M&A・事業承継のお悩みならスピカコンサルティングへご相談ください
お電話からお問い合わせ 03-6823-8728
投稿日:更新日:

2025年のLPガス業界を振り返る~M&Aの加速と組織再編の動き~

メールで送る

「LPガスの事業者は現在、何社くらいあるのですか?」これは、業界関係者との面談やセミナーなどで非常によく尋ねられる質問の一つです。

正確な最新統計は公表されていないものの、2025年の初めにはすでに全国のLPガス事業者数は15,000社を下回っていたと推定されています。それから1年が経過し、現在は14,000社前後に近づいていると見られます。

私がこの業界に携わり始めた2019年当時には、18,000社以上の事業者が存在していましたが、そこから数年で4,000社以上が市場から姿を消したことになります。このような急速な減少は、まさに業界全体が再編期に突入していることの証左であり、M&Aはこの変化の中核を担ってきました。

目次

2025年、LPガス業界の振り返り

2025年の変化①株式譲渡スキームの台頭

2025年、LPガス業界のM&Aで顕著だった変化の一つが、M&Aのスキームに株式譲渡が主流となりつつある点です。従来は、設備や顧客基盤など必要な資産のみを移転する「事業譲渡」スキームが主に活用されていました。事業譲渡は柔軟で管理しやすい一方で、譲渡ごとに許認可や契約更新が必要な場合があり、手続きの煩雑さが課題とされてきました。

しかし近年では、法人格を維持しつつオーナーシップだけを移すことができる「株式譲渡」の利用が拡大しています。株式譲渡であれば、契約関係や各種許認可、従業員との雇用契約、さらには顧客との関係もそのまま引き継がれ、事業の継続性がより確保されやすいという大きな利点があります。

さらに、売却側にとっては税務上のメリットも見逃せません。株式の売却益は「譲渡所得」として扱われ、給与所得等と比べて税率が低く抑えられることから、特に個人オーナー経営者にとっては大きなインセンティブとなっています。

このような背景から、後継者が不在の中小事業者や、将来の事業継続に不安を抱える経営者の間で、第三者承継の手段として株式譲渡の活用が一気に進んでいるのが現状です。

2025年の変化②40~50代経営者が進める“成長戦略型”のM&A

もう一つの重要な傾向として挙げられるのが、比較的若い世代の経営者による「成長のためのM&A」です。これまでM&Aは高齢経営者の引退や事業承継が目的とされるケースが主でしたが、近年では40代・50代の3代目経営者層が、将来の事業成長や基盤強化を目的にM&Aを選択する動きが増えています。

これらの経営者は、譲渡後も引き続き代表や役員として経営に携わりながら、大手グループの資本力やネットワーク、物流・保安体制といった支援を活かし、自社の成長を加速させるという戦略的な意思を持っています。

M&Aを通じてグループ傘下に入ることで、ITシステムや業務管理のDX化にも対応しやすくなり、人的リソース・教育支援・災害時のリスク分散といった単独経営では難しかった課題にも対応可能になります。このように、M&Aは単なる承継手段ではなく、未来志向の経営戦略として認識されつつあります。

サイサンと伊藤忠エネクスに見る、組織再編の対照的戦略

2025年には、大手企業による組織再編とM&A戦略の違いが鮮明になりました。特に、サイサンと伊藤忠エネクスの動きは、業界内でも注目を集めました。

サイサンは2024年9月、持株会社「株式会社ガスワンホールディングス」を設立し、グループ全体を再編。東北・北関東・埼玉・南関東といったエリアごとに地域事業会社を分社化し、エリア最適化とオペレーション効率の強化を同時に進める体制を構築しました。これにより、地域ごとの事情に応じた経営判断が可能となり、スピード感のあるM&Aも実現しやすくなっています。

実際、2025年には新たに9社がグループに参画し、サイサンは業界屈指の「M&A推進企業」として存在感を強めています。地域事業者の後継者問題に応える形で、「経営の安心と未来の展望」を提示できることが、選ばれる理由となっています。

一方、伊藤忠エネクスは2024年10月に全国のLPガス子会社4社を統合し、「伊藤忠エネクスホームライフ株式会社」を新設。東北・北海道・四国エリアの供給網を一体化し、業務の効率化、保安体制の標準化を進めました。2025年はこの再編による社内基盤の整備に注力しており、新たな買収などの外部M&Aは控えた一年となりました。

業界再編の最終地点は4社に集約されると言われている中で、これからM&Aを実施する会社はどの勢力のグループにジョインするかにより、得られる成長機会や資本力も大きく変わってきます。今回取り上げた、「攻め」のサイサンと「守り」の伊藤忠エネクスという対照的な戦略は、LPガス業界の再編において、今後の企業選択に影響を与えるものと考えられます。

2026年の展望:再編・選別が本格化するフェーズへ

2026年のLPガス業界におけるM&Aは、2025年の動きの延長線上にありながら、さらに選別と集中が進む年になると見られます。後継者不在や人口減少といった構造課題が続く中、株式譲渡を軸とした再編はより活発化するでしょう。

特に、顧客数1,000件以上を持つ中堅クラスの事業者にとって、スムーズな事業移行と高い評価額を両立できる株式譲渡は、最も合理的な選択肢になりつつあります。

また、M&Aを「引退の手段」ではなく、「今後15年を見据えた成長戦略」として捉える若手経営者の増加も、業界に新たな波を起こす要因となるでしょう。

一方で、人口減少が進む地方圏では、単独での事業継続がますます困難になると見られ、複数事業者の統合やエリア再編による効率化が進む可能性も高いと予想されます。

さらに、LPガス業界は依然として高い営業権評価を維持しており、他業界と比較してM&Aの評価額が高い水準を推移しています。2023年の省令改正により、新規顧客の獲得が難しくなった背景もあり、「既存顧客を持つ会社」そのものの価値が改めて注目されているのです。

大手事業者もキャッシュポジションに余力があり、2026年は買収に積極的な姿勢を取る企業がさらに増えると見られます。これらの要素を踏まえると、LPガス業界は引き続き、他業種と比較してもM&A活発度が高く、再編が進む業界であり続けるでしょう。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

中原 駿男

慶應義塾大学経済学部卒。2010年にみずほ銀行に入行し、法人営業に従事。2014年からは日本M&Aセンターにて、地方の事業承継解決問題に取り組む。その後、中堅M&A仲介企業の取締役として業界特化の業界再編戦略本部を立ち上げる。2022年8月にスピカコンサルティングを設立。2023年7月、M&A業界をテクノロジーで進化させたい思いでGA technologiesと資本提携を実施。

担当者:中原 駿男部署:エネルギー業界支援部役職:代表取締役