エネルギー業界2025年大予測〜業界進化・適切な営業権〜
2024年は“業界進化の元年”と呼べる年であった。2025年ではその進化が加速すると見ている。省令改正による事業環境変化を機に幅広い資本政策の選択を取る会社が増える見込み。
大型M&Aのハイペース化
過去10年を見た時に、保有件数1万件超え企業の譲渡は1年に1社もしくは2年に3社程度のペースであった。しかし、2024年には6社がM&Aを選択。2025年は以下の要因からこの規模のM&Aが更に増えるとみている。
市場の縮小と効率化
地方の人口減少や都市部への需要集中に伴い、効率化とスケールメリットを求める動きが強まった。特に地域ごとの供給網を統合することでコスト削減を図る大手が積極的にM&Aを推進。
省令改正の余波~戸建てにおける価格競争
2024年に実施された省令改正により、これまで主戦場だった賃貸アパートへの投資はエリア差はあるが、徐々に落ち着いてきた。一方競争が激化してきたのが戸建てへの営業だ。これまでもハウスメーカーと提携した新規営業スタイルは中堅以上の企業が行ってきた。しかし省令改正後に起きたのは戸建に対する純粋な低価格競争。㎥あたり300円中場での切替競争が複数エリアで実施されており、これが拡大しているように感じる。その価格競争と対峙するには資本力と規模の経済は不可欠だ。
配送人員の確保
現在半数以上の中小企業は自身の顧客の半数以上を卸先、組合等に配送を委託していると推測する。またその配送を担っている方々の年齢はどうか。私が全国で訪問させていただいている会社では、その平均年齢は50代になるような会社が非常に多い。配送人員の確保は大規模な会社ほど、その責任は大きい。業界全体の課題解決のために、大規模な会社がM&Aを通じて人材確保の道筋を模索しているとも言える。
異業種からの投資
2024年はファンドからの投資が業界を驚かせたが、実はLPガス業界は長年異業種からの関心が高い業界だ。例えば光通信グループはシナネン社を始め多くのLPガス関連会社の株式を一定割合保有しており、その投資額は日に日に増加。また総合商社や携帯電話などの生活インフラを担う業界もLPガス業界との親和性を求めてこの業界へ投資してくる可能性が高い。LPガス事業者にとっては「組む」相手の選択肢が更に増える。結果としてM&Aは業界内で月1件以上のペースで進む“新常態”となり、業界地図が急速に塗り替えられる。
譲渡対価の緩やかな下落
LPガス業界の営業権は他業種と比較しても高い水準にある。一般的な中小企業の営業権は過去の実態収益の2~5年ほど。一方でLPガス業界では多くが7倍以上、場合によっては10倍以上の価格で取引されてきた。特に未上場企業のM&Aにおける営業権に顕著に出ている。例えばM&Aの評価方法としてEV/EBITDA倍率法があるが、LPガス業界では上場企業で7倍前後。一般的に中小企業株式は流動性がないため、同じ評価方法で計算すると上場企業の0.7倍などを用いるが、現に取引されている数字で言うと、7倍イコール、または更に大きな倍率が使用されることもあった。しかしそれは以下を根拠に今後は緩やかに下落していくと推測する。
省令改正による収益構造の変化
これまでは設備投資をして、料金に上乗せすることが多かった。結果としてEBITDA(営業利益+減価償却)は高い数値となり、業界の営業権の基準を高くする要因となっていた。しかし今後は先に記載の通りで設備投資が減り、戸建てにける価格競争が激化する。結果として営業権は数年で現在の7割~半減するのではないかと推測する。
需要減少の影響
少子高齢化やオール電化の普及が進み、LPガス需要は年々減少傾向にある。これにより中小事業者の将来性は評価されにくくなる。近しい事例は調剤薬局だ。調剤薬局業界では2年に一度の薬価差改定により収益の確保が難しくなり、結果として現在の営業権は10年前の半分程度の評価となっている。
最後に
業界の進化が日々進む中でどのように中長期的に経営するか、資本政策のカードを持っていること、使い方を理解していることは経営者にとって非常に重要になる。スピカコンサルティングは業界に特化し、適切な情報提供を経営者様に続けていく。
慶應義塾大学経済学部卒。2010年にみずほ銀行に入行し、法人営業に従事。2014年からは日本M&Aセンターにて、地方の事業承継解決問題に取り組む。その後、中堅M&A仲介企業の取締役として業界特化の業界再編戦略本部を立ち上げる。2022年8月にスピカコンサルティングを設立。2023年7月、M&A業界をテクノロジーで進化させたい思いでGA technologiesと資本提携を実施。