M&Aの手数料は高い?手数料の内訳や手数料を抑える方法を解説
経営者様にとって事業承継や成長戦略の一環として、「M&A」という選択肢が一般的になりつつある現在、譲渡企業と譲受企業の架け橋となるM&A仲介会社の介在価値は大きくなっております。昨今M&Aの仲介手数料が高額であるというニュースや記事を散見いたしますが、本コラムでは仲介手数料の仕組みや内訳、また経営者様が最も気になるポイントであろう仲介手数料を抑える方法について、そもそものM&Aのメリット、デメリットを踏まえて解説いたします。今後M&Aを検討したい、また直近では検討をしていないが将来的にM&Aという選択肢を視野に入れていきたいとお考えの経営者様には必見のコラムとなっております。
M&Aとは
はじめに「M&A」とは、「合併(Mergers)」と「買収(Acquisitions)」を意味する言葉が掛け合わされて作られた略称になります。言葉の通り、企業間における合併や買収を意味します(広義な意味合いとして事業提携を含む場合もあります)。M&Aというと事業承継問題の解決に用いられるイメージが先行する方も多いかと思われますが、近年では成長戦略の一環としての意味合いが強くなっております。日本国内におけるM&Aの件数は年々増加傾向にあり、経営者様にとってM&Aという選択肢が一般的になりつつあると言えます。
M&Aの手数料が高い理由
企業がM&Aを実行するにあたって必要不可欠となるのが、M&Aに対して助言を行う仲介会社の存在になります。昨今のニュースや記事においては、M&A仲介会社を活用した際に発生する仲介手数料が高いと散見されます。仲介手数料が高額となる理由は大きく2点あります。
理由1.人件費が高い
仲介会社は企業間の合併や買収を取り持つ立場にあるため、法律や会計、税務をはじめとした専門的な知見が必要となります。そのためM&Aコンサルタントは弁護士や公認会計士などの有資格者との連携が必須となるため、成約までに介在するステークホルダーの増加から必然的に仲介手数料は高額になっています。
理由2.相場がはっきりと示せない
またM&Aの仲介手数料に対しては明確な規定が存在しないため、仲介会社が独自で手数料を決定する場合がほとんどであり、相場というものが存在いたしません。相場が存在しないなかで個別の企業ごとに手数料が決定するため、「適切な手数料」を明確にすることは非常に困難であると言えます。
M&Aにかかる手数料の内訳
相場が存在せず、個別の企業ごとに手数料が決定する仲介費用について、その内訳を大きく6つに分けてご紹介いたします。
手数料1.相談料
相談料とは、仲介会社にM&Aに関する相談を行った際に発生する費用のことです。一般的には無料で相談できる仲介会社がほとんどになりますが、有料の場合は数千円から1万円程度に設定されている場合がございます。正式なM&Aの提携仲介契約前に発生する費用となりますので、事前相談料と定められている場合もございます。
手数料2.着手金
着手金とは、正式に仲介会社にM&Aに関する支援を依頼した際(仲介会社と提携仲介契約を締結した際等)に発生する費用のことです。業界に対する調査やM&Aの相手先選定などを専門のコンサルタントが着手するタイミングとなります。着手金が発生しない仲介会社も多く存在しますが、着手金を支払って正式な役務提供が開始される仲介会社の方が、M&Aのご成約に向けて誠心誠意取り組む傾向にあると言えます。
手数料3.中間報酬
中間報酬とは、M&Aの手続きが一定段階まで進行した際に発生する費用のことです。一般的には譲渡企業と譲受企業が基本合意契約を締結した際や、譲渡企業が譲受企業からの意向表明書を受領した際に発生する場合があります(譲受企業による独占交渉権が発生したタイミング)。中間報酬には定められた規定金額を支払う場合と成功報酬の10%~20%程度を支払う場合があります。基本的には中間報酬はM&Aの成約がなかった場合も返金されないことが多く、発生タイミングや金額については事前に留意しておく必要があります。
手数料4.デューデリジェンス費用
デューデリジェンス費用とは、基本合意契約締結後(意向表明書の受領後も含む)に譲受企業が譲渡企業に対しデューデリジェンスを実施する際に発生する費用のことです。そもそもデューデリジェンスを実施する理由は、M&Aのご成約後に事前把握が可能であった事案においてトラブルを発生させないためです。デューデリジェンス自体は譲受企業が依頼した第三者機関主導で実施されるため(譲受企業主体で実施する場合もあり)、譲渡企業が負担する費用はございません。
手数料5.成功報酬
成功報酬とは、M&Aがご成約した際に発生する費用のことです。仲介会社は譲渡企業と譲受企業の双方のアドバイザーとして役務提供を行うため、費用は双方から発生いたします。成功報酬は様々な手数料の中でも最も高額となる場合がほとんどですが、ご成約した際に発生する費用のため不要な支出とは言えません。
手数料6.リテイナーフィー
リテイナーフィーとは、M&Aがご成約するまでの期間で月ごとに発生する役務提供費用(月額固定料)のことです。実際にM&Aがご成約するまでの期間は不確定なため、検討・交渉期間が長くなればなるほどリテイナーフィーが高額になります。近年ではリテイナーフィーが発生しない仲介会社が主流となっているため、正式な依頼前に確認することで安心してM&Aの検討を進めていくことができます。
M&Aにおける手数料の算出はレーマン方式が基本
ここまでM&Aの検討からご成約までに発生する可能性のある仲介費用について6つをご紹介いたしましたが、ここでは最も高額である成功報酬にフォーカスしてご説明いたします。仲介会社の多くは成功報酬の算出に「レーマン方式」を採用いたします。
報酬を算出する「レーマン方式」とは
レーマン方式とは、M&Aの支援に携わる仲介会社や弁護士などが使用する成功報酬の算出方法になります。レーマン方式は大きく2種類に分類され、M&Aの実行によって移動する譲渡対象資産額(負債+純資産+営業権)に一定料率を乗じて成功報酬を算出する「総資産レーマン」と、譲渡価額(純資産+営業権)に一定料率を乗じて成功報酬を算出する「株価レーマン」に分けられます。負債金額によって手数料が大きく異なるため、事前に支援を依頼する仲介会社の成功報酬の算出方法を確認しておくことで、安心してM&Aの検討を進めていくことができます。
レーマン方式のメリット
レーマン方式のメリットは、基準となる価額に一定料率を乗じて成功報酬を算出するため、企業の規模に関係なく公平な報酬算出が可能となっております。特徴として基準となる価額が上昇すればするほど、乗じる料率が減少していくため、総じて手数料率が減少していきます。また一定料率を乗じて報酬額が算定されるため、事前に必要費用を把握することができます。
当社の譲渡企業様向け費用について
当社の譲受企業様向け費用について
M&Aをするメリット
ここまでM&Aの検討から実行において発生する仲介会社の手数料についてまとめてまいりました。総じて高額であると感じた方が多いかと思いますが、仲介会社を活用してでもM&Aを検討・実行するメリットについて改めて考えていきましょう。
売り手側のメリット
譲渡企業の最大のメリットは、M&Aの実行によって事業承継課題が解決できる点です。自社好調な企業ほど後継者様がいらっしゃらない状況は深刻な課題となりますが、M&Aがご成約された際は自社の存続、取引先との関係継続、従業員様の雇用確保と三方よしの未来を実現することができます。また昨今は自社の更なる成長のために、第三者資本を活用して加速度的な成長を目指す成長戦略的なM&Aによる譲渡も増加傾向にあります。
買い手側のメリット
譲受企業の最大のメリットは、M&Aの実行によってビジネス構築にかかる時間とリスクを排除し、すでに確立されたビジネスを獲得することができる点です。自社の既存事業を譲受した場合は、事業規模の拡大によって自社の成長を加速度的に促すことができます。また自社で行っていない新規事業を譲受した場合は、事業の多角化によって顧客提供価値の向上や自社内での新たなシナジー創出が可能となります。
M&Aをするデメリット
M&Aの検討・実行によるメリットばかりを並べると「M&Aを選択することが最良」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にM&Aを検討・実行することによるデメリットが存在することも事実です。
売り手側のデメリット
譲渡企業がM&Aを検討・実行する最大のデメリットは、ご成約は確約することができない点です。よくM&Aは結婚に例えられ、「ご縁とタイミング」が非常に重視されますが、実際に自社に最適な譲受企業が現れる可能性は、検討を開始し、マッチングを進めていくまで明確に把握することは困難です。また実際にご成約された際も経営者様の交代や経営方針の変更によって、想定していた成長が見込めないことや、既存取引先との関係悪化に繋がることもあります。
買い手側のデメリット
譲受企業がM&Aを実行した際のデメリットとして、M&A後に想定していたシナジーが創出できない点が挙げられます。ご成約まで非常にスムーズに行った場合であっても、経営統合後に想定外の事象が発生する可能性は十分にあり、企業文化の違いによる従業員様同士の衝突や既存取引先との関係悪化など、リスクを挙げるときりがありません。最悪の場合、M&Aの実行によって自社にマイナス作用をもたらすこともございます。
M&A案件を探す方法
M&Aの検討・実行におけるメリット・デメリットについて理解が深まったところで、そもそもM&A案件を探す方法は多岐に渡ります。知人や既存取引先から紹介をもらったり、昨今普及が進むM&Aマッチングサイトを活用したり、また金融機関や事業承継引き継ぎ支援センターを活用する方法もございます。総じてM&Aを検討・実行するために有効な手段ではありますが、情報の質やサポートの質にフォーカスすると、M&Aの仲介支援をメインに行う仲介会社に依頼をすることが、最も安心して検討を進めることができると言えます。
失敗しないM&Aの仲介業者の選び方
M&Aの検討・実行を進めるにあたって必要不可欠な存在である「仲介会社」。M&Aは経営者様の人生を大きく左右する決断を伴うからこそ、伴走者である仲介会社の選定は慎重に行いましょう。
成功報酬を確認しておく
仲介会社を選定する際は、M&Aのご成約時に発生する成功報酬の算出方法を必ず確認しましょう。仲介会社ごとに手数料の算出基準となる価額対象は異なり、かつ乗じる一定料率も異なります(最低報酬制度を設けている仲介会社もございます)。M&Aの検討から実行までに必要となる費用や仲介会社に支払う手数料について、きちんと分かりやすく説明を行ってくれる仲介会社を選択しましょう。
過去の実績を調べる
仲介会社へ正式に役務提供を依頼する前に必ず過去の実績を調べましょう。またM&Aの検討・実行にかかる支援は、コンサルタント個人の能力にも大きく左右されるため、仲介会社の実績はもちろんのこと、コンサルタント個人の実績を把握することも重要です。さらには自社の業種に関する知識や支援実績が豊富な仲介会社やコンサルタントを選ぶことで、より適切な提案を得られる可能性が大きく高まります。
ネットワーク数が多い業者を選ぶ
M&Aのご支援に最も必要となるものは情報です。より多くの選択肢(お相手、スキーム等)の中から最適解を導くためにも、役務提供を依頼する仲介会社が持つネットワークは必ず事前に把握しましょう。昨今は会計士事務所とのネットワークが強固な仲介会社や、金融機関とのネットワークが強固な仲介会社、はたまた特定業種内でのネットワークを確立している仲介会社など、各社特徴をもってご支援を行っております。(190文字)
M&Aの仲介業者を利用するメリット
仲介会社の数は近年のM&A件数増加に伴う形で爆発的に増加しております。仲介会社の質を見極めることはもちろん重要ですが、改めて仲介会社を活用してM&Aを検討・実行してくメリットについて記載いたします。
自社に適切な企業が見つかりやすい
仲介会社の介在価値は、譲渡検討企業と譲受検討企業の情報を圧倒的に多く保有している点になります。仲介会社の持つ情報とネットワークを活かし、自社の希望する条件に合う適切なお相手を捜索・提案してくれるため、ご成約の可能性が大きく高まると言えます。
サポートが充実している
M&Aの検討・実行のご支援には専門的な知識や実務による経験が必要不可欠となります。仲介会社によって異なりますが、弁護士や公認会計士が在籍し、チームでご支援を行う場合もあります。仲介会社からはご成約まで一気通貫で専門的なアドバイスやサポートを受けることができるため、経営者様は安心して検討のステップを上げていくことができます。
過不足のない取り決めができる
M&Aの検討・実行には法務や労務、税務に限らず数多くの取り決めるべき事項が存在いたします。取り決めるべき事項に抜け漏れがあった場合は、ご成約後に大きなトラブルとなってしまう場合もございます。複雑なM&Aの検討・実行を仲介会社は専門的な知識と経験をフル活用しサポートいたします。
M&Aの仲介業者を利用するデメリット
M&Aの検討・実行には一般的には仲介会社の存在が必要不可欠となりますが、場合によっては仲介会社の存在がデメリットとなることもございます。
高額な手数料が必要になる
仲介会社を活用する際の代表的なデメリットは、高額な仲介手数料になります。仲介会社によって手数料の規定は大きく異なりますが、企業の合併や買収をメインにご支援行うからこそ、費用は必然的に高額となる場合がほとんどです。
利益相反に陥る可能性がある
仲介会社は譲渡企業と譲受企業の双方に適切な助言を行う必要があります。しかし仲介会社によっては、譲渡企業は一生で1回の決断であるのに対し、譲受企業は再度M&Aを検討する可能性があることから、譲受企業に寄って交渉を進めてしまう場合があります。実際問題、双方にとって全ての交渉条件において有益とすることは不可能なため、仲介会社は無意識のうちに利益相反に陥りやすいと言えます。
M&Aの手数料を抑えるポイント
本コラムでは仲介会社の活用にかかる手数料にフォーカスしてまいりましたが、経営者様が最も気になる点であろう実際に仲介会社への手数料を抑えるポイントについて記載いたします。
依頼したい仲介業者を数社に絞る
まずは依頼したいと心の底から思える仲介会社を複数社に絞りましょう。選び方のポイントとしては、費用面ではなくコンサルタント個人の能力や実績にフォーカスすることが重要となります。いくら費用的に優位な仲介会社であっても、能力が伴わない会社を選択してしまうと、結果的に費用ならびに企業運営の両面において、大きなダメージを負う可能性が高まってしまいます。
できる限り多くの業者に見積もりを依頼する
依頼したいと思える仲介会社を複数社に絞ったら、実際にM&Aの検討・実行にかかる手数料の見積もりを依頼しましょう。納得感のあるコンサルタントが所属する仲介会社から見積もりを複数もらうことで、各社の比較検討を行いながら、納得感をもって仲介会社を選択することが可能となります。
適切な仲介業者を選ぶことが重要
コンサルタントの能力やM&Aの検討・実行にかかる手数料を比較検討したうえで、自社に最適な仲介会社を選択しましょう。手数料を抑えることはもちろん重要ですが、手数料以外の要素を踏まえてフラットな目線で仲介会社を選択することで、より良いM&Aの実現に繋がり、長期的な目線で見ると支払った手数料以上の価値の実現に繋がります。
まとめ
本コラムではM&Aの検討・実行にかかる仲介会社の手数料にフォーカスし、そもそものM&Aのメリットやデメリット、また仲介会社が介在する価値についてもまとめてまいりました。近年M&Aは経営者様にとって一般的な経営戦略のひとつとなりつつあります。しかしながら譲渡企業にとっては一生で1回の決断であり、譲受企業にとっても社運を賭けた経営戦略となります。双方にとって最良な道標となることが仲介会社に求められる使命であり、介在価値は一般的に高額と言われる仲介手数料以上と言えるでしょう。大きな使命を担う仲介会社だからこそ、経営者様には手数料の高い安いだけでなく、コンサルタントの質や業界理解などを踏まえて、フラットな目線で自社の伴走者となる仲介会社を選択いただき、輝く未来を実現していただきたく思います。
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この記事の執筆者
東京都出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、2022年に新卒で中堅M&A仲介企業に入社。2023年より株式会社スピカコンサルティングに参画。