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2026年6月の食品業界M&Aまとめ

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2026年6月の食品業界M&Aは、累計件数が前年と同水準の活況を維持する中、単なる国内シェアの奪い合いを超えた「海外市場の開拓」と「原材料高騰に対応する川上(一次産業)の内製化」という、構造変化が見られた1ヶ月となりました。

今月の注目の動きとして、ヨシムラ・フード・ホールディングスによる「はこだてわいん」のグループ化が挙げられます。これは海外で評価が高まる「日本ワイン」の安定供給と輸出拡大を狙った戦略的買収です。さらに、円安や原材料費の高騰を背景に、農地や生産現場まで遡って自社に取り込む川上M&A(六次産業化)へのニーズが急速に高まっています。

本記事では、6月の主要事例を振り返りながら、参入障壁が高い「農地所有適格法人」とのM&Aスキームや、激動の時代を生き抜くための成長戦略について、業界専門コンサルタントが詳しく解説します。

この記事を見るとわかること

  • 2026年6月の食品業界主要M&A一覧: 活況を維持する市場トレンドと最新13件の概要
  • 【Pick Up】ヨシムラ・フードHD×はこだてわいん: 「日本ワイン」のブランド力と海外展開を見据えたプラットフォーム買収
  • 内需依存からの脱却: 食品の輸出額が10年で倍増した背景と、「外貨を稼ぐ」重要性
  • 川上M&A(農業参入)の増加: 原材料高騰に対抗する自社内製化と、六次産業化による収益力強化の狙い
  • 農地所有適格法人とのM&Aの注意点: 厳格な要件(議決権・役員要件)をクリアするためのスキーム設計

目次

6月の代表的な公表M&A一覧

子会社の吸収合併などの組織再編やマイノリティ出資、合弁会社の設立などを除き、過半数以上の株式譲渡または事業譲渡が行われた件数は、公表ベースで13件となりました。前年同月は18件のため、前年対比はやや減少しましたが、2026年1-6月の累計件数は84件(前年同期間は79件)となっており、食品業界のM&Aが活発であった2025年と同水準の推移と言えます。

公表年月日

譲渡企業(売り手企業)

譲受企業(買い手企業)

形式

目的

2026年6月1日

(株)ESCom[兵庫県]

ONIGO(株)[東京都]

株式譲渡

譲渡企業の惣菜製造基盤を、譲受企業のクイックコマースに活かす。

2026年6月2日

(株)T.O LAB[千葉県]

GYRO HOLDINGS(株)[東京都]

株式譲渡

約90ブランドを展開する譲受企業によるベーカリー事業進出。

2026年6月3日

(株)日之出工業[福岡県]

(株)西原商会[鹿児島県]

株式譲渡

九州で多数のM&Aを実施する譲受企業による包装資材製造業のグループ化

2026年6月4日

(株)はこだてわいん[北海道]

(株)ヨシムラ・フード・ホールディングス[東証2884・東京]

株式譲渡

譲受企業は海外市場展開に向けた商材として日本ワインをグループ化。

2026年6月9日

Nova Restaurant Group[米]

(株)クリエイト・レストランツ・ホールディングス[東証3387・東京]

事業譲渡

譲受企業にとって、北米を中心とした海外事業の拡大。

2026年6月12日

(株)食べる[東京都]

Trailhead Global Holdings(株)[東証3358・福岡県]

株式譲渡

譲渡企業の持つブランド力と販路をもとに、譲受企業のセントラルキッチン機能を掛け合わせることで事業価値を向上。

2026年6月16日

(株)プレシア[神奈川県]

(株)ナシオ[北海道]

株式譲渡

譲渡企業はエア・ウォーターのスイーツ事業を担う連結子会社で、エア・ウォーター側の事業の選択と集中によるもの。

2026年6月16日

ヨネザワ製菓(株)[埼玉県]

(株)ナシオ[北海道]

株式譲渡

同上(譲渡企業はエア・ウォーターの連結子会社)。

2026年6月17日

(株)トラスパレンテ[東京都]

(株)サンマルクホールディングス[東証3395・京都府]

株式譲渡

サンマルクによるベーカリーカフェのM&A

2026年6月19日

(株)立石食品[鹿児島県]

(株)ベストアメニティ[福岡県]

株式譲渡

譲渡企業の伝統的な「さつま揚げ」を守り、譲受企業の新しい発想で事業を拡大していく。

2026年6月23日

小川ぶどう園[岡山県]

(株)RooFarm[東京都]

事業譲渡

譲受企業は「都市農業」と「地方農業」の両輪で食のインフラを構築していく企業。

2026年6月29日

(株)国際漢方研究所[東京都]

売れるネット広告社グループ(株)[東証9235・福岡県]

株式譲渡

D2C事業者向けサービスを展開する譲受企業による、健康食品のEC事業者である譲受企業のM&A。

2026年6月30日

(株)ビー・ワイ・オー[東京都]

(株)モスフードサービス[東証8153・東京都]

株式譲渡

新規出店及び FC 展開の加速、共同販 促・共同調達やサプライチェーン最適化による収益力向上、海外展開機会の拡大等を見込んでのM&A。

<2026年6月の食品業界 公表M&A>

【Pick Up M&A】はこだてわいん× ヨシムラ・フード・ホールディングス

譲渡企業の「はこだてわいん」は、1973年に「駒ケ岳酒造株式会社」として設立され、1984 年に現商号へ変更し、ワインの製造販売を行っています。同社は2008年に「ヤクルト北海道中央」の100%子会社となっており、2026年3月期の売上高は5億1,400万円、営業利益600万円、純資産9億1,400万円でした。近年では北海道産原料を使用した「日本ワイン」の生産を強化しており、国内最大の「日本ワインコンクール2025」で銀賞3点・銅賞1点を受賞、「サクラアワード2026」でもゴールド賞とシルバー賞に輝くなど国内外のコンクールで高い評価を獲得しています。(2026年6月末現在)

 函館は、地球温暖化が進む中で、その冷涼な気候からワイン産地として注目をされています。はこだてわいんも、2018年から自社栽培に着手し、本社近くの約1.7ヘクタールの自社畑でカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどを栽培しています。また余市町などの契約農家からも高品質なぶどうを仕入れ、北海道産ぶどうによる「日本人の味覚に合う日本ワイン」をコンセプトとしたワイン造りを行っています。

海面下約283メートルの青函トンネル内に設けられた世界最深級の地下ワインセラーで熟成させるなどユニークな取組も注目されています。この「はこだてわいん青函トンネル蔵置所」は、気温約15~18℃、湿度70%前後、振動も極めて少ない環境となっており、ワインをじっくりと熟成させることができるそうです。

 

譲受企業の「ヨシムラ・フード・ホールディングス」は、東証プライム市場に上場している企業(2884)で「中小企業支援プラットフォーム」を展開しており、後継者難や経営課題を抱える中小食品企業をこれまでに30社以上M&Aによってグループに迎えいれています。経営支援とグループ全体のシナジー効果によって成長していくユニークな仕組みをもった企業になります。

 

「ヨシムラ・フード・ホールディングス」のIRによれば、人口減少の伴う国内需要の縮小を見据え、優れた日本の食品を国内外へ展開することを成長戦略の一つとして掲げています。

近年、日本ワインは品質向上とともに需要が拡大している一方、ブドウ農家の高齢化や後継者不足等によって産地の持続可能性が課題となっている業界です。温暖化の影響等を背景に北海道がワイン用ブドウの有望な産地として注目されている中、生産基盤の安定化及び高品質な原料の安定確保は、ワイン事業の中長期的な成長において重要なテーマであるとの認識から本M&Aを実行した、とあります。

 

人口減少に加え、円安による物価高など多くの課題を抱える食品業界において「外貨を稼ぐ」ことは、大きなテーマとなっています。特に中堅・中小企業においては「いかに内需を獲得するか」という点に長らくフォーカスされてきましたが、現在はインバウンド需要や、海外輸出についても検討することが当たり前になってきています。農林水産省の食品専業動向調査を見ると、農林水産物・食品の輸出額は2015年を100%とすると、2025年は213.4%となっており10年前の2倍以上となっています。一方で、食品製造業の生産指数は2015年と比較して2025年は98.6%となっています。これは食品製造業全体で生産量はほぼ変わっていないものの、輸出の割合が倍以上になったことを示しています。

「海外展開なんて自社には難しい」そう思う経営者もいらっしゃると思います。このような時代だからこそ、本件のような海外展開まで見越しての大手企業とのM&Aは会社の存続と発展のために良い手段となるのではないでしょうか。

業界のニュース

原材料高騰時代に、川上へのM&Aニーズが増加

2026年6月のM&Aを見ていただくだけでも、【Pick Up M&A】で取り上げた「はこだてわいん」の他に、「小川ぶどう園」×「RooFarm」など、農業と深い関わりを持つ企業のM&Aが見受けられます。

最近の一次産業や二次産業に関連するM&Aを見ていくと、原材料が高騰している中で川上の事業を内製化し、六次産業化を目指すことにより収益性改善を目指そうとする流れが見えてきます。これまでは、農地所有適格法人のM&Aは難しいとされてきましたが、世界規模では人口増加に伴い食糧難といわれるなか、食料品の輸出が増加していることや、2008年から開始されたふるさと納税など、農業にかかるビジネスチャンスも増えている中で、改めて川上事業の内製化に注目が集まっています。

1. 農地所有適格法人のM&A、なぜ難しい?

まず、農地所有適格法人とは、もともと「農業生産法人」と呼ばれていた法人で、2016年の農地法改正により、農地所有適格法人という呼称に変更されました。M&Aが難しい答えは単純で国により「農地の投機的な売買を防ぐ」ために様々な要件があるからです。食品の供給は人々の命に関わる重大事項だからこそ、国としても厳格に守る必要があり、一般の企業などが農地を取得することは原則として認められていません。

ちなみに、厳格な要件が多いのは「農地所有適格法人」であり、農地を借りて農業をするだけであれば一般の株式会社でも可能となります。混同されやすい言葉ですが、農業を営むすべての法人を総称して「農業法人」といい、一般の株式会社などが農業を営む場合は「農地を所有しない農業法人」という扱いになります。

なお、農地所有適格法人としての要件にどのようなものがあるかというと「売上高の過半数が農業(または農業関連事業)であること」や「株主や社員といった構成員について議決権の過半数が農地を提供した人や、農業に常時従事する人であること」、「役員の過半数が原則年間150日以上、農作業に従事すること」など、一般の株式会社などにとっては参入障壁が高いものとなっています。これによって農地が厳格に守られている一方で、事業承継に困っている農家や、資本力を強化して更なる展開を考える農家にとって、M&Aが容易には実行できない障壁にもなっています。

2. 一般企業が農業に新規参入するために

前述の通り、M&Aによって一般企業が農業に新規参入しようとする場合、農地所有適格法人を株式譲渡によって100%子会社化してしまうと、適格要件から外れてしまうため、農業に従事する個人が議決権を引き受けるなど特別なスキームを検討する必要があります。もしくは「農地所有適格法人」ではなく、農地を法人が所有せずに事業譲渡によって農地以外の資産を譲り受けることや、農地をリース契約に変更してからM&Aを行う手法などが用いられます。異業種の場合、農業所有適格法人の要件は急には満たせないため、前述の「農業法人」から新規参入することが現実的となってきます。

 

近年、円安の影響もあり原料が高騰している中で一次産業や二次産業など川上の事業に興味を持つ企業が増えてきています。日本の食品は海外での評価も高く、また円安という状況から価格設定によっては大きな利幅も見込めます。世界人口は83億人を突破する増加トレンドで、グローバルでは食糧不足であることから、ビジネスチャンスも大きくなっている状況です。一方で、ここまで記載の通り、農地所有適格法人におけるM&Aには様々な論点が含まれるため、正しい知見を持つためにも専門家に相談しながら進めていくことが肝要です。

まとめ

2024年から続く外食M&Aブームは未だ続いており、今月も「モスフードサービス」による「ビー・ワイ・オー」の譲受など、有名ブランドによる規模の大きなM&Aが継続しています。

上記に加え、原価高騰などの時代背景も含め、食品製造業のM&Aでも新しい動きが見られるようになりました。スキームの複雑さもありこれまで積極的にはM&Aが実施されてこなかった一次産業でのM&Aが増加見込みであることや、こうしたM&Aを通じた六次産業化が進んで行く兆しが見えています。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

渡邉 智博

宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。

担当者:渡邉 智博部署:食品業界支援部役職:執行役員

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