2025年1月の物流業界M&Aまとめ
1月の公表M&A代表事例

2025年1月の主要なM&A事例
過去最高件数を更新した昨年に引き続き2025年1月における物流業界のM&Aも非常に活発な滑り出しをしました。グループ内再編や株式譲渡、上場企業同士のTOBなど、様々なスキームで再編が加速しております。
【Pick Up M&A】中央紙器工業×ニッコンHD
2025年1月の中でも話題となった案件はニッコンHDの中央紙器工業へのTOBでしょう。ニッコンHDは、自動車産業向けの物流事業を展開しており、完成車輸送や自動車部品輸送、それに伴う梱包業・倉庫業を手掛けています。一方、トヨタ自動車の関連会社である中央紙器工業は、段ボール製品を中心とする各種梱包材の製造を主力としており、今回のTOBによって顧客基盤が拡大し成長ができることや、トヨタ自動車とのより強固な関係づくりが期待できることでしょう。
TOB価格について目を向けてみますと、ニッコンHDが1月31日にTOBを公表した時点での中央紙器工業の終値は1,349円でしたが、買い付け価格は3.7倍の5,034円と発表されました。一般的に日本の証券市場ではTOBのプレミアムは30%程度が相場とされている中で、本件では3カ月平均で約280%という異例のプレミアムが付与されており、2024年に成立したTOB95件の平均プレミアム約43%を大きく上回るものとなっています。物流業界の直近のTOBと比較しても、例えば昨年のC&Fホールディングスに対するSGホールディングスのTOBは76.02%のプレミアムであり、その異例の高さが印象的でした。
このような高いTOBプレミアムが設定された背景として、中央紙器工業の株価が企業価値を十分に反映されていなかったことが挙げられます。TOB公表前の時価総額は約70億円であり、PBRは約0.5倍と、市場から適正な評価を受けていないであり、ニッコンHDとしては相乗効果を加味した結果、適正な企業価値として提示されたと考えられます。
今回のTOBは、単体では評価されづらい企業価値が、シナジーを生み出すパートナーとの統合によって大きく引き上げられる可能性を示す好事例といえます。物流業界では、昨年も大型のM&Aが相次ぎましたが、本年もこの流れが継続し、業界再編がとどまることはないと考えられます。
業界のニュース
法改正を迎え動き出す物流業界の再編
2024年問題を受け、大きな変革が進んだ昨年の物流業界ですが、2025年の年頭所感において、全日本トラック協会の坂本克己会長は、業界改革の一環として事業許可更新制の導入を提言し、話題となりました。
トラック運送業は、1990年の物流二法改正により免許制から許可制へ移行し、事業許可には有効期限の設定や更新制度の規定はありませんでした。その結果、事業者数は約2万社増加し、現在全国に約6万3千社を超え、その75%以上が保有台数20台以下の中小・零細企業となっています。この小規模事業者の乱立によって各企業が過当競争を始め、結果的に多重下請け構造を誘発してしまいし、それをドライバーの長時間労働によって支える状況となってしまいました。
こうした現状に対し、坂本会長は「赤字経営が常態化した企業が無数に存在し、業界の歪みを生んでいる。採算の取れないビジネスモデルはもはや維持不可能だ」と業界の過当競争による非効率性を指摘。2025年の通常国会で事業許可更新制の導入を目指す考えを示しました。さらに、「一定の淘汰は避けられないが、これは業界の新陳代謝と捉えるべきである」と述べ、事業者数の適正化、業界再編を進める意向を示しています。
行政や業界団体も業界再編を後押しする中で、M&Aの促進や積極的な情報提供を始めております。安定した経営基盤を持つ大手・中堅企業による小規模事業者のグループ化や、小規模事業者同士の統合により、ノウハウの共有や規模の経済の活用が可能となり、適正運賃の収受やドライバーへの待遇改善、ひいては業界の発展が期待されています。
本コラムを執筆している最中、トナミHDに対する日本郵便によるTOBが発表され、業界で話題となっていますが、こちらの詳細については次回解説させていただきます。
まとめ
2024年問題を契機に、大きな転換期を迎えた物流業界ですが、2025年も引き続き業界再編が進む重要な一年となるでしょう。大手同士のTOBが相次いでいますが、いずれも譲受企業はバラバラであり、業界全体で再編に取り組んでいることが伺えます。自社がやらねば他社がやってしまう。そのような恐怖感もありながら各社積極的に再編に取り組まざるを得ない状況にもなっていると言えます。大企業の再編が加速しますと、それに連なって中堅・中小企業も様々なゲームチェンジの波にさらされます。来るときに備えて、会社を拡大しておく、取引先を分散してリスクを軽減させる、新しい事業を始める、いろいろなことが考えられます。物流企業にとって2024年問題は何も2024年だけの話ではなく、2024年からの大きな問題ととらえることが大切です。これらを踏まえて、自社をこれからどのように導いていくのか、その手法はどうしていくのが適切なのか、優先順位と現在の自社の状況を踏まえて、それを決断しなければならない年となるでしょう。今後の業界の動きに引き続き注目していきたいと思います。
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京都府出身。立命館大学経営学部卒業後、2024年に新卒で株式会社GA technologiesに入社、スピカコンサルティングに参画。