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2026年1月物流業界M&Aまとめ

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2026年1月における物流業界の主なM&Aを解説します。今月は、川西倉庫株式会社が推進するDX投資・M&A戦略や薬局の再編が示す物流業界の未来などについても解説しています。

この記事を見るとわかること

  • 2026年1月における物流業界の主要M&A
  • 川西倉庫株式会社が推進するDX投資・M&A戦略
  • 薬局の再編が示す物流業界の未来

目次

1月の代表的な公表M&A一覧

業界全体のM&A件数が過去最大となった2025年を経て、2026年に入って最初の1か月においても、物流業界では多くのM&Aが見られています。

近年の特徴としては、M&Aの当事者が運送会社や倉庫会社にとどまらず、異業種や投資ファンドなど、多様なプレイヤーに広がっている点、また株式取得、事業譲渡、会社分割など、採用されるスキームが多様化している点が挙げられます。

大手物流企業においても、事業の切り離しを通じて経営資源の再配置や最適化を図る動きが進んでおり、「すべてを自前で抱える」経営から、「選択と集中」を前提とした経営への転換が加速しています。

業界再編が進行する局面では、他業種からの参入やファンドマネーの流入が増える傾向があります。実際に、業界再編が先行して進んできた調剤薬局業界では、過渡期において大手同士の合従連衡が進むとともに、イオングループの参入やドラッグストアチェーンによる調剤事業への本格参入など、異業種プレイヤーの動きが活発化しました。

物流業界においても、同様の構図が見られ始めており、業界再編が本格的に加速する局面に入っていると考えられます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年1月1日

立花運送(株)[北海道]

    (有)石原運輸[北海道]

吸収合併

トナミグループ子会社による吸収合併

2026年1月20日

(株)ケイセブン[東京都]

栗林商船(株)[東証9171・東京都]

株式交換/株式追加取得/完全子会社化

完全子会社化による事業戦略や投資判断などの意思決定の迅速化

三陸運輸(株)[宮城県]

2026年1月28日

Vertex Engineers Private Limited [インド]

鴻池運輸(株)[東証9355・大阪府]

株式取得

需要増と高成長が想定されるインド市場での業容拡大・深化

2026年1月30日

(株)伊藤園ロジテム[埼玉県]

(株)伊藤園[東証2593・埼玉県]

株式取得

トーモクの連結子会社であった伊藤園ロジテムを伊藤園に譲渡

2026年1月30日

(株)日新 [神奈川県]

(株)BCJー98[東京都]

株式交換

一部不動産事業を除く全事業を親会社のBCJ-98(ベインキャピタルのSPC)に譲渡

2026年1月30日

(株)エムティーサービス[大阪府]

川西倉庫(株)[東証9322・兵庫県]

株式取得

中期経営計画『Vision2027事業領域の拡大』に掲げる「リコンストラクション」に基づく運送事業の強化

2026年1月30日

大阪倉庫(株)[大阪府]

(株)シーアールイー[東京都]

株式取得

NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社の倉庫事業を運営する子会社の切り離し

<2026年1月の物流業界 代表的な公表M&A>

【Pick Up M&A】株式会社エムティーサービス×  川西倉庫株式会社

2026年1月30日、川西倉庫株式会社(9322)は、貨物運送事業および荷役作業請負、倉庫業を営む株式会社エムティーサービスを子会社化したと発表しました。本件は、同社の中期経営計画「Vision2027 事業領域の拡大」に基づくM&Aであり、倉庫事業と運送事業の一体化を通じた競争力強化を目的としたものです。

エムティーサービスは、3期連続で増収を達成し、直近期においても約3,000万円の営業利益を計上するなど、業績面では堅調に推移していました。いわゆる「業績不振による行き詰まりからの売却」ではなく、事業が順調に推移している中での意思決定であった点が、本件の特徴といえます。

それでも同社がM&Aを選択した背景には、物流業界を取り巻く構造的な変化があります。今後の物流業界においては、「人を増やすことで成長する」モデルから、「人を減らしても回る仕組みを構築できるか」が問われる時代に入っています。労働力不足が常態化する中、従来型の人海戦術を前提とした成長には限界が見え始めています。

川西倉庫は、こうした環境変化を見据え、DXや省人化への投資を明確に成長戦略の中核に据えています。2022~2030年度において、次世代物流倉庫に65億円、DX投資に37.4億円を投じる計画を公表しており、すでに現場レベルで具体的な施策を実装しています。

例えば倉庫現場では、

  • コンテナで入庫した貨物を、作業員が手作業で一つずつ荷下ろしするのではなく、デバンニングロボット(荷下ろしロボット)を活用し、パレット化を効率化
  • 入庫貨物にRFIDタグを付与し、倉庫内のリーダーによって位置情報を常時把握することで、貨物探索作業を削減
  • コンテナから垂直搬送機、保管エリアまでをマテハンシステムで連結し、フォークリフトや人の移動を最小限に抑える動線設計
  • トラックの入出庫を予約制とし、受付から荷役開始までの時間を可視化することで、ドライバーの長時間待機を前提としない運用

といった形で、「人の経験や頑張りに依存しない物流オペレーション」への転換を進めています。これらの取り組みは、国土交通省の「物流施設におけるDX推進実証事業」にも採択されています。

一方で、こうしたDX投資を物流企業が単独で進める場合、

  • 初期投資額の大きさ
  • システム選定や導入に関するノウハウ不足
  • 投資回収までに要する時間

といったハードルが立ちはだかります。

エムティーサービスにとって、川西倉庫グループに参画することは、自社単独では難しいDX投資や業務高度化を、一気に現実のものとする合理的な選択であったと考えられます。加えて、グループ内でのDXノウハウの水平展開により、現場の省人化や従業員負担の軽減、中長期的な収益性向上も期待できます。

また、今年1月に施行された改正下請法(取適法)では、「不当な経済上の利益の提供要請」として、無償での荷役作業の禁止が改めて明確化されました。今後は、人手でのデバンニングが前提となっている、荷待ち・荷役時間が長い、作業効率が属人的である、といった倉庫・物流拠点は、コスト増と荷主離れの双方に直面する可能性があります。

DX投資や省人化投資は、どうしても短期的な利益に直結しにくいため、後回しにされがちです。しかし、労働力不足や法規制の強化、荷主からの高度化要求が同時に進む現在の物流業界においては、中長期的な視点でこれらの投資を実行できるかどうかが、将来の競争力を左右する重要な分岐点となっています。

業界のニュース

薬局の再編が示す物流業界の未来

2026年に入り、M&A件数の増加に加えて、スキームの多様化やプレイヤーの広範化が見られる物流業界ですが、その背景には、業界構造そのものが大きな転換点を迎えているという事情があります。

物流業界の再編を考えるうえで参考となるのが、すでに再編が先行して進んできた調剤薬局業界の動きです。調剤薬局業界は、事業者数の多さや制度設計の影響を強く受ける点など、物流業界と構造的に共通点が多く、おおよそ7年先行して業界再編が進行している業界であるといわれています。

調剤薬局は全国に多数の事業者・店舗が存在し、その数は物流業界における運送会社・倉庫会社の数と近い水準にあります。また最大の共通点として、サービスの対価が市場原理ではなく、国によって決められている点が挙げられます。調剤薬局では診療報酬・調剤報酬が国によって定められており、2年に一度の改定によって、業界全体の収益構造が大きく変動してきました。

物流業界においても、近年導入が進む「標準原価」の考え方を踏まえると、将来的には運賃水準に国の関与がより強まっていく可能性があります。すなわち、調剤薬局業界と同様に、「お国が実質的に価格をコントロールする産業」へと近づいているともいえるでしょう。

調剤薬局業界では、社会保障費削減という国の大きな方針のもと、必要以上に増えた事業者数を整理・再編していく流れが、制度設計や報酬改定を通じて反映されてきました。その結果、業界再編が進み、大手グループが一定のシェアを占める構造へと移行しました。再編の過程では、大手同士の統合や、ドラッグストアチェーンなど異業種からの参入が相次ぎ、業界の勢力図が大きく塗り替えられています。

かつては、家族経営に近い小規模な薬局に対しても上場企業が積極的にM&Aを検討する時代がありましたが、現在では一定の店舗数や規模がなければ、良好な条件でのM&Aが成立しにくくなっています。同じ立地・同じ店舗であっても、報酬水準が高かった時代にグループインしたケースと、再編が進んだ後のケースとでは、評価に大きな差が生じている点も特徴的です。

こうした構造変化は、物流業界においてもすでに現実のものとなりつつあります。直近の事例として、ナカノ商会がヤマトホールディングスの資本参加を受けた件や、丸運がセンコーグループホールディングスの傘下に入った件は、物流業界の再編を象徴する動きといえるでしょう。いずれも、業績不振を背景とした救済型M&Aではなく、事業ポートフォリオの再構築や成長戦略の一環として実行されたものです。

これらの事例に共通しているのは、物流業界においてもすでに、「単独で成長を目指す時代」から「再編を前提に、どのグループに属するかを選ぶ時代」へと移行し始めている点です。

調剤薬局業界が辿ってきた再編のプロセスを踏まえると、物流業界においても、今後は主要プレイヤーを中心とした統合や、異業種からの参入が一段と増えていく可能性があります。再編が本格化する前にどの立ち位置を選ぶのかが、将来の企業価値や選択肢の幅を大きく左右する局面に入っているといえるでしょう。

まとめ

こうした局面において重要なのは、再編の波に「巻き込まれる側」になるのではなく、自社が業界の中でどの立ち位置にあるのかを冷静に把握することです。単独での成長を目指すべきフェーズにあるのか、パートナーを得ることで成長を加速させる段階にあるのか、あるいは次の世代に事業をつなぐ選択肢を検討すべき局面にあるのかによって、取るべき戦略は大きく異なります。まずは自社の現状と将来像を整理し、業界再編の中でどのポジションを目指すのかを見極めることが、これからの物流業界を生き抜くための第一歩です。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

上野 空良

京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、2024年に新卒でGAテクノロジーズに入社、スピカコンサルティングに参画。運行管理者資格保有。

担当者:上野 空良部署:物流業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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