調剤薬局業界2025年大予測~国内の書店は20年で半減!Amazonへの対抗と小売業からの脱却~
Amazonファーマシーの参入が与える影響
弊社はAmazonファーマシーが既存の調剤薬局業界にとって将来大きな脅威となると考えている。
Amazonが日本市場に参入したのは2000年代初頭であるが、当時はオンラインでの商品購入に不信感があり、あくまで「リアル」での商品購入にこだわる消費者が大半を占めた。しかし現在Amazonで買えないものはないとも言われるまでになり、近所の実店舗で手に入るものでもAmazonで購入するなど、年代を問わずに利用するようになった。Amazonが参入した当時、日本国内に書店は約20,000店舗あったと言われている。
下図のとおり、2013年には15,602店舗、2023年には10,918店舗とわずか20年で半分の店舗が閉鎖となった。再編に伴い、平均坪数は2013年の112.7坪から2023年には132.9坪へと上昇しており、個人経営の書店の撤退が相次いだことがわかり、大手資本と組むか単独で変化に対応した店舗のみが今も営業を続けられていると言える。

M&Aにおける譲渡対価の二極化
調剤報酬改定により業界環境が日々変化し譲渡検討企業が増加する中、譲渡対価は全体的に右肩下がりながらも二極化の流れが加速している。会社のビジョンや目指す未来が従業員に浸透しており、オンライン化・IT化を進めることで対人業務への移行がおおむね完了、結果独自の取り組みを行えていることが利益率向上に寄与している企業・店舗は従来から大きくは変わらず修正後EBITDAの3.5~4.0倍程度で成約している。
一方、オンライン化・IT化に後れを取り対人業務への移行が進まない企業・店舗に関しては、現在の利益率が高くとも修正後EBITDAの2.5~3.0倍程度。もしくは候補先企業が現れにくい状況だ。これは、利益率や技術料・処方箋受付回数の大小が譲渡対価に与える影響が極めて高かったコロナ渦以前とは明らかに傾向が異なっており、この二極化は今後も進むと考えている。
これからの調剤薬局業界
書店が本を買うだけの場所からカフェやアートエリア等の空間を楽しむ場所として変化したように、調剤薬局も薬を貰うだけの場所からの変化が必要だ。変化の激しい業界の流れに取り残されずに変化を許容しつつ独自性を発揮する経営がさらに重要になると考えられ、M&Aの必要性は今後も高まっていくであろう。
京都府出身。5歳より始めたフィギュアスケートで7度の全日本選手権出場、2度のインカレ団体優勝の経験がある。関西大学経済学部卒業後、2021年に新卒で日本M&Aセンターに入社し、一貫して調剤薬局業界のM&A業務に取り組む。2024年スピカコンサルティングに参画。