2025年9月のエネルギー業界M&Aまとめ
9月の代表的な公表M&A一覧
2025年9月のLPガス業界を取り巻くM&A動向は、業界の特性上、公表件数自体は少数となりますが、引き続き卸元による販売事業者に対する商権譲受の動きも継続されており、業界全体を通したM&Aに対する温度感は高い水準で維持されております。
公表日 | 譲渡企業(売り手企業) | 譲受企業(買い手企業) | 形式 |
|---|---|---|---|
2025年9月3日 | 常盤都市ガス株式会社(未上場・福島県) | 株式会社サイサン(未上場・埼玉県) | 株式譲渡 |
<2025年9月に公表されたLPガス業界におけるM&A事例>
2017年4月の都市ガス自由化から業界再編が進み、昨今は広域大手LPガス事業者による都市ガス事業者のM&Aによる譲受も散見されるようになりました。
上記のM&Aによって、Gas Oneグループでは福島県いわき市内に過去4社あった都市ガス事業者のうち、3社(常磐共同ガス株式会社、いわきガス株式会社(2015年6月に常磐共同ガス株式会社と経営統合)、常磐都市ガス株式会社)がグループとなりました。
「地域エネルギー供給の責務」という販売事業者が持つ至上命題は、エネルギーの種類や扱い方が変わりながらも、姿形を変えて継承されていく流れが継続しております。
M&A巧者の連続的成長の要因
上記事例にて取り上げたGas Oneグループをはじめ、LPガス業界ではM&Aによる譲り受けによって、連続的な成長を実現している企業が多数存在します。異業種と比較して営業権(=のれん代)が非常に高いと言われるLPガス業界において、彼らが連続的にM&Aを実行する・できる要因は大きく3点あります。
1点目は、過去に譲り受けた販売事業者の現状をステークホルダー(顧客、取引先、近隣事業者 等)に高く評価され、より地域に愛される地位を確立していることです。譲渡を検討するオーナー様が注視するポイントのひとつは、実際に過去に譲渡された販売事業者の現状です(口コミとも言えるでしょう。)。連続的なM&Aを実現している事業者は、類に漏れず譲り受け後の近隣事業者との関係構築や、顧客対応に細心の注意を払い、より良い販売事業者としての姿を目指し、実現しております。とはいえ譲受企業ごとにカラーは存在しますので、どのような相手が自社マッチするかはM&Aコンサルタントと二人三脚で深く考えていく必要があります。
2点目は、高い営業権の対価以上に、グループ全体のPL伸長の根源はやはり顧客数であると認識していることです。大前提、LPガス事業は同一商材をすべての販売事業者が自由価額で取り扱い、どこに供給をお願いするかはすべて顧客主導で決まります。お客様に選ばれないことには始まらないビジネスモデルにおいて、顧客の数を追求することは必須であり、営業権が高いと言われるなかでも、投資するならM&Aという思考は、回収懸念を考慮したうえでも十分に合点がいくと言えるでしょう。
3点目は少し番外編になりますが、譲受企業が譲渡企業の顧客のみを譲り受ける(商権買収)場合は、営業権の償却が可能であることです。一般的にM&A=リスクの高い投資、という考え方もあるかと思いますが、高利益体質の企業にとっては、「どうせ税金払うのであればM&Aの資金として使おう」という思考が働きます。業界一般として株式譲渡よりも事業譲渡(商権買収)の認知が高まった要因のひとつと言えるでしょう。
上記のように連続的なM&Aを実現している事業者には、必ず理由と意図が存在します。譲渡、譲り受けを問わず、自社に最適なM&A戦略の立案・実行に向けてM&Aコンサルタントを活用することは、経営の選択肢として検討に値するとLPガス業界の歴史は物語っていると言えるでしょう。
繁忙期を前に、販売事業者に求められる存在意義
四季も移り変わり、あっという間に寒空に包まれる季節となりました。夏場と比較し圧倒的に日常業務が増えるなかで、日々の業務に加え、並行して経営の俯瞰的な目線を持ってみてはいかがでしょうか。
販売事業者のやるべきこと、守るべきルールは日々増え、業界は成熟期を迎えております。自社成長に向けた営業戦略や財務戦略、また地域連携に加えて、会社の在り方についても、忙しいタイミングだからこそ考える意味があると思います。
販売事業者はLPガスという画期的なエネルギーが普及して半世紀を超えて、地域の「温かい」を守り、お客様へ届け続けている、なくてはならない存在です。都市ガスの普及や電化といった、業界の変化の波を越えながら、今後も地域におけるエネルギー供給の責務は継続します。
では、どのようにお客様の「温かい」を半永久的に守り続けていくか。その選択肢のひとつがM&A(=資本政策)です。
スピカコンサルティングが提供する「M&A支援」「バリューアップコンサルティング」は、オーナー様を取り巻く近い将来の見える化や、お客様の「温かい」を守るための選択肢を整理するためのひとつの手段です。繁忙期直前で最も自社の現状と向き合うタイミングだからこそ、自社の輝く未来と、お客様の笑顔を想像し、走りながらも視野を拡げてみてはいかがでしょうか。
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東京都出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、2022年に新卒で中堅M&A仲介企業に入社。2023年より株式会社スピカコンサルティングに参画。