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2026年9月の食品業界M&Aまとめ

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2026年9月の食品業界におけるM&A公表件数は14件となり、1〜9月の累計件数は132件と前年と同水準のペースで推移しています。

今月の注目の動きとして、人気麺類チェーンである「すぱじろう」や「つるとんたん」の事業譲渡が挙げられます。商品力と認知度を持つ専門ブランドが、大手グループの経営基盤や店舗開発網を活用し、新たな成長フェーズへ進む事例と言えます。また業界動向としては、湖池屋による「自社IP(知的財産)戦略」の取り組みが注目されており、キャラクターの価値再定義やファンコミュニティを通じた新たなブランドエンゲージメントの構築が進められています。

本記事では、9月の主要事例を振り返りながら、和風専門店のスケール化や脱・価格競争に向けたマーケティング手法について解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年9月の食品業界主要M&A一覧: 累計132件となった市場動向と今月の14件の概要
  • 【Pick Up】「すぱじろう」と「つるとんたん」の買収
  • 【業界ニュース】湖池屋に見る自社IP戦略: キャラクターの価値再定義と「推し活」需要の獲得

目次

9月の代表的な公表M&A一覧

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで14件、2026年1-9月の累計件数は132件(前年同期間は134件)となっており、前年同様のペースで推移しているといえるでしょう。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年9月2日

(有)にんじんハウス[東京都]

(株)ひらまつ[東証2764・東京都]

株式譲渡

高級価格帯の顧客基盤と事業領域の拡大。

2026年9月2日

(有)萬空[北海道]

(株)マルエイフードテック[千葉県]

株式譲渡

道内での水産物加工・販売体制の強化。

2026年9月2日

倖生工業(株)[千葉県]

(株)ヨシムラ・フード・ホールディングス[東証2884・東京]

株式譲渡

厨房機器メーカー獲得による製品供給力強化。

2026年9月7日

安曇野食工房合同会社[長野県]

(株)ズクトチエ[長野県]

事業譲渡

長野県内における加工肉事業の継承と強化。

2026年9月8日

(株)工藤羊肉店[北海道]

(株)ペンギン[北海道]

株式譲渡

飲食・食品事業のシナジー創出とエリア拡大。

2026年9月9日

(株)萩見綜合食品センター[北海道]

生活協同組合コープさっぽろ[北海道]

事業譲渡

稚内エリアの物流網と店舗ネットワーク補強。

2026年9月9日

すぱじろうジャパン(株)[東京都]

(株)HUGE HOLDINGS[東京都]

株式譲渡

店舗数の拡大とブランドポートフォリオの拡充。

2026年9月14日

(株)HASSIN(大阪府)

クレアシオン・キャピタル(株)[東京都]

株式譲渡

ファンド主導による経営基盤の強化。

2026年9月15日

(株)海帆が運営するしんぱち食堂浅草店

(株)リレイト[東京都]

事業譲渡

店舗展開の効率化とノウハウの獲得。

2026年9月17日

(株)ケー・エキスプレスが営む「つるとんたん」事業

(株)サンマルクホールディングス[東証3395・京都府]

事業譲渡

業態ポートフォリオの拡充。

2026年9月24日

花春酒造(株)[福島県]

(株)幸楽苑[東証7554・福島県]

株式譲渡

地域酒蔵の継承と地産地消・商品開発力強化。 

2026年9月29日

(株)首里とうふ[沖縄県]

(株)カヤック[東証3904・神奈川県]

株式譲渡

沖縄伝統食材の継承と地域活性化事業の展開。

2026年9月29日

からたまや(株)[京都府]

三昌物産(株)[三重県]

株式譲渡

鶏肉・惣菜加工事業の拡充とチェーン展開強化 。

2026年9月30日

(株)セントラルフーズ[東京都]

JA全農ミートフーズ(株)[東京都]

株式譲渡

ノウハウの共有によるさらなる事業の発展

<2026年9月の食品業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】「すぱじろう」と「つるとんたん」に見る有名ブランドの成長戦略

2026年9月、注目の麺業態で2社の有名ブランドの譲渡が相次いで発表されました。

1つは、2026年9月9日に公表されたすぱじろうジャパン株式会社(以下、すぱじろう)の株式会社HUGE HOLDINGS(以下、HUGE HD)への株式譲渡です。

そして2つ目は、9月17日に公表された、株式会社サンマルクホールディングス(以下、サンマルクHD)による、株式会社ケー・エキスプレスが営む「つるとんたん」事業の事業譲渡です。

「すぱじろう」は、スパゲッティ専門店として高い認知度を誇り、老若男女問わず幅広い顧客から根強い支持を獲得してきました。一方、譲受側であるHUGE HDは「リゴレット」などを展開し、圧倒的な空間づくりとクオリティの高い接客・料理で知られる外食企業です。日常使いの専門業態である「すぱじろう」をグループに迎え入れることで、HUGE HDはポートフォリオをさらに強化し、幅広い客層へのアプローチが可能となります。

また、「つるとんたん」はカトープレジャーグループのもとで、大きな器と豊富なメニュー、高いデザイン性の空間演出により、うどん業態でありながら高級感のある特別な体験価値を提供してきました。国内直営13店舗・海外FC2店舗などを展開し、インバウンド客からも絶大な人気を誇ります。譲受側のサンマルクHDは「サンマルクカフェ」や「鎌倉パスタ」など全国に約870店舗超を展開する一大外食チェーンです。 

今回の2つのM&Aはいずれも、強い外食ブランドが大手グループのインフラやノウハウを活用することで、次なる成長フェーズへ向かう構造となっております。

「すぱじろう」の取り組みにおいては、長年愛されてきたスパゲッティの商品力や親しみやすいブランド特性を活かしつつ、HDが培ってきた店舗開発力やマーケティング、洗練された店舗運営ノウハウを掛け合わせることで、既存店舗の価値向上と新たな立地への積極的な店舗展開が期待されています。

一方、サンマルクHDによる「つるとんたん」事業の承継では、つるとんたんが持つ「高いブランド価値や商品力」はそのまま維持しつつ、サンマルクホールディングスが誇る全国の店舗開発ネットワークやチェーンオペレーション、物流網を活用した原材料費の低減、さらには同社がすでに出店しているASEAN地域などへの海外展開を加速させることが掲げられています。

昨今の外食業界全体の課題である、「人材不足」や「原材料費の高騰」に対し、グループのスケールメリットや運営基盤を組み合わせることで、現場の負担を抑えつつ利益率を高め、出店スピードを加速させることが期待されます。

日本独自の進化を遂げた「ジャパニーズスパゲッティ」と「うどん」という分野で、圧倒的な存在感を持つ両ブランド。日本の『おいしい』や『質の高い食体験』をより多くの方々に届けていくという戦略的意義を持つ今回のM&Aが、今後どのような躍進を見せるのか、今後の外食業界において非常に楽しみな動きといえるでしょう。

業界のニュース

湖池屋が切り拓く「IP戦略」〜“商品”から“推し(情緒)”へと進化する食品マーケティング〜

原材料費の高騰や価格転嫁をめぐる議論が続くなか、食品業界におけるマーケティングにおいてIPが再注目されています。今回は、湖池屋による「自社IP(知的財産)戦略」の例をもとに解説をしていきます。

同社は「ポリンキー」の『スリーポリンキーズ』や「カラムーチョ」の『ヒーおばあちゃん』など、長年親しまれてきた個性的キャラクターの価値を再定義し、「いっぱい食べて、いっぱい遊ぼう」をコンセプトに、食品企業としての軸はぶらさずにファンエンゲージメントを高め、自社ECへの集客やブランド価値向上につなげる取り組みを開始しました。 

実は、湖池屋は2025年12月にマーケティング、広報、EC、デザインなど多部署から集まる横断チーム「キャラクタービジネスプロジェクト」を発足させていました。 その背景にあったのが、昨今の「推し活ブーム」や「平成リバイバル」といった消費トレンドです。昔からあるロングセラーキャラクターが若年層を中心に、”新しくて可愛い”と再評価され、異業種からのコラボ打診が増加したことで自社IPのポテンシャルを確信。過去のCMソングや映像の現代風リバイバルも相まって、新たな顧客コミュニケーションの領域が開かれました。 

同社は2026年2月にファンコミュニティ「湖池屋GOGO!ランド」を開設し、8月には「湖池屋キャラクターズ」を立ち上げるなどデジタル接点を急速に強化しました。注目すべきは、その反響の大きさと数字への貢献です。3月に受注販売した「スリーポリンキーズ」のマスコットや、6月のシール企画はいずれも即完売や早期目標達成を記録。一連のキャラクター連動グッズの展開により、従来のスーパー・コンビニなどの店頭買いでは接点が持ちにくかった若年層を中心とする新規ユーザーが自社ECサイトへ多数流入しました。

食品メーカーが自社IPやキャラクターに投資する妥当性は、近年の消費者データや市場動向からも明確に裏付けられています。 

矢野経済研究所の調査によると、国内のキャラクタービジネス市場規模は2兆8,767億円(前年度比103.2%)に達しています。さらに、野村総合研究所の調査によれば国内の推し活人口は約2,600万人にのぼり、推し活層の年間平均消費額は約9万〜10万円と、一般的な趣味消費の約3〜4倍という高い購買力を示しています。また、通常のお菓子や食品の販売では数%〜10%前後にとどまる利益率に対し、キャラクターライセンスやオリジナルグッズ事業は30%〜50%超と極めて高収益であるようです(各社決算資料より)。単なる「価格」や「味」の比較から脱却し、キャラクターという付加価値を加えることで、安さを売りにするプライベートブランド商品などとの価格競争を避け、他社が真似しにくい強いブランド価値を築くことができると考えられます。

原材料費やエネルギー費の高騰により、食品メーカーはどうしても「価格転嫁」や「単価アップ」の局面に立たされます。キャラクター活用の本質は、グッズの売上だけではありません。 約2.9兆円の巨大な市場と、年間約10万円を「推し」に使う2,600万人のファンが支えているからこそ、ただの安売り合戦から抜け出し、選ばれ続けるブランドになるための強力な武器になり得ることがデータが示しています。

「キャラクターを通じて心とおなかを満たす」という独自の体験価値を提供し、「価格で選ばれる商品」から「愛着で選ばれるブランド」へとシフトさせる同社のIP戦略は、今後の食品業界における脱・価格競争の新たなロールモデルとして非常に楽しみな動きと言えるでしょう。 

まとめ

9月のM&Aでは、「すぱじろう」や「つるとんたん」といった、確固たるブランド力と商品力を持つ和風麺専門店の譲渡事例をご紹介させていただきました。昨今、原材料費の高騰や人手不足といった課題に対し、単独での運営に限界を感じる前に、大手グループと手を組むことは、ブランドを次なる成長フェーズへと引き上げる極めて戦略的な選択になっています。コスト増ではありますがインバウンド需要の拡大などチャンスもあり、新たな挑戦をするための機会創造にM&Aが繋がっているように思います。来年4月に控えている消費減税をはじめ、外食産業を取り巻く環境が刻々と変化する今だからこそ、自社の強みを最大限に活かせる「最適なパートナーとのM&A」を活用し企業価値を高めていくことが、今後の外食・食品企業にとって重要な成長の選択肢となっていくのではないでしょうか。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

吉原 圭吾

埼玉県出身。実家は埼玉県にて結婚式場・葬儀場を営む。一橋大学商学部卒業後、2025年に新卒でスピカコンサルティングに参画。

担当者:吉原 圭吾部署:食品業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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