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2025年6月〜8月の主な食品業界M&A

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目次

2025年6-8月の食品業界のM&A

2025年6月から8月にかけて、食品業界では公表ベースで累計51件のM&Aが実施されました。前年同時期累計が35件だったので約1.5倍の件数となり、活発な動きを見ることができます。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年6月2日

相生ユニビオ株式会社(未上場・愛知県)

株式会社OICグループ(未上場・神奈川県)

株式譲渡

2025年6月3日

株式会社城山ストアー(未上場・鹿児島県)

株式会社西原商会(未上場・鹿児島県)

株式譲渡

2025年6月17日

EXAMAS JAYA SDN. BHD. (マレーシア)

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884・東京都)

株式譲渡

2025年6月17日

EQUIPMAX PTE. LTD. (シンガポール)

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884・東京都)

株式譲渡

2025年6月25日

株式会社チモトコーヒー(未上場・東京都)

株式会社西原商会(未上場・鹿児島県)

株式譲渡

2025年6月30日

株式会社イノダコーヒ(未上場・京都府)

キーコーヒー株式会社(2594・東京都)

株式譲渡

2025年7月24日

株式会社Yappa(未上場・東京都)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡県)

株式譲渡

2025年8月4日

井原水産株式会社(未上場・北海道)

株式会社西原商会(未上場・鹿児島県)

株式譲渡

2025年8月5日

株式会社古川ミート(未上場・宮城県)

株式会社OICグループ(未上場・神奈川県)

株式譲渡

2025年8月28日

株式会社アジアンテイブル(未上場・神奈川県)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡県)

事業譲渡

2025年8月29日

株式会社JYU-KEN(未上場・神奈川県)

ワイエスフード株式会社(3358・福岡県)

事業譲渡

日本の食品業界でも存在感を増す「シリアルアクワイアラー」

2025年6月から8月にかけて2件のM&Aを実施したのがOICグループとヨシムラ・フードHD。3件実施したのが西原商会とワイエスフードと、短期間に複数件のM&Aを実施する企業が見られます。こうした企業は「シリアルアクワイアラー」や「事業承継プラットフォーマー」などと呼ばれ、複数のM&Aを通してグループ間でのシナジーを最大化することを目的としています。

特定の領域で複数のM&Aを実施して短期間で規模を拡大し、市場でのシェアを高めていくことを「ロールアップ戦略」と言います。食品業界が、オーナーの高齢化・後継者不在・人材採用難・原価高騰など単独での成長が難しいなかで、同じ船に乗り、グループ全体で成長を目指していこうという波がきています。

老舗同業のM&A「イノダコーヒ×キーコーヒー」(2025年6月30日)

株式会社イノダコーヒは1940年創業。京都で80年以上にわたり喫茶文化を継承し続けている企業です。コーヒー豆の製造・販売、喫茶店等9店舗の運営を行っており、2022年に事業承継を目的として創業家から投資ファンドのアント・キャピタル・パートナーズ株式会社に譲渡していました。

今回、アント・キャピタルが保有する株式をキーコーヒー株式会社が譲り受けることになりました。もともとキーコーヒーとイノダコーヒは2021年から業務提携は締結しており、共同の直営店を展開している他、イノダコーヒの家庭向け商品の展開もキーコーヒーが行っていました。今回、両社は遂に同じグループになります。1920年創業のキーコーヒーと、1940年創業のイノダコーヒが強力なパートナーになることで、双方にとってのシナジー効果が期待されます。なお、イノダコーヒの2025年3月期の実績は売上高21億円、純利益5,200万円、総資産24億円でした。

最低賃金額改定が食品業界に与えるインパクトは?

2025年度の地域別最低賃金額改定に向けた各都道府県の答申が出そろいました。全国平均で見ると1121円(前年度比+6.2%)となり、引き上げは10月1日から2026年3月31日まで順次発行予定となっています。

多くの食品企業は人件費が売上対比で30%前後が多いのではないでしょうか。人件費が+6.2%上がるということは、売上対比で見ると人件費は約32%(30%の6.2%アップ)になります。これは営業利益率が2%下がることを意味します。食品業界では営業利益率が5%~10%の企業も多いため、営業利益が2%下がるのは非常にインパクトが大きいと言えます。十分に利益があり人件費の上昇に耐えられるなら問題ないのですが、そうでない企業にとっては、価格転嫁できるよう商品のブランディングや、高い賃金ではなくとも働きたいと思ってもらえるような魅力的な職場作りが求められることでしょう。

採用難は何も中小企業だけではありません。昨今、大手各社も優秀な人材確保のためにかなりの努力をしています。先日、丸亀製麺を運営するトリドールでは店長の年収を最大2,000万円にすることが発表されました。また、トリドールグループの店舗で働く従業員の15歳以下の子どもは所属するブランドの全国の店舗を利用の際に無料となる「家族食堂制度」も導入されるとのことです。他にもガストなどを展開するすかいらーくでも店長の年収を最大1,000万円超えとすることを発表しています。

大手企業との格差が広がりつつある食品業界

大手企業が複数社をM&Aで譲り受けられる組織力や、高い報酬・充実した福利厚生を提供できる企業体力を持っていることから、中堅・中小企業にとってビジネスの難易度が高まっています。この困難を乗り越えるための有効な手段がM&Aによるグループ入りです。食品業界のM&Aが活発化している背景にはこうした事情もあると思われます。これからの業界再編の流れに取り残されないためには、早めに事業承継の準備を進めておくことが大切になることでしょう。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

渡邉 智博

宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:渡邉 智博部署:食品業界支援部役職:執行役員

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