外食業界2024年振り返り〜従来型の飲食店経営から脱却する転換期〜
2024年の外食業界におけるホットトピック
外食業界にとって2024年は新しい時代への転換期だったと言える。
訪日客数は過去最高だった2019年の年間合計3188万人を11月時点で更新(1-11月で約3338万人)し、外国人観光客向けの高級海鮮丼も円安の影響で人気となり「インバウン丼」と呼ばれ「新語・流行語大賞」にノミネートされた。
一方、コロナ禍において助成金等で抑えられていた倒産件数は2024年には過去最多の見通しへと変わり、年間で初の1,000件超えの可能性が高まるなど、明暗が大きく分かれた。従来型の飲食店は原価や人件費高騰への対応、人手不足からDX化への投資が求められるなど、飲食店の在り方が変革を求められる1年だったと言える。

そのような中で新たに勢いを増したのが、ファストカジュアルと呼ばれる業態だ。
ファーストフードよりは高価格帯だがファミリーレストランよりは手頃で、提供時間はファーストフードより長いがファミリーレストランよりは回転が早い業態のことで専門店であることが多い。具体的には「カルビ丼」「おにぎり専門店」「目の前で焼き上げるハンバーグ業態」などが流行を見せた。専門店としての付加価値を価格に反映させやすく、食材が限定されることでロスも少なくなる。顧客満足度は落とせない中で、コスト上昇を吸収する必要があり経営力が問われる2024年であった。
外食業界 M&Aの傾向
2024年は外食業界のM&Aが非常に活発化した1年であった。
5月には三菱商事がケンタッキーフライドチキンでお馴染みの日本KFCホールディングスの全株式を米投資ファンドのカーライル・グループに譲渡した。
9月には、すかいらーくホールディングスが、北九州のソウルフードとして名高い資さんうどんの運営会社を譲り受けることを発表した。
また10月にはワタミがサンドイッチチェーンのサブウェイの国内運営を行う日本サブウェイを譲り受けることが発表された。
更には11月にサンマルクホールディングスが牛カツ京都勝牛などを展開するジーホールディングスの譲り受けを発表など、大手外食企業がM&Aを通じて新たな業態開発に取り組む1年であった。
また、海外投資も目立つ1年となった。
2024年は、これまで積極的に海外M&Aに取り組んできたゼンショーホールディングスが外食企業として初の時価総額1兆円を突破した記念すべき年でもあり、各社での海外投資が進んでいる。8月にはクリエイト・レストラン・ホールディングスが米国のベーカリー事業を譲り受けし、9月にはコメダホールディングスがシンガポールの外食産業の譲り受けを発表した。
外食業界の課題
コスト上昇への対応が求められる中、安易な値上げは顧客離れにも繋がるため、経営の舵取りが難しい時代へと突入した。
また、人材採用も困難になっており、省人化を進めるにも店舗のDX化への投資が必要な状況になっている。
現在はファストカジュアルなどの専門店が人気になっているが、流行の移り変わりも早い時代かつ模倣リスクも高い業界なので、早期に固定客を掴み業態を定着させていくことが求められている。
宮崎県出身。慶應義塾大学卒業後、新卒でリクルートに入社。ブライダル事業に9年間携わった後に、日本M&Aセンターに入社。一貫して食品業界のM&Aに従事し、2020年には同社で最も多くの食品製造業のM&Aを支援した。食品業界専門グループの責任者を務め、著書に「The Story〔食品業界編〕業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密」がある。2024年スピカコンサルティングに参画。