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業界別M&A
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2025年5月の食品業界M&Aまとめ

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目次

2025年5月の主なM&A事例

2025年5月の食品業界のM&A件数は11組(公表ベース)

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで11件となり、1~5月の累計件数は61件となりました。なお、前年同月は5件、前年1~5月の累計件数は56件です。前年と同程度からやや増加傾向にあるといえるでしょう。今年の1月から5月のM&Aの事例をみてみると、仕入れの内製化や新業態への進出など、リスク分散のための多角化が目立ちました。食品業界を取り巻く厳しい環境の中で、各社がM&Aをコスト削減や新しい収益の柱を作ることに活用しています。

公表日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

2025年5月2日

株式会社アロッサマヌエル

株式会社リベラ・フード&ビバレッジ

事業譲渡

2025年5月7日

株式会社コーシン

株式会社事業承継機構

事業譲渡

2025年5月9日

株式会社ミワ商店

株式会社クスリのアオキホールディングス

株式譲渡

2025年5月12日

クーデーションカンパニー株式会社

株式会社あみやき亭

株式譲渡

2025年5月13日

JAVISTAR JOINT STOCK COMPANY

株式会社梅の花グループ

事業譲渡

2025年5月13日

Seagrass Holdco Pty Ltd

株式会社コロワイド

株式譲渡

2025年5月15日

株式会社サンライズサービス

株式会社テンポスホールディングス

株式譲渡

2025年5月15日

株式会社洋菓子のヒロタ

株式会社ALEXANDER&SUN

事業譲渡

2025年5月26日

G.T Japan, Inc.

片岡物産株式会社

株式譲渡

2025年5月26日

株式会社永野

株式会社丸久(株式会社リテールパートナーズ)

株式譲渡

2025年5月26日

合同会社松田商店

株式会社柴田屋ホールディングス

株式譲渡

【Pick Up M&A】 片岡物産 × G. T Japan

今月公表されたM&Aの中で注目したいのは、片岡物産によるG. T Japanの買収です。

G. T Japanは、日本の抹茶文化を「世界のMATCHA」として広めることを目指し、40年以上にわたり日本茶・抹茶のあるライフスタイルを世界に発信してきた、米カリフォルニア州のパイオニア企業です。

一方、片岡物産は、160年の歴史を持つ日本茶・抹茶ブランド「辻利」や、伝統あるココアブランド「バンホーテン」など、多くのブランドを展開し、食品の輸入・生産・販売を手がける企業です。

昨今、健康志向の高まりを背景に、抹茶が海外で人気を集めており、ラテやお菓子などへの活用が増えています。米国や英国、オーストラリアではもはや「抹茶ラテ」が定番となり、ASEAN地域ではココナッツミルクと抹茶を組み合わせたドリンクが人気を博すなど、世界各地で抹茶文化が根付きつつあります。今回のM&Aは、日本の抹茶文化の普及を後押しするM&Aとなるでしょう。

近年、日本の食品業界では海外企業とのM&Aが活発化しています。たとえば、ゼンショーホールディングス(7550)は、2018年にアメリカ等で4,000店舗超のテイクアウト寿司店を営むAdvanced Fresh Concepts Corp.を譲受しています。さらに2023年には、アメリカで約3,000店舗のテイクアウト寿司を展開するSnowFox Topco Limitedを譲受したことでも話題になりました。2024年3月末時点で、ゼンショーホールディングスが運営する海外店舗は実に15,109店舗になります。 

2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降、日本の食文化への海外からの関心はより一層高まっています。今回の片岡物産とG. T JapanのM&Aは、日本の伝統的な食文化を海外に広げる大きなチャンスをつかんだ好例といえるでしょう。片岡物産はチリやアルゼンチンに事業拠点を保有しており、本件が、アメリカ本土のみならず、南米方面への日本食文化の普及につながるM&Aとなることが期待されます。

また、少子高齢化や原材料コストの高騰は日本の課題であり、この課題を解決するための海外進出は今後益々増加すると予想されます。結果的に日本の素晴らしい食文化が世界に広まることに繋がり、食品業界のさらなる発展に貢献すると考えられます。

業界のニュース

スシロー未来型万博店が示す、養殖技術と業界連携による海のサステナビリティ

2025年4月中旬に開幕した日本国際博覧会(大阪・以下、関西万博)で、株式会社FOOD & LIFE COMPANIES(以下、F&LC)の子会社である株式会社あきんどスシロー(以下、スシロー)は、「まわるすしは、つづくすしへ。− すし屋の未来 2050 −」をコンセプトに「スシロー未来型万博店」を出店しました。

同店舗では、未来へ続く持続可能な水産資源の安定的な調達を目指し、すべての商品に“養殖”の素材を使用しています。地球温暖化などの影響で天然の水産資源の確保が難しくなることが予想される中、スシローを運営するF&LCはさまざまな養殖技術を持つ企業との資本提携や業務提携を進めており、水産資源の安定調達に向けた基盤づくりに取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、2022年4月にはF&LCと株式会社拓洋が共同出資し、熊本県に株式会社マリンバースを設立しました。マリンバースは魚の養殖・販売、種苗生産、飼料の仕入れ・製造などを手掛けており、大規模化による餌の調達や販売コストの削減を実現しています。成長した魚はF&LCが直接買い付ける契約を結んでおり、市場を介するよりも調達コストを抑えることが可能となります。

また、F&LCは京都大学発のスタートアップ、リージョナルフィッシュ株式会社(リージョナルフィッシュ)と共同研究を実施しており、リージョナルフィッシュが持つゲノム編集技術やスマート養殖技術を活用し、安価で品質の良い魚の仕入れを目指しています。リージョナルフィッシュは品種改良やスマート養殖など最先端技術を駆使し、持続可能な水産業の発展に貢献しています。

水産業界全体としては、地球温暖化の影響で海水温が歴史的な上昇をみせ、漁獲量の大幅な減少や養殖魚の高水温による大量死など深刻な課題に直面しています。こうした状況を受け、F&LCだけでなく、さまざまな大手企業も課題解決に向けた取り組みを強化しています。 

今後もF&LCグループをはじめとする大手企業各社は、養殖技術やバイオテクノロジーなどとの業界横断的な連携を通じて、持続可能な水産資源の確保と安定調達の実現に取り組んでいくと考えられ、そのアピールの場所として関西万博の「スシロー未来型万博店」は重要な役割を担っています。今回の取り組みのように、単体では難しい挑戦を乗り越えていく手段としての他業態との協力は重要な選択肢になると考えられます。

まとめ

気候変動や物流費高騰による原材料のコスト高をはじめ、目まぐるしく変化する食品業界は従来型の経営から転換期を迎えているといえるでしょう。今回のFL&Cの取り組みのように、養殖による計画生産で仕入れを安定化させるための川上事業への投資や、ゼンショーホールディングスのように少子高齢化する日本ではなく世界市場に挑戦するなど、国内大手の投資する分野がシンプルな同業他社の買収から幅が出てきているのが昨今の流れです。そのため、大手が国内同業でM&Aを行う際は、ある程度の規模があるものや、有名ブランドなど特別な企業にシフトしていくものと予想され、中小企業については中堅企業が引き受ける構図へと変わっていくことが考えられます。不安定な状況だからこそ、M&Aを含む各社の戦略が変わってきており、中小企業のオーナー様は業界再編の波に乗り遅れないためにも資本政策を早めに検討することが必要になってくると思われます。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

吉原 圭吾

埼玉県出身。実家は埼玉県にて結婚式場・葬儀場を営む。一橋大学商学部卒業後、2025年に新卒でスピカコンサルティングに参画。

担当者:吉原 圭吾部署:食品業界支援部役職:M&Aコンサルタント

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