2026年1月の調剤薬局業界M&Aまとめ
2026年1月における調剤薬局業界のM&Aを解説します。今月は、2026年調剤報酬改定のスケジュールに関しても解説いたしました。
この記事を見るとわかること
- 2026年1月における調剤薬局の主要M&A
- 2026年調剤報酬改定、スケジュールに関する解説
2026年1月の公表M&A一覧
公表年月日 | 譲渡企業(売り手企業) | 譲受企業(買い手企業) | 形式 | 目的 |
|---|---|---|---|---|
2026年1月1日 | 有限会社フジモト調剤薬局[福岡県] | 株式会社サンキュードラッグ [福岡県] | 事業譲渡(フジモト調剤薬局/北九州市) | 九州エリアにおけるドミナント戦略の強化と、在宅医療体制の拡充 |
2026年1月30日 | 株式会社三幸メディカル[埼玉県] | ファーマライズホールディングス株式会社[東証2796・東京都] | 株式譲渡 | 医薬品流通体制の強化と、関東地域におけるドミナント展開の拡大 |
<2026年1月の調剤薬局 公表M&A>
2026年1月(1/1〜1/31)に公表された、調剤薬局・ドラッグストア関連の主なM&A事例は上記の通りです。 目前に迫る調剤報酬改定を前に、将来を見据えた中規模・小規模事業者からの譲渡相談件数は増加する見込みであり、水面下では活発な動きが続いています。
業界のニュース
2026年度調剤報酬改定〜短冊から見えた「立地依存経営」からの脱却の必要性〜
2026年1月23日に示された個別改定項目(短冊)により、薬局の存立基盤を揺るがす具体的な変更点が明らかになりました。今回の改定は、これまでの「門前・立地重視」のモデルに事実上の終止符を打つ内容となっています。
調剤基本料の厳格化:大規模・多店舗展開への包囲網
同一グループの判定基準が、従来の「月4万回」から「月3.5万回」へ引き下げられ、減算対象となる法人の範囲が拡大します。また、店舗数300以上の要件が撤廃され、受付回数ベースでの判定に一本化されることで、効率的な店舗運営を行ってきたチェーンほど区分変更による収益減のリスクにさらされます。
立地依存経営への厳しい制限:都市部・モール・門前減算
都市部の新規開設薬局に対し、「集中率85%超+月600回超+近隣に他薬局あり」の場合、基本料を低い区分(基本料2)とする新ルールが導入されます。さらに、医療モール内や大病院至近での「薬局の密集」を抑制する減算規定も新設され、立地に依存したビジネスモデルの収益性は構造的に低下します。
集中率計算の適正化:施設・モールの「隠れみの」を封鎖
これまで集中率を下げるために利用されてきた「施設案件(高齢者施設等の処方箋)」が計算から除外される方向です。また、同一建物内や敷地内の医療機関は「1つ」とみなされるようになり、モール内の複数クリニックを合算して集中率を薄める手法も通用しなくなります。
具体的なスケジュール:2026年6月実施までのカウントダウン
2026年度の診療報酬・調剤報酬改定に向けたカウントダウンが始まっています。今回の改定で最も注意すべきは、従前の4月ではなく「6月実施」というスケジュールです。しかし、準備は「4月」から始まります。
時期 | フェーズ | ポイント |
|---|---|---|
2026年1月23日 | 個別改定項目(短冊)提示 | 改定の具体的な項目が判明。 |
2026年2月13日 | 答申(点数の決定) | 各項目の「点数」が確定。自社の収益にどれだけインパクトがあるか試算が可能に。 |
2026年3月上旬 | 告示・通知 | 算定のための詳細な施設基準や要件が確定。「何を満たせば加算が取れるか」の最終確認。 |
2026年4月1日 | 施行(準備期間) | 事務的な準備開始。ただし、点数の切り替えはこの時点では行われません。 |
2026年6月1日 | 新点数の実施 | 改定後の点数での請求がスタート。同時に「疑義照会不要の残薬調整」などの運用も開始。 |
2026年2月13日の答申で具体的な点数が出揃うと、各薬局の「市場価値」が数字で算出できるようになります。特に、1月23日の短冊で示された「医療DX推進体制整備加算」の要件引き上げや、対物業務(調剤料相当)のさらなる適正化(引き下げ)は、薬局経営にとって無視できない利益圧縮要因となります。 一方で、6月からは「医師の事前承諾があれば、疑義照会なしで薬剤師が残薬調整を行える」という、薬剤師の職能が試される新運用も始まります。これは「実績を出せる薬局」には追い風ですが、「これまで通り待つだけの薬局」には厳しい減算や要件未達を突きつけるものです。
まとめ
2026年を「ポジティブな転換期」とするために
今回の改定スケジュールと茲許の市場動向、そして「スイッチOTC化」に代表される制度変更が示す結論は明確です。調剤薬局は今、単なる調剤の場から、地域医療の「ハブ」へと役割を劇的に変える分岐点に立っています。
経営の「真価」が数字になる日
いよいよ2月13日の答申により、収益インパクトが全て数値化されます。都市部やモール内薬局への新減算規定は、これまでの立地依存経営の終焉を意味します。オーナー様はこの日を境に、自力での体制維持か大手との提携かを判断する極めて重要なフェーズに入ります。
スイッチOTC化の加速:調剤依存からの脱却
「骨太方針2025」に盛り込まれたOTC類似薬の保険除外議論は、処方箋枚数に頼るモデルに追い打ちをかけます。しかし、これは薬剤師が健康相談やトリアージを行う「対人業務」の価値が最大化される機会でもあります。この変化に対応できるインフラがあるかどうかが、生き残りを分けるでしょう。
決断のタイミングが企業価値を決める
「もう少し待てば良くなる」という観測は、もはや通用しません。しかし、今回の激震を、地域医療の灯を次世代に繋ぐための転換期と捉えることは可能です。自社の店舗が新制度から乖離していると感じるならば、価値が最大化されている「今」こそ、大手のインフラや採用力を活用する「戦略的承継」を検討すべき時です。
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大阪府出身。関西大学卒業後、2015年に新卒で株式会社三井住友銀行入行。中小企業オーナーの資産運用や相続・事業承継ビジネスに従事。株式会社GA technologiesにおいて株式会社MtechAを立ち上げを経験し、その後、経営統合を経て当社参画。