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2025年度版 企業価値を向上させている企業の共通点 【物流業界編】SBSホールディングス

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本コラムは、「2025年度版 企業価値を向上させている企業の共通点」で紹介した企業価値を上げる4つの指標に基づき、優れた経営を行う企業を紹介します。

この記事を見るとわかること

  • SBSホールディングスの経営戦略
  • 物流業界の優れた経営の要素を知り、中堅・中小の製造業に活用する方法

目次

企業価値を高める4つの指標

スピカコンサルティングが考える企業価値を高める4つの指標に関する解説はこちらの記事からご確認いただけます。
企業価値を高める4つの指標解説

【物流業界編】4つの指標で企業を分析〜SBSホールディングス〜

物流業界で今回取り上げる企業は、東京都に本社を置くSBSホールディングス株式会社(以下、SBSHD)です。同社は、3PL業態を中心に展開しており、2025年12月期の業績予想では、売上高4,850億円(昨対比+8.2%)、営業利益205億円(昨対比+15.8%)を見込んでいます。

直近1年間の株価の推移では、同社はこの1年、時価総額ベースで、約913億円(2025年1月6日終値)から約1,463億円(2025年11月10日終値)と、およそ60%強の成長を遂げており、企業価値を向上させていることが分かります。

SBSHD:指標①「経営的指標」

SBSHDのIRによると、2025年12月のROEの予測値は12.1%であり、高い水準となっています。2024年のプライム市場に上場している陸運業15社(鉄道・バスを除く)のROEの中央値は9.1%となっており、比べると高いことが分かります。また、同社のROA(2024年12月)は6.0%であり、こちらも一般的に高い水準となっています(上場企業における平均値は、ROEで約10%、ROAで約4%)。

SBSHD:指標②「人的資本経営」

SBSHDは中期経営計画の中の重点施策の一つとして、「人的資本に係る取り組み」を発表しています。2023年2月には日本企業における人的資本経営を実践と開示の両面から促進することを目的とした団体である「人的資本経営コンソーシアム」へ入会するなど人的資本経営への注力が伺えます。

 具体的な取り組みとしては、各階級や部門別の研修制度を整えている点については、中堅・中小企業でも参考にできる点でしょう。社長が以外の管理職がおらず、社長が何でもやってしまっている状態であることが悩みというお話はよく聞きますが、中期的な視点での研修制度の設計は、次世代の管理職育成のための第一歩です。

出展:SBSグループ3か年経営計画(https://www.sbs-group.co.jp/sbshlds/pdf/sbshlds_plan2023.pdf)

SBSHD:指標③「ビジネス-5つの観点-」

a:収益性

SBSHDの収益性は、先に述べたように高い水準です。また、収益性を示すEPS(1株当たり利益)で比べてみても、2024年12月期の実績値である242.19円は上場企業物流各社と比べても高い水準にあります(2024年の上場企業の平均値は102円)。

b:安定性 

物流業界における安定性とは、荷主からの安定的な業務の請負といえるでしょう。SBSHDは3PL事業を中心に各メーカーの物流部門のアウトソーシングを収益の柱としていますが、その中で同社は物流子会社のM&Aを積極的に行っています。加えて、グループに迎え入れる際のM&Aスキームにも工夫を凝らしています。物流子会社の株式をあえて66.6%の取得にし、33.4%を元の親会社(メーカー)に残すことで、良好な関係性が保たれ、物流子会社の成長に向けて同じ方向を向くことができることがあげられます。

c:成長性

SBSHDの手掛ける3PLの市場は年々拡大しており、今後も成長していくことが予想されます。月刊ロジスティクス・ビジネスが発表している3PL の市場調査によると、2009年から2023年の15年間で、3PLの市場規模は3倍以上に拡大しました。物流の小ロット多品種化が進み、物流に対して求められるサービスレベルが上がったことで、自社物流にかかるコストが向上し、アウトソーシングをする流れとなったことが大きな要因です。この流れは継続していくものと予想されています。

d:社会性 

物流業界における社会性は、環境問題との関わりが大きいと言えるでしょう。トラックでの排ガスのCO2等はおおきな課題のひとつです。そんな中で、同社はトラックのEV化を進めています。EVトラックの1万台導入なども発表しており、環境問題解決に寄与をする取り組みもしています。

e:独自性 

実は、SBSHDの利益177億円のうち、81億円は不動産事業による利益です (2024年12月期)。これは同社が投資・開発した倉庫の流動化を図ることで利益を生み出しています。具体的にはセル&リースバック(売却して利益を得つつ、買主からその物件を借りる)という手法で流動化をしています。

例えば、中堅・中小企業でも、例えばトラックの中古車販売事業を行う等、自社で利用していた資産を利用した収益モデルを構築している企業もあります。自社のビジネスを一工夫した第二の収益源を模索してみてはいかがでしょうか。

SBSHD:指標④「コーポレートアクション」

図表は、SBSHDのこれまでのM&Aと売上の推移を表しています。

図表:SBSホールディングスのM&Aと売上の推移 出典:SBSホールディングスHP(https://www.sbs-group.co.jp/sbshlds/ir/about/)

M&Aを戦略的に続けてきた同社ですが、上場直後は横のM&A、直近では縦のM&Aと、単発のM&Aではなく複数のM&Aで業界に対してどのようなポジショニングを図っていくかを踏まえた戦略をとっています。

上場直後の象徴的な案件としては、上場翌年にM&Aを実行した雪印物流(雪印乳業の子会社。現:SBSフレック)、さらにその翌年に実行した東急ロジスティック(東京急行電鉄の子会社。現:SBSロジコム)があげられるでしょう。この時期の特徴としては、SBSHDが自社グループで持っていないものを補完する狙いが強かったと言えます。これらのM&Aにより、食品関連の部門、また不動産関連の領域に参入することができており、それぞれ、現在のSBSHDの中核をなす企業となっています。

2025年は、ブリヂストン物流をグループに迎えたことがニュースになりましたが、2021年にグループ入りをした古河物流、2024年のNSKロジスティックスはいずれも自動車部品関連に強みを持つ物流企業であり、今回のブリヂストン物流がグループに加わることで、自動車という軸におけるサプライチェーンの強化を実現します。

まとめ

物流業界が大きく変わることが求められている昨今の中で、新しい取り組みをしている企業が業界をけん引しています。今回紹介した4つの視点で自社を分析し、「どうすれば企業の価値が向上するのか」と会社の整理をしてみてはいかがでしょうか。

担当者からのコメント アイコンこの記事の執筆者

宮川 智安

群馬県出身。実家は7代続く水産業の卸売り。
早稲田大学卒業後、新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。2021年度には同社で最も多くの物流業界M&Aを成約へと導いた。2023年よりスピカコンサルティングに参画。運行管理者資格保有。

担当者:宮川 智安部署:物流業界支援部役職:物流業界支援2部 部長