業界別!24年12月〜25年2月の主なM&A<製造業編>
24年12月〜25年2月の主なM&Aニュース
公表日 | 譲渡企業(売り手企業) | 譲受企業(買い手企業) | 形式 |
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2024年12月27日 | 株式会社牧野フライス製作所 | ニデック株式会社 | 株式譲渡 (TOB) |
2025年1月24日 | 株式会社エイチアンドエフ | 株式会社アマダ | 株式譲渡 |
2025年1月31日 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 日本製鉄株式会社 | 株式譲渡 (TOB) |
2025年2月28日 | 宮脇機械プラント株式会社 | DMG森精機株式会社 | 株式譲渡+株式交換 |
技術革新や市場競争の激化に伴い、企業は競争力強化や新市場への参入を目的としてM&Aを活用しています。
特に、工作機械メーカーによるM&Aの動きが加速している点が注目されます。アマダによるエイチアンドエフの買収、DMG森精機による宮脇機械プラントの買収、そしてニデックによる牧野フライス製作所へのTOBなど、業界再編を促す重要な取引が相次ぎました。これらのM&Aは、技術力強化やグローバル市場への対応力向上といった目的を持ち、企業の競争力を高める手段として積極的に活用されています。また、企業の競争力を高める手段としてだけでなく、PBR1倍割れ企業に対するアクティビストからの圧力も高まる中で、今後はM&Aによる業界全体の構造変化がさらに進んでいくと予想されます。
代表的な事例「株式会社アマダ×株式会社エイチアンドエフ」
アマダは国内最大手の板金加工機メーカーであり、グループ企業のアマダプレスシステム(神奈川県伊勢原市)を通じてプレス機械事業も展開しています。ただし、これまでは主に中小型プレス機械を中心としていました。一方、エイチアンドエフは500トン級の大型から3000トンを超える超大型プレス機械の製造を得意としています。
今回のM&Aにより、両社は加工領域の相互補完を図り、商品ラインナップや顧客基盤の拡大を実現する狙いがあります。これにより、アマダは金属プレス加工のトータルコーディネートメーカーとしての地位を確立することが期待されています。このM&Aは、国内工作機械業界の再編が加速していることを示す象徴的な事例といえるでしょう。グローバル競争の激化や人手不足の深刻化により、企業はM&Aを通じて事業領域を拡大し、シナジー効果を追求する傾向を強めています。特に、アマダにとって超大型プレス機分野の強化は、顧客の多様なニーズに対応するために不可欠であり、エイチアンドエフの技術力とアマダグループの営業力が融合することで、国内市場のみならず海外市場への展開も加速する可能性が高いとみられます。
技術承継機構のIPOとM&A戦略
2025年2月5日、株式会社技術承継機構は東京証券取引所グロース市場に上場を果たしました。公募価格2,000円に対し、公開価格を35%上回る初値2,700円を記録。その後も株価は堅調に推移し、3月19日時点での終値は5,740円となり、時価総額は2倍以上の約500億円へと増加しています。
技術承継機構のビジネスモデルは、M&Aを活用して製造関連企業を譲り受け、譲り受けた企業の経営支援に取り組むというものです。2018年の創業以来、これまで10社の企業を譲り受けてきました。日本の中小製造業は、熟練技術者の高齢化や後継者不足といった課題を抱えていますが、優れた技術を持つ製造業複数社が一緒になることで強固な企業グループを構築し、一方で、ファンドとは異なり譲り受けた会社の再譲渡はしないという独自のポジショニングを取ることで注目を集めています。
同社の経営戦略は、
- 適切なバリュエーションでのM&Aを推進する
- 譲り受けた会社を独自のバリューアップマニュアル(NGP)で改善する
そこで新たに生まれたキャッシュフローでさらにM&Aを実行することで非連続的に成長するというものです。譲り受けた企業の独立性を維持しつつも、グループ会社間でベストプラクティスを共有するなどの取り組みは、これからの日本の中堅・中小製造業にとって新たなロールモデルとなる可能性があります。
まとめ
直近のM&A動向を振り返ると、企業価値を高めていくために大手企業も中堅・中小企業もM&Aを積極的に活用していることが読み取れます。業界の動向を注視し、必要に応じてM&Aを活用することは企業の持続的成長の鍵となるでしょう。経営者には、これらの業界動向を踏まえ改めて自社の強みを見つめ直し、企業価値の向上を実現するための戦略的なM&Aの推進が求められます。
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大阪府出身。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、2010年に新卒でキーエンスに入社。中小企業から上場企業まで工場の生産性向上やIoTシステム導入支援などに貢献。その後、日本M&Aセンターへ入社し、業界再編部において製造業専門チームを立ち上げ。2023年スピカコンサルティングに参画。