は164件となりました。なお、前年同月は10件(前年1~11月の累計件数は124件)となっており、累計で前年対比+32%の増加となります。2025年はほぼ確実に前年の件数を大きく超えてくるといえるでしょう。

今月の代表的な公表M&A一覧

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2025年11月4日

ひらのや[沖縄県]

(株)岸本組[北海道]

事業譲渡

「ひらのや」の歴史、伝統の味を守りながら、現代的な視点や新しい発想を融合させ、新たな食文化を提供するため。

2025年11月4日

クックデリ(株)[大阪府]

ヒューリック(株)[東証3003・東京都]

51%株式譲渡

高齢者施設の人材不足を、クックデリの提供する「完調食」により解消するため。

2025年11月4日

「稚内回転寿司 花いちもんめ」(有)タイタス[北海道]

(株)札幌海鮮丸[北海道]

事業譲渡

ノウハウ共有を通じてシナジーを高め、商圏拡大と新規顧客の獲得を推進し、北海道発の“うまい”を全国へ届けるため。

2025年11月4日

(株)しまとうふ[沖縄県]

(株)西原商会[鹿児島県]

株式譲渡

商品ラインナップを拡大することにより、事業規模の拡大を図るため。

202511月10日

Hoàng Anh Flavors and Food Ingredients Joint Stock Company[ベトナム]

長谷川香料(株)[東証4958・東京都]

株式譲渡

香料事業とのシナジー創出および顧客重複が少ないため販路拡大が可能であり、東南アジアへの浸透の推進を図るため。

2025年11月12日

ラーメンなかむら[アメリカ・ハワイ]

まるやすホールディングス(株)[三重]

事業譲渡

「ラーメンなかむら」を発展させるとともに、海外展開のハブを獲得するため。

2025年11月14日

(株)エムピーキッチンホールディングス[東京都]

(株)魁力屋[東証5891・京都府]

株式譲渡

つけ麺業態の拡大に加え、サプライチェーンや同業界による事業の管理プラットフォーム化などのシナジー創出により、グループ全体の価値を向上させるため。

2025年11月18日

(株)KEING CORPORATION[アメリカ]

(株)OICグループ[神奈川県]

株式譲渡

アメリカへの事業展開を通じ、外食事業にとどまらない「日本食」を世界へ届け、一番「おいしい日本食」を提供する会社として確立するため。

202511月19日

Burger King Japan Holdings Co. Ltd.(Affinity Equity Partners)[香港]

Private Equity at Goldman Sachs Alternatives[アメリカ]

株式譲渡

これまでの海外での外食産業への投資実績や潤沢な資金的後方支援をもとに、日本国内のバーガーキング事業の価値のさらなる向上を図るため。

2025年11月25日

Silbury Marketing Ltd[イギリス]

カゴメ(株)[東証/名証2811・愛知県]

株式譲渡

欧州におけるマーケティング、開発、生産、販売の各機能を効果的に連携できる体制を構築するため。

2025年11月25日

(株)大寿[神奈川県]

(株)エムアイフードスタイル[東京都]

事業譲渡

「OONOYA」「大野屋商店」の魅力的な商品をエムアイフードスタイルが運営する店舗で展開することにより、企業価値の向上を図るため。

2025年11月25日

(株)後藤酒造店[山形県]

KURAND(株)[東京都]

株式譲渡

後藤酒造店が長年培ってきた伝統および技術を未来へつなぐことにより、地域に根ざした酒造文化を継承していくため。

2025年11月25日

「飛騨高山麦酒」(有限会社農業法人飛騨高山麦酒)(非上場・岐阜)

株式会社CRAFTED JAPAN(非上場・東京)

事業譲渡

「飛騨高山麦酒」の技術と味を未来に受け継ぐことで、地域におけるCRAFTED食材の価値を多くの人に届けるため。

2025年11月26日

駒越食品株式会社(非上場・静岡)

いなば食品株式会社(非上場・静岡)

51%株式譲渡

いなば食品グループにおける缶詰販売事業のさらなる強化を図るため。

2025年11月27日

有限会社セイコーポレーション(非上場・宮城県)

ホリイフードサービス株式会社(3077・茨城)

株式譲渡

ホリイフードサービスが展開する1都9県における新たな業態構成により、食事需要への強化と郊外型のリモデル等、今後の収益力や競争力の向上を図るため。

2025年11月28日

株式会社ヤンバル琉宮水産(株式会社ヒガシマル連結子会社)(非上場・沖縄)

旭物産株式会社(非上場・徳島)

株式譲渡

旭物産株式会社が考えるシナジー効果や養殖経営のノウハウが、ヤンバル琉宮水産の企業価値の向上および水産業界の発展につながると考えたため。

<2025年11月の食品業界公表M&A>

ヒューリック株式会社(以下、ヒューリック)による、クックデリ株式会社(以下、クックデリ)の株式取得は、高齢化社会の課題と巨大な市場機会に対応する戦略的な一手として注目されます。

本件は、ヒューリックが重点領域である高齢者・健康分野の事業を強化するため、クックデリの提供する業界トップクラスの高齢者向け「完全調理済み食品」(完調品)事業の株式を51%取得したものです。

 昨今、日本では高齢化が盛んに叫ばれる中、高齢者施設における人手不足が深刻化しています。クックデリが提供する完調品は、盛り付けや解凍のみで提供が可能なため、ヒューリックが展開する高齢者施設の人的負担の軽減や人手不足の解消に貢献することが見込まれます。

人口の3分の1が高齢者となる中で、高齢者向け事業の市場規模は、2025年時点で100兆円を超え、2040年度には115兆円へ拡大する見込みです。人口減少の中、高齢者向け産業は日本経済を支える産業として、デジタル技術を活用したサービスや人手に頼らないサービスをはじめ、今後も多様なビジネスチャンスが広がると予想されます。 

本件のM&Aは、巨大な高齢者市場の成長機会を捉えつつ、深刻化する人手不足という社会課題をビジネスで解決するモデルを示しています。本件のように、今後もM&Aが既存ビジネスの安定的成長と社会構造の変化への適応を両立させる有力な選択肢として活用されていくでしょう。

業界のニュース

2025年も終盤を迎え、街路樹のイルミネーションや、デパートのショーウィンドウがきらめき始めると、誰もがクリスマスムードに心躍らせます。クリスマスの市場規模は非常に大きく7,000億~1兆円ほどあるとされています。プレゼントなどを含むため単純に食品業界としての市場規模が大きいとは断定できませんが、その他の代表的な季節イベントであるハロウィンが約1,600億円、バレンタインデーが約1,000億円と比較して、期間中に多くの金額が動く魅力的なマーケットであることは間違いありません。

クリスマス商戦を勝ち抜くためには、顧客の理解が重要です。2023年にアウトドア総合情報サイトの『TAKIBI』による調査によると、全体の約30%が「家で過ごす」と回答し、「家族で出かける」が約15%、「恋人と出かける」が約10%であり、その他「友人と出かける」「一人で出かける」が合わせて約10%となっています。それぞれニーズが異なるため、自社のターゲットを定めたうえでの戦略が必要となります。また、今年は物価高の影響もあり、外食ではなく家で過ごす割合が例年より上昇する可能性があります。そのため、家庭での調理の手間が減るようなテイクアウト商品に力を入れるなど、時代背景にあった商品展開を考えることも重要となるでしょう。

まとめ

ヒューリックのM&Aが示すように、企業は社会構造の変化を成長の機会と捉え、人手不足という課題を完調という技術で解決する柔軟な経営判断が求められています。また、クリスマス市場の例が示すように、消費者の行動が物価高やライフスタイルの変化によって変化する中、企業は顧客のニーズに細やかに対応できる柔軟な商品戦略が必要です。既存のビジネスモデルや提供価値を固持せず、外部環境の変化に迅速かつ柔軟に適応していく能力こそが、企業と市場が安定的に成長し、新たな価値を創造していくための鍵となります。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

吉原 圭吾

埼玉県出身。実家は埼玉県にて結婚式場・葬儀場を営む。一橋大学商学部卒業後、2025年に新卒でスピカコンサルティングに参画。

担当者:吉原 圭吾部署:食品業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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